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<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」-14 ニューヨーク移住そしてオーディションへ挑む

ユリアがニューヨークの新しいダンススクールに入学することが決まり、ついに出発の日がやってきた。空港には彼女を見送るために家族や友人たちが集まっていた。玲実は涙をこらえながら、ユリアとの最後の時間を大切に過ごしていた。

「ユリア、本当に行ってしまうんだね。ニューヨークでも頑張ってね。」玲実はユリアに抱きしめられながら言った。

「ありがとう、玲実。あなたの応援があるから、私はどこにでも行ける気がするよ。」ユリアは微笑んで答えたが、その目には少し涙が浮かんでいた。

ユリアの母、敦子は娘の出発を見守りながら、彼女の未来に期待を寄せていた。「ユリア、あなたならきっと成功するわ。自分を信じてね。」敦子はそう言いながら、娘をしっかりハグした。

「マムありがとう。ニューヨークで頑張るから。」ユリアは力強く答えた。

ユリアの父、ルーカスも娘の出発を見守っていた。彼はビジネスのために一緒にニューヨークへ同行することになっていた。

「ユリア、僕はニューヨークへは何度か行ったことあるんだが、とっても賑やかな街だよ。なれるまでは大変かもしれないが、僕はルームメイト探しを手伝うのに、数日しか一緒にいれないからね。」ルーカスは微笑みながら言った。

「ダッドが一緒だと心強い。ビジネストリップの日程を調整してくれてありがとう。本当に助かる。」ユリアはルーカスに言いながらスーツケースを係員に預けた。

出発の時間が近づき、ユリアは最後の別れを告げるために友人たちの方に向かった。玲実はその姿を見つめながら、涙をこらえていたが、どうしても抑えきれなかった。

「ユリア、さようなら。ニューヨークで必ずバレリーナとして舞台にあがるチャンスをつかんでね。夏休みには、そっちへ遊びに行くから。」玲実は涙を拭いながら言った。

ユリアは振り返り、玲実に向かって微笑んだ。「ありがとう、玲実。また必ず会おうね。」

国際線の搭乗口に向かうユリアを見送りながら、玲実は心の中で呟いた。「ユリア、私はあなたを心から愛していた。」その言葉は風に乗って、ユリアに届くことはなかったが、玲実の心には深く刻まれた。

飛行機が離陸し、ユリアは窓から日本の風景が小さくなっていくのを見つめていた。彼女の胸には期待と不安が入り混じった感情が渦巻いていたが、それでも彼女は新しい挑戦に胸を高鳴らせていた。

「ニューヨーク、私はここから出発するんだ。」ユリアは心の中で強く決意した。

隣に座るルーカスは離陸まで娘の手を握っていたが、しばらくすると、すでに映画を見始めていた。

ユリアは、昨日の夜から興奮して眠れなかったので、少しだけ眠りについたのだった。

ニューヨークに到着したユリアとルーカスは、すぐさまルームメイト探しを始めた。クィーンズやブルックリンという場所で、かなりスクールからは遠くなるが、マンハッタンの家賃はさすがにルーカスと敦子の給料でも高すぎた。

クィーンズに偶然、スェーデンからの留学生の女の子で、ダンスのクラスに通っているというアイナを見つけ、彼女とルームシェアで暮らすことになった。

部屋も落ち着き、新しい生活をスタートさせた。ユリアは早速ダンススクールに通い始め、厳しい訓練に挑んだ。

ユリアの新しい学校は世界中から集まった才能あふれるダンサーたちで賑わっていた。彼女はその中で自分の存在感を示すために、毎日全力で練習に取り組んだ。初めてのレッスンで、彼女はその厳しさに圧倒されたが、それでも彼女は決して諦めなかった。

ユリアはスクールで新しい友人を作り、その中でも特に親しくなったのはアメリカ人のエマだった。エマはユリアと同じくバレエに情熱を持ち、二人はすぐに意気投合した。

「ユリア、一緒に練習しようよ。あなたのダンスのテクニックは本当に素晴らしいね。日本から来たんでしょ?とっても細かい部分まで完璧だから、すぐにわかる。」エマは初対面の時からユリアに声をかけた。

「ありがとう、エマ。あなたのダンスもとても綺麗だよ。一緒に頑張ろうね。」ユリアは新しい友人に感謝の気持ちを込めて答えた。

ニューヨークでの生活が少しずつ慣れてきた頃、ユリアにとって初めてのオーディションの機会が訪れた。これはニューヨークにある小さなバレエ団の新作公演の主役を選ぶための重要なオーディションだった。

ユリアはこのオーディションに全力で挑むことを決意した。彼女は毎日遅くまで練習を重ね、自分の技術を磨き上げた。エマも一緒に練習し、互いに励まし合いながら準備を進めていった。

オーディションの日がやってきた。ユリアは緊張しながらも、自分の全てを出し切る決意を固めていた。舞台裏で準備をしていると、エマが近づいてきた。

「ユリア、あなたならきっとできるわ。自信を持ってね。」エマは励ましの言葉をかけた。

「ありがとう、エマ。あなたの言葉が力になるよ。」ユリアは感謝の気持ちを込めて答えた。

オーディションが始まり、ユリアは舞台に立った。彼女は深呼吸をし、自分の全てを踊りに込める決意を固めた。彼女の動きは美しく、力強く、観客を魅了した。彼女は自分の感情を全て踊りに込め、その表現力は観る者の心を揺さぶった。

オーディションの結果発表が行われ、ユリアの名前が主役として呼ばれた。彼女は信じられない思いでステージに上がり、感謝の気持ちを胸に抱きながら喜びの涙を流した。

「ユリア、おめでとう!あなたが選ばれるって信じてたわ。」エマが感激の涙を浮かべながら言った。

「ありがとう、エマ。みんなの応援があったから、ここまで来れたんだ。」ユリアは涙を拭いながら答えた。

ユリアは主役としての役を全力で演じるために、さらなる練習に励んだ。彼女の努力は次第に実を結び、彼女の踊りはますます洗練されたものとなっていった。

公演の日が訪れ、ユリアは舞台に立った。彼女の踊りは美しく、力強く、観客を魅了した。彼女の動きは完璧であり、その表現力は観る者の心を揺さぶった。ユリアは舞台の上で自由に羽ばたくように感じ、彼女の踊りはまるで一つの物語を紡いでいるかのようだった。

踊り終えた瞬間、会場は静まり返った。そして、やがて拍手喝采に包まれた。ユリアはその音に包まれ、達成感と幸福感で胸がいっぱいになった。

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