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<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」- 21 もっとお互いを深く知りたいから

「ユリアさん、この後、私の家で飲み直しませんか?」美里は下心を隠すかのように、丁重にユリアを誘った。

「ええ、もちろん。美里さんのお家はいつも素敵だもの。」本当に飲むだけなのかな?と考えながら、ユリアはどこか緊張感を感じていた。何色の下着だったかな?新しいのはいてきたかしら。。。

いつの間にか、下着のことを気にしていた。

美里の家は、相変わらず広々としたペントハウス。一人暮らしで仕事も忙しいからか、たいして装飾品もない。ミルク色で温かい色の壁ではあるが、なんとなく静けさが逆に寂しさを感じさせることもあった。

しかし、ユリアがその空間に来ることで、その寂しさは一気に和らいだ。

「ユリアさん、前にソフトウェアを買っているベンダーからもらった、とびっきりの赤ワインがあるの。それを飲みましょう。見た目、まるでニューヨークのグラフィックのアーティストが描いたって感じのラベルなのよ。」

「Orin Swift Cellars Abstract っていうワインなんですね。本当に素敵なラベルですね。」

「最近、ナパバレーのワインにハマってるから、ちょうど私の好みにもマッチしているの。ユリアさんは、アーケード・ゲームってやったことある?」

「いえ、小さな頃からバレエばかりやっていたので、あまりゲームとかは触ったことないです。」

「そうよね。私は小学生のころからゲームが大好きで、まだそれほど任天堂とかも出てない時代だったから、アーケードのカプコンのゲーム機にはいつもお世話になってたかも。」

「美里さんは、ゲームが好きなんですね。それで、なぜゲーム機の話に?」

「カプコンの会長である辻本さんは、ナパバレーにKENZO ESTATEというワイン会社を個人で経営されていて、今はワインを販売しているの。

中でも私のお気に入りは『あさつゆasatsuyu』っていう白ワインなのだけど、とってもフルーティーで美味しいの。」

「そうなんですね。」

「子供の頃はゲーム機でお世話になってたけど、大人になってからもワインでお世話になるとはね。」ユリアは、美里の冗談っぽい言い方に、軽く笑い返した。

二人は黒いレザーのソファに腰掛け、ワインを片手にリラックスしていた。窓の外には、ニューヨークの煌めくライトが広がり、二人の時間をより一層ロマンチックに演出する。

いつの間にか、美里がつけていたキャンドルのバニラの甘い香りが、ユリアの心をさらに溶かすようだった。

「美里さん、今日は本当に楽しかった。こんな素敵なディナーとワインをありがとう。」ユリアは微笑みながら、美里の肩にもたれかかった。

「私も楽しかったよ、ユリアさん。あなたがいてくれるだけで、こんなに幸せな気持ちになるなんて。」美里はユリアの髪を優しく撫でながら答えた。

「ねえ、美里さん、今日は遅くなったから、地下鉄は怖いし、もう少し一緒にいたいな。」ユリアは少し照れたように目を伏せた。

美里はユリアの言葉に心が踊ったが、そっと彼女の手を取り立ち上がった。そして、ちょっとだけ意地悪してみようという気分になった。

「ユリアさん、どうしても帰りたいならウーバーくらい呼ぶけど。。。」

「えっ?ウーバー。。。」ユリアは一瞬、申し出を断られたのかと怯んだ。

「なんて、冗談に決まってるでしょ。もちろん、一緒にいましょう。泊まっていってね。」

「美里さんの意地悪。」ユリアの真っ直ぐな瞳は、とても可愛かった。すぐにでもベッドへ押し倒してしまいたかったが、美里はゆっくりとベッドルームへユリアを誘うのだった。

二人は手をつなぎながら、寝室へ向かった。寝室のドアを開けると、そこにはキングサイズのベッドがあり、柔らかい真っ白なシーツが二人を待ち受けていた。部屋の照明は暖かく、優しい光が部屋全体を包んでいた。

美里はユリアの手を取り、ベッドに腰掛けさせた。「ユリア、あなたがここにいてくれることが、本当に嬉しいよ。」いつの間にかユリアの名が呼び捨てになっていた。

ユリアは美里の目を見つめ、少し緊張した様子で微笑んだ。「私も美里さんと一緒にいることが、一番幸せです。」

美里はユリアの顔に優しく手を添え、そっと唇を重ねた。その瞬間、二人の間に電流が走ったような感覚が広がり、心が一つになったように感じた。キスは徐々に深まり、お互いの熱を感じながら、二人の距離はますます近づいていった。

