ふとーこーエッセイ【13】一筋の光

一筋の光

生徒たちの視線を、勝手に針のむしろのごとく感じる。
体全体からジワッと、イヤな汗がにじむ不快感。
ここだけの話、わたしも…学校がキライだ。

「相談室」に到着。
ノックしてノブを回す、中をすこし覗けるくらいにドアを開けた。

ほどなくして、担任が入り口に出迎えてくれた。
軽く挨拶を交わして、室内へと案内される。

入ってすぐのエリアには長テーブルが3本並べてあり、そこには2〜3人の生徒が距離を取って座り、それぞれ違う作業をしていた。
「こんにちわ~」「こんにちは」
悩みを抱える子たちなのだろうとすぐわかったが、知らない保護者にも明るく挨拶をしてくれる。


「初めまして!カウンセラーの〇〇です。」
話に聞いていたとおり、
柔和なオーラが体全体を包んでいるようなタイプの男性だった。
緊張と警戒心と不信感のオーラをまとったわたしにも
自然な笑みで答えてくれた。

古びた応接セット、
担任とカウンセラーが隣同士、
対面にわたしが腰掛けた。

もう8ヶ月になる息子の不登校について、経緯はすでに担任からカウンセラーへ伝わっていたが、しっかりと保護者の口からうかがいたいとの意向で、生い立ち、家庭環境、本人の性格、思い当たる要因など、時間をかけて詳細にお伝えした。

彼は途中、短く確認するように質問をはさみながら、手元のノートにぎっしりメモを取っていた。
対面から見えるそのノートは、本人にしか解読できないような乱雑な走り書きだったが、わたしが喋っている間、1度もペンが止まることはなく、一言一句を逃さないように記録しているのがわかった。

熱心な人だなぁ…話しながら勝手に心はほぐれていった。
今日、わたしが1人で来た意味も、すぐに理解された。
今までもたくさん、いろんな子の話を聞いてきたんだろうなぁ…

息子の度を超えた警戒心についても伝えた。
「条件をクリアした人であれば、自宅でなら、とりあえず1回は会っても良いそうです…」
「(笑)責任重大ですね!」
表情には、信頼に値する実績を伺わせる余裕があった。


「最後に、お母様、現在はどういった心持ちでおられますか?」

ドキッとした。
特に自分の気持ちなんて整理してこなかったから。
ヤバい!
また泣きそうじゃん…もー…泣き虫(汗)

「とにかく今は、息子が元気になってくれれば、それでいいと。
ただ、どこでも構わないので高校だけは卒業してほしいです。
学歴社会も全盛ではないとは言え、中卒というのはあまりに不安で…
でも本人、まだ高校は受験でしか行けないと思ってます。
ですが、もうだいぶ遅れていて、今はもう勉強自体できてません。
プライドが高いのか、焦るばかりで…
出席日数も内申も期待できないですから、全く方向性が見えない状態です。
心の回復と並行して、進路の方もうまく導いていただけたらと…」

わたしの心持ち?
こんな感じで大丈夫だっただろうか。

「わかりました!」
まだ会ったことがない頑なな息子に対し、お任せくださいとまでは言わなかったが、何とか救いたいという使命と覚悟を含んだひと言だった。

「規定上、通常は
自宅に訪問するということはやらないのですが、
息子さんのご要望なのと、
お母様から聞く状況を加味して、
ご自宅でカウンセリングをやっていこうと思います。」

「…ありがとうございます(泣)」

(そうだ…あと1つ、理不尽教師の一味かどうか確かめないと)
(つか、もう話してて違うってわかるぅー *_*)
(でもいちお念のため…)

「学校に戻るような働きかけなんかは…避けてほしいんですが…」

「(笑)ご安心ください、その辺は、十分心得ております!」

(だよね!だよね!よかったー!)


来週の同じ曜日に、予定が組まれた。


※ ※ ※


自宅に帰って、息子に詳細をつたえたる。
(あたしゃ 伝書鳩か!?)

「…へー、良さそうな人だったんだ、家でいいの?」
今日は機嫌がいい。
「一味じゃなかったよ(笑)」
「(笑)」

とりあえず、初回にこぎつけることができた。
あとは、関係が波に乗れば、先に進めるかもしれない。
期待と不安、今回は期待のほうが大きかった。
(あの人なら、きっと大丈夫だ)


※ ※ ※


翌週、自宅に予定通りカウンセラーが訪問してくれた。
直前にかったスーパーの和菓子とお茶を出したが、公務員規定で食べてはいけない規則だとかで、手はつけてもらえなかった。

学校とか公務員は、融通がきかないなー
まぁ規則といわれれば仕方ないけど。

息子にも笑われた。
「だから、学校の人は食べないっていったじゃん(笑)」
「いいのいいの、母さんの気持ちなんだから!
お茶だけでもどうぞ(笑)ささ、本日はよろしくお願いします!」
そう言い残し、
わたしは、微妙に声が聞こえる距離感の部屋へ
お茶を持って移動した。
(聞く気マンマン)

初回なので、わたしから聞いた内容を本人からも聞いている様子。
後半には、打ち解けてきて、微笑み合う声も聞こえる。

約1時間、ふたりきりトーク。
初めてのカウンセリング、息子はどんな感覚なんだろう?


「お母さーん、終わったよー」
別室にいるわたしを呼ぶ声、急いで合流すると、
「とりあえず、次回も来ていいと、許可もらいました(笑)」


カウンセラーが帰られたあと、
わたしは、手つかずの和菓子をほお張りながら、
しばし息子と談笑した。

「最後ちょっと楽しそうだったよね?」「まぁ、そうね」
(透かしやがってよーーー)
「良さそうな人だったから…
カウンセリング?だっけ。まぁ思ったよりイヤじゃないかも」


こうして、頑なな息子のハートを開くことに成功したカウンセリングは、
卒業するまでのあいだ、週に1度のペースで繰り返された。
途中、夏休みや冬休みなどできない期間もあったが、
(これも公務員規定とからしい…)
息子はゆっくりゆっくり、本当にゆっくりだったが、
目に見えてあきらかに変化していった。


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