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平沢直樹は、日本の小説家であり、幅広いジャンルの作品を手がける。科学フィクション、ミス…

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平沢直樹は、日本の小説家であり、幅広いジャンルの作品を手がける。科学フィクション、ミステリー、ファンタジーなどの要素を織り交ぜた作品で知られる。緻密なプロットと深いキャラクター描写が特徴であり、独創的なストーリーテリングで多くの読者を魅了している。

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  • 憂鬱

    平沢直樹が書いた小説「憂鬱」をまとめて読めます。

最近の記事

連載小説「憂鬱」-19 美里がいよいよニューヨークで起業する

美里はまず人材派遣会社に就職することにした。これは彼女が将来的に自分の会社を設立するための一歩として選んだ道だった。人材派遣のビジネスは、比較的少ない資本で始められる上に、ネットを活用することで効率的に運営できるというメリットがあった。 美里が就職したのは、ニューヨークに本社を構える中堅の人材派遣会社だった。ここで彼女は、人材発掘のノウハウや経営の方法を学ぶことを目指していた。 「美里、まずはこのリストを見てください。ここには今月の新規登録者が載っています。彼らのスキルや

    • 連載小説「憂鬱」-18 専業主婦である母を受け入れられなかった?

      吉永美里は、生まれつきの優等生だった。小学校から中学校まで、成績は常にトップクラス。高校に進学してからもその勢いは止まらず、さらには生徒会長まで務めることになった。彼女の将来は輝かしいものに違いないと、誰もが思っていた。 美里の学校生活は、誰もが羨むものであった。彼女はクラスの中心的存在で、教師たちからも信頼されるリーダーだった。友達も多く、その笑顔はみんなを元気にさせた。彼女の勉強の成績は言うまでもなく、運動神経も抜群で、部活動でも活躍していた。 生徒会長としての役割は

      • 連載小説「憂鬱」-17 憂鬱はどこまでも追ってくる

        夏休みが終わり、玲実が日本に帰国する日が近づいてきた。空港で再び別れを告げる時がやってきた。 「玲実、短い間だったけど、本当に楽しかったよ。また必ず会おうね。」ユリアは玲実を抱きしめながら言った。 「ユリア、私も本当に楽しかった。あなたの夢を応援してるから、頑張ってね。」玲実は涙をこらえながら答えた。 飛行機が離陸し、玲実は窓からニューヨークの風景が小さくなっていくのを見つめていた。彼女の胸には、ユリアとの楽しい思い出がたくさん詰まっていた。 「ユリア、私はあなたを心

        • 連載小説「憂鬱」-16 いよいよ二人が結ばれる日

          その後、二人は再び地下鉄に乗ってセントラルパークに向かった。 「スタジオまでは地下鉄で通ってるの?」ガタガタと揺れる地下鉄の中で玲美がユリアに聞いた。 「もちろん。たまに突き落とされるなんていう怖い事件もあるのだけど、なるべく線路に近いところに立たないとか気を付けるようにしてる。」 「こんなにたくさん人がいると、どんな人がいるかわからないよね。」 セントラルパークを散歩しながら、自然の中でリラックスした時間を過ごすことにしたのだが、馬車のついた馬がたくさん並んでるところ

        連載小説「憂鬱」-19 美里がいよいよニューヨークで起業する

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        • 憂鬱
          20本

        記事

          連載小説「憂鬱」-15 METでドガのバレリーナの絵に感動する二人

          バレエの主役を演じた公演後、ユリアは、ビデオ通話で玲実にその喜びを伝えた。「玲実、そろそろ夏休みも近づいてきたし、ニューヨークに遊びにおいでよ。ルームメイトにお願いして、家に泊まれるようにしてみるから。」 「本当に?ユリア、お泊りできる場所があるなら、もう少し頑張って家庭教師のバイトを増やして、少し貯金もたまってるから、エアーチケットを手配してみる。会えるのが楽しみになってきた。」玲実の声には喜びが溢れていた。 夏休みに入って、玲実がニューヨークに到着した。彼女たちは久し

