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<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」- 20 美里とユリアのデートはリンカーンセンター

美里は日々のビジネスの忙しさに追われながらも、どこか心の奥にぽっかりと穴が開いたような感覚を抱えていたためバレエをユリアに習い始めたことで満ち足りた気分がもどってきた。

家で教えてもらうよりも、もっと広いスペースのあるユリアが教えているというダンススタジオへレッスンに通うことにした。初めはぎこちなかった美里も、ユリアの丁寧な指導のおかげで少しずつ上達していった。

ユリアのスタジオは、ニューヨークの忙しい街並みから少し離れた静かな場所にあった。高い天井と大きな窓から差し込む自然光が、スタジオ全体を明るく照らしている。鏡の前で一心不乱に練習する美里の姿は、まるで別人のようだった。

「美里さん、もう少し肩の力を抜いて。リラックスして、動きが自然になるようにね。」ユリアは美里の横に立ち、優しく指導を続けた。

「はい。」美里は息を整え、ユリアのアドバイスに従ってポーズをとり直した。

ユリアの教え方は非常に細やかで、彼女自身の動きが美里にとってお手本となった。二人はますます親しくなり、レッスンの合間にコーヒーを飲みながらおしゃべりをすることも増えた。

ある日、ユリアが美里に提案した。「美里さん、今度リンカーンセンターで素晴らしいバレエ公演があるんです。ぜひ一緒に観に行きませんか?」

「ええ、ぜひ行きたいわ。」美里は興奮気味に答えた。ユリアとバレエを二人で観ている姿をイメージするだけで、ワクワク感は増し、なぜか一人、ドキドキしていた。

ユリアの若さにあわせた服装を考えぬいた末、ベージュのブラウスと白いロングパンツをあわせた。ビジネスカジュアルのような装いばかりだったため、美里にとっては、このコーデが限界だった。

公演の日、二人はリンカーンセンターの前で待ち合わせをした。センターの大きな建物と、その周りに広がる美しい庭園は、ユリアといるからか、いつもクラシックのコンサートなどで見ている場所と違って見えた。

ユリアは、コットンの白いワンピースに身を包んでいた。ミニスカートに白いスニーカーという軽装なのだが、ユリアの小さな足にフィットした靴は、ますますユリアの真っ直ぐな脚を美しくみせた。

黒じゃなくて、白のパンツにしておいてよかったと、二人のコーデがマッチしたことに美里は少しだけ、安心した。

服装よりなにより、美里はユリアと一緒に観るバレエを楽しみにしていたので、気分はまるで女子高校生の頃にもどったようだった。

「今日観るバレエカンパニーは、ニューヨークでも有名なカンパニーの一つですよ。」ユリアは微笑んで美里に説明した。

「ちょっとだけワインとか飲んじゃってもいいかな?」美里は、緊張をほぐすため、ドリンクバーへ並んだ。

「美里さん、あまり飲みすぎないようにしてくださいね。」ユリアは微笑みながら、美里がホワイトワインをオーダーする横に並んだ。

「ユリアさんも、何か飲む?」
「じゃあ私は、スパークリング・ウォーターをお願いします。」

「なんだか舞台を観る前から緊張してきちゃったわ。」美里はワインを口にふくみながら、少し戸惑い、期待に胸を膨らませた。

二人が座っている席からは舞台が一望できるいい場所だった。しばらくおしゃべりをしながら、幕が上がるのを待っていた。

やがて、劇場内が暗くなり、舞台にスポットライトが当たる。プロのバレエダンサーたちが軽やかに舞台に登場し、美里の目の前で息を呑むようなパフォーマンスを繰り広げた。

「ユリアさん、これは本当に夢のようね。」美里は小声でささやいた。

「美里さんにバレエの美しさを知ってもらえて嬉しいです。」ユリアは微笑んで美里の手を握った。

美里は、ユリアの細い手で自分の手が強くにぎられたことに、ドキドキが増していた。あ、もっと強く握ってほしい。アソコにもこの細い指を入れてほしい。

バレエという神聖なくらいに美しい舞台を観ながら、エッチなことを考えてしまった自分に、美里は少しだけ腹がたったが、まだまだ30代後半なのだから性欲はたっぷりある。

ダンサーたちの優雅な動きと表現力豊かなパフォーマンスにも、美里は完全に魅了されていた。ユリアの隣で、彼女もまたその瞬間を共有していることが、美里にとっては何よりも特別なものだった。

リンカーンセンターでの観劇をきっかけに、美里はバレエに対する情熱をさらに燃やすようになった。ユリアのスタジオでのレッスンにも、以前よりも熱心に取り組むようになった。ユリアの丁寧な指導と励ましに支えられ、美里の技術は着実に向上していった。

「美里さん、あなた本当に上達してますよ。初めて会った時よりもずっと自然に踊れてます。」ユリアは、ある日のレッスン後に美里を褒めた。

「ありがとう、ユリアさん。でも、まだまだあなたのようには踊れないわ。」美里は照れ笑いを浮かべながら答えた。

「そんなことないです。美里さんには才能があります。自信を持って続けていけば、もっともっと上手くなれますよ。」ユリアは美里の肩を優しく叩いた。

二人はレッスン後、しばしばカフェでお茶を楽しむことが多くなった。ニューヨークの街を歩きながら、様々な話題について語り合う時間が、美里にとってはかけがえのないひとときだった。

次第に、二人の関係は女子高校生同士のメンタルな恋愛よりも、もっとオトナの恋愛と進展していくのだった。

美里は、ユリアと過ごす時間が増えるにつれて、彼女に対する想いがますます深くなっていき、ユリアの身体をもっと知りたいと思うようになった。ユリアもまた、美里に対する特別な感情を抱き始めていた。

ある日の夕方、二人はいつものカフェでお茶をしていた。窓の外にはニューヨークの夕焼けが広がり、街の喧騒が少しずつ静まっていく中で、二人の心もまた穏やかに落ち着いていた。

「ユリアさん、私…あなたのことが好きみたいです。」美里はついに自分の気持ちを伝えたのだった。

ユリアは驚いたように美里を見つめ、次第にその表情が優しい微笑みに変わった。「美里さん、私も同じ気持ちです。あなたと一緒にいる時間が、本当に幸せなんです。」

美里はユリアの美しい瞳をみつめ、ゆっくりと唇をユリアのピンク色の唇に重ねた。美里の心は喜びと安堵で満たされ、その瞬間、彼女はユリアと一緒にいることが自分にとって最も大切なことだと確信した。

まだまだ二人のキスは軽いものだったが、美里はもっともっと深く、ユリアの身体を知りたくなった。そして自分のことももっとユリアに求めてほしいと願うのだった。

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