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<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」- 20 美里とユリアのデートはリンカーンセンター
美里は日々のビジネスの忙しさに追われながらも、どこか心の奥にぽっかりと穴が開いたような感覚を抱えていたためバレエをユリアに習い始めたことで満ち足りた気分がもどってきた。
家で教えてもらうよりも、もっと広いスペースのあるユリアが教えているというダンススタジオへレッスンに通うことにした。初めはぎこちなかった美里も、ユリアの丁寧な指導のおかげで少しずつ上達していった。
ユリアのスタジオは、ニューヨー
連載小説「憂鬱」-19 美里がいよいよニューヨークで起業する
美里はまず人材派遣会社に就職することにした。これは彼女が将来的に自分の会社を設立するための一歩として選んだ道だった。人材派遣のビジネスは、比較的少ない資本で始められる上に、ネットを活用することで効率的に運営できるというメリットがあった。
美里が就職したのは、ニューヨークに本社を構える中堅の人材派遣会社だった。ここで彼女は、人材発掘のノウハウや経営の方法を学ぶことを目指していた。
「美里、まずは
連載小説「憂鬱」-16 いよいよ二人が結ばれる日
その後、二人は再び地下鉄に乗ってセントラルパークに向かった。
「スタジオまでは地下鉄で通ってるの?」ガタガタと揺れる地下鉄の中で玲美がユリアに聞いた。
「もちろん。たまに突き落とされるなんていう怖い事件もあるのだけど、なるべく線路に近いところに立たないとか気を付けるようにしてる。」
「こんなにたくさん人がいると、どんな人がいるかわからないよね。」
セントラルパークを散歩しながら、自然の中でリ
連載小説「憂鬱」-13 いじめの対処にユリアの両親はどう決断したのか?
学校での話し合いを終え、ユリアを連れて自宅へ戻った。敦子は、心の中で怒りと葛藤を抱えていた。娘が受けた仕打ちを思い出すたびに、彼女の胸は痛んだ。
「どうしてこんなことが起こったのかしら……」敦子は静かに呟いた。
夫のルーカスがオフィスから戻ってきた。敦子とユリアが神妙な面持ちでソファに座っているのを見て、少したじろいだが、敦子は気持ちを落ち着かせてゆっくりと事の成り行きを話した。
「そんなに
連載小説「憂鬱」-6 ユリアをいじめから救えるのは玲実?
ユリアはバルセロナで生まれ、父親の仕事の関係で幼少期をそこで過ごした。その環境から、彼女は幼い頃から複数の言語を自然に習得し、バイリンガルとしての才能を発揮していた。
父の仕事の都合で、ユリアの家族は日本に移ることになり、彼女はその後日本の私立高校に入学した。
しかし、新しい学校での生活は思ったよりも複雑だった。
日本人とアメリカ人のミックスであり、バイリンガルであることが、彼女の違和感や疎
連載小説「憂鬱」-5 ネットワークエンジニアに女性が少ないことは幸運で女子トイレで一人
美里はIT企業の女社長として、オフィス内での彼女の雰囲気は常に厳しかった。ネットワークエンジニアの若い男性たちが彼女の目の前でミスをすると、彼らをしばしば叱責した。
「森本くん、前にも私が説明したわよね。ここのところの設計は、もっと慎重にやらないと。後からネットワークセキュリティーに問題がでるかもしれないのよ。」
彼女は仕事に厳格なフリをしながらも、身体のどこかで、バレエのレッスン中であるユリ