          連載小説「憂鬱」-15 METでドガのバレリーナの絵に感動する二人

          連載小説「憂鬱」-14 ニューヨーク移住そしてオーディションへ挑む

          ユリアがニューヨークの新しいダンススクールに入学することが決まり、ついに出発の日がやってきた。空港には彼女を見送るために家族や友人たちが集まっていた。玲実は涙をこらえながら、ユリアとの最後の時間を大切に過ごしていた。 「ユリア、本当に行ってしまうんだね。ニューヨークでも頑張ってね。」玲実はユリアに抱きしめられながら言った。 「ありがとう、玲実。あなたの応援があるから、私はどこにでも行ける気がするよ。」ユリアは微笑んで答えたが、その目には少し涙が浮かんでいた。 ユリアの母

          連載小説「憂鬱」-14 ニューヨーク移住そしてオーディションへ挑む

          連載小説「憂鬱」-13 いじめの対処にユリアの両親はどう決断したのか?

          学校での話し合いを終え、ユリアを連れて自宅へ戻った。敦子は、心の中で怒りと葛藤を抱えていた。娘が受けた仕打ちを思い出すたびに、彼女の胸は痛んだ。 「どうしてこんなことが起こったのかしら……」敦子は静かに呟いた。 夫のルーカスがオフィスから戻ってきた。敦子とユリアが神妙な面持ちでソファに座っているのを見て、少したじろいだが、敦子は気持ちを落ち着かせてゆっくりと事の成り行きを話した。 「そんなに大変なことが起きているならば、電話してくれればよかったのに。僕も立会いたかった。

          連載小説「憂鬱」-13 いじめの対処にユリアの両親はどう決断したのか?

          連載小説「憂鬱」-12 ユリアの母親がいじめに反逆!

          敦子はユリアとともに学校に乗り込んできた。彼女の顔には、憤怒の色が強く滲み出ていた。彼女の手は拳になり、目は炎を吹き出すようだった。彼女は沙知絵を訴えるために、猛烈な怒りを胸に秘めてやってきたのだ。 校内では、放課後の静けさが漂っていた。教室や廊下は空っぽで、残るのは猫の毛がザワザワしただけでも音が聞こえそうな静かな雰囲気だけだった。しかし、その静寂はユリアの母親の怒りによって一変した。 「ユリアの母親が来たぞ!」という囁きが広がる中、体育教師である早瀬は窓の向こうにそれ

          連載小説「憂鬱」-12 ユリアの母親がいじめに反逆!

          連載小説「憂鬱」-11 体育館の用具室へ沙知絵から呼び出されたユリアはどうなる?

          ユリアが授業を受けていると、小さなメモのようなものがデスクに回ってきた。沙知絵が斜め前の席からユリアのほうへ振り返り、メモを受け取ったことを確認したようだった。 「体育館の用具室へ、学校が終わってから来てね。来なければ、あなたの大事な彼女に、私たちが声をかけて、あることないこと喋っちゃうからね。」 ぜったいに一人では行きたくなかったが、玲実に彼らを近づけることだけは、避けたかった。自分が行かなければ、学校が違っているとはいえ、玲実もネットで素性を調べられて、放課後に後をつ

          連載小説「憂鬱」-11 体育館の用具室へ沙知絵から呼び出されたユリアはどうなる?

          連載小説「憂鬱」-10 キスしているところを撮影されてしまった?

          ユリアと玲実はたまにバレエの後、近くの公園で過ごすようになった。星をみつめながら、二人は将来の夢を語り合った。 「将来はどんな風になりたい?」ユリアが優しく尋ねると、玲実は考え深い表情で答えた。 「私は、将来は人々を笑顔をもって助けてあげられる仕事がしたいな。たとえばナースになれたらいいなって思ってる。子供の頃から、誰かを助けることが好きだったし、どんな状況でも笑顔を忘れないって自信があるんだよね。」 ユリアは玲実の言葉に感心しながら、自分の夢を語り始めた。 「私はニ

          連載小説「憂鬱」-10 キスしているところを撮影されてしまった?

          連載小説「憂鬱」-9 ユリアの家で二人きりになれた玲実

          お互いが好きとわかってうれしかった。しかし、ここから先、どう進めていくべきなのかは女子高校生の二人にはわからなかった。 「今度、バレエのクラスの後に、家に遊びに来ない?」ユリアは、急に強気で誘ってしまったことに自身も驚いていた。 「もちろん!一緒にクッキー焼いたりしましょうよ。私、クッキーの型をたくさん持ってるから、持っていくね。」 その誘いに玲実は大喜びでうなずき、彼女の顔には明るい笑顔が広がった。ユリアもまた、彼女の笑顔に安堵の息をついた。 そして、待ち合わせの日

          連載小説「憂鬱」-9 ユリアの家で二人きりになれた玲実

          連載小説「憂鬱」-8 ユリアは玲実に告白できるのか?