美里はユリアの体を優しく押し倒し、ベッドに横たえた。ユリアの瞳は期待と緊張で輝いていた。美里はその瞳を見つめながら、ユリアの頬にキスをし、首筋に唇を滑らせた。ユリアの体が小さく震えるのを感じ、美里はその反応に愛おしさを感じた。

「ユリア、大丈夫?無理しないでね。」美里は優しく囁いた。

「うん、大丈夫。美里さんがいるから、安心してる。」ユリアは美里の言葉に微笑み、手を伸ばして美里の背中を撫でた。

美里はユリアの服を一枚一枚丁寧に脱がせ、彼女の体をそっと抱きしめた。ユリアの肌は柔らかく、美里の手の中で温かさを感じた。ユリアもまた、美里の服を脱がせながら、その温もりを求めるように美里の体を抱きしめた。

二人は互いの体を優しく愛撫しながら、心の中にある愛情を確かめ合った。

美里はユリアの体を丁寧に探りながら、彼女が感じるポイントを見つけ出し、そこに優しくキスをしたり、軽く触れたりした。ユリアの反応を見るたびに、美里はますます彼女を愛おしく思い、もっと彼女を喜ばせたいという気持ちが強くなった。

ユリアもまた、美里の体を愛撫しながら、彼女に対する愛情を伝えようとした。ユリアの指先が美里の肌に触れるたびに、美里はその優しさと愛情を感じ、心が満たされていった。

「美里さん、あなたがいるから、こんなに幸せな気持ちになれるの。」ユリアは息を切らしながら、美里に囁いた。

「私もだよ、ユリア。あなたがいてくれるから、こんなに幸せなんだ。」美里はユリアの耳元で囁き、彼女の唇に再びキスをした。

二人は互いに愛し合いながら、夜が更けていった。美里はユリアの体を優しく抱きしめ、彼女の温もりを感じながら、これからの二人の未来を夢見ていた。ユリアもまた、美里の腕の中で安心感と幸せを感じ、穏やかな眠りについた。

翌朝、美里はユリアの寝顔を見つめながら、心から愛おしいと思った。カーテンからこぼれる朝日はまぶしかったが、ユリアはまるで従順な子羊のように小さな寝息をたてて眠っていた。

美里はそっとベッドを抜け出し、キッチンで朝食を準備し始めた。温かいコーヒーの香りが部屋中に広がり、トーストの焼ける香りと、スクランブルエッグとベーコンの香りもそれに加わった。

やがて、ユリアも目を覚まし、キッチンへとやって来た。
「おはよう、美里さん。早起きですね。とっても美味しそうな香りがするから、お腹が空いちゃった。」

「おはよう、ユリア。昨日はよく眠れた?」美里は微笑みながら、ユリアにコーヒーを差し出した。

「うん、とっても。あなたの腕の中で寝るのが、こんなに安心するなんて。」ユリアはコーヒーを受け取り、一口飲んで温かさを感じた。

二人は朝食を共にしながら、今日の予定について話し合った。美里は仕事が忙しい日が続いていたが、ユリアと過ごす時間を大切にしたいと思っていた。

「今日は少し忙しいけど、夜にはまた一緒にディナーを楽しもうね。」美里はユリアの手を握りながら言った。

「うん、楽しみにしてるわ。」ユリアは美里に微笑み返し、その手をぎゅっと握り返した。

美里はユリアとの時間を大切にしながらも、仕事に全力を注いでいた。

彼女のIT企業は順調に成長し、社員たちも彼女のリーダーシップに信頼を寄せていた。

「かなり営業力も伸びてきているし、これまでの事業は安定してきています。本当に皆さんに感謝しています。

そこで、これから新たな事業を立ち上げたいと思うのだけど、なにかいいアイディアがありますか?」

美里は、会議でそう言いながら、頭の中では、ダンサーであるユリアたちが生きていけるような場を作り出したいと考えていた。ITとダンサーのコラボになるような事業はないものか?

一方、ユリアもバレエのレッスンやオーディションに向けて忙しい日々を送っていた。彼女は美里のサポートを受けながら、自分の夢を追い続けることができることに感謝していた。

美里と一緒にいることで、ユリアのパフォーマンスはますます輝きを増し、彼女の才能が認められるようになっていった。

そんなある日、再びユリアに大きなチャンスが訪れた。ブロードウェイミュージカルのオーディションが行われることになり、ユリアはそのオーディションに挑戦することを決意した。

オーディション当日、美里はユリアを劇場まで送り届けた。ユリアは緊張しながらも、美里の励ましの言葉を胸に刻み、自分の力を信じて舞台に立った。

「ユリア、あなたなら絶対にできるわ。自信を持って、楽しんできて。」

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