          玲実に告白したいけど、レズと知られるのが怖くて、できないユリアであった。 沙知絵は、相変わらず学校でいじめをしかけてくる。そんなことが気にならなくなったのは、玲実のことを考えているからだ。どんないじめにあっても、玲実に対する愛情があれば、ふわふわと温かい気持ちになれた。 しかし、ユリアは自分の気持ちに正直になれないでいた。友情と愛情の狭間で揺れ動く心が、彼女を苦しめていた。彼女は何度も玲実にバレエのクラスへ行くたびに告白しようと思ったが、口にする勇気が持てなかった。 そ

          連載小説「憂鬱」-8 ユリアは玲実に告白できるのか?

          連載小説「憂鬱」-7 突然、玲実がユリアの手をとって乳首へと誘導した

          ようやく待ちに待ったバレエの舞台を観る日がきた。駅で待ち合わせて、二人は会場へ。 「ユリアちゃんは、どっちの席がいい?」玲実が明るい声で聞いた。 「どっちでも構わないけど、左側に座るね。右側のほうが少し中央に近いでしょ?」 「玲実はどっちでも平気なの。でも、左のほうにユリアちゃんがいるのも悪くないかも。」軽く微笑み、玲実は深く少し古ぼけたレザーの茶色いシートに身をしずめた。 ステージが始まると、ユリアと玲美は、バレエを食い入るように見ていた。ステージ上で軽やかに舞うプロの

          連載小説「憂鬱」-7 突然、玲実がユリアの手をとって乳首へと誘導した

          連載小説「憂鬱」-6 ユリアをいじめから救えるのは玲実?

          ユリアはバルセロナで生まれ、父親の仕事の関係で幼少期をそこで過ごした。その環境から、彼女は幼い頃から複数の言語を自然に習得し、バイリンガルとしての才能を発揮していた。 父の仕事の都合で、ユリアの家族は日本に移ることになり、彼女はその後日本の私立高校に入学した。 しかし、新しい学校での生活は思ったよりも複雑だった。 日本人とアメリカ人のミックスであり、バイリンガルであることが、彼女の違和感や疎外感を引き起こす一因となったのだ。彼女は日本語と英語の両方を自在に操るが、そのア

          連載小説「憂鬱」-6 ユリアをいじめから救えるのは玲実?

          連載小説「憂鬱」-5 ネットワークエンジニアに女性が少ないことは幸運で女子トイレで一人

          美里はIT企業の女社長として、オフィス内での彼女の雰囲気は常に厳しかった。ネットワークエンジニアの若い男性たちが彼女の目の前でミスをすると、彼らをしばしば叱責した。 「森本くん、前にも私が説明したわよね。ここのところの設計は、もっと慎重にやらないと。後からネットワークセキュリティーに問題がでるかもしれないのよ。」 彼女は仕事に厳格なフリをしながらも、身体のどこかで、バレエのレッスン中であるユリアのことを思い描いていた。サーバールームの冷たい風に吹かれながらも、ユリアが腰に

          連載小説「憂鬱」-5 ネットワークエンジニアに女性が少ないことは幸運で女子トイレで一人

          連載小説「憂鬱」-4 初めてのバレエレッスンに身体が反応してしまう

          美里の家は高層ビルの頂上に位置し、ブルックリンからマンハッタンの摩天楼が一望できるペントハウスだった。彼女は初めてのバレエレッスンのため、ユリアを招待した。 レッスンは広々としたリビングルームで行われた。窓から差し込む夕日が部屋に柔らかな光をもたらし、美里が丹念に育てている白い鉢植えのポトスの緑が映える。 雰囲気は穏やかで温かかった。ユリアは美里に基本的なポーズや動きを教え、彼女の身体のリズムに合わせて指導した。 最初の動きは簡単なものだった。軽やかな足取りでリズミカル

          連載小説「憂鬱」-4 初めてのバレエレッスンに身体が反応してしまう