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暗箱奇譚 第12話【完】
こうしてやっと自分を取り戻した今、今度はこれからのことを考える。自分がなんであるかを理解したのに、何を迷っているのだろう。人としての人生に未練があるのだろうか。いや、今までのことを振り返ると、未練どころか恨み言ばかりだったじゃないか。
あんなにひねくれてしまったのは、長い間独りで見続けた結果だった。狂った世界に、狂った人間達。自分で決めた事なのに、あんなに闇堕ちするとは思わなかった。
そんな
【お題】27.秘密の恋
カネチカの加護を受けてからと言うもの、何とも言えない体の不調はなくなった。めけには「加護」を与えたのはバレてしまったようだけど、カネチカからもう心配ないと連絡を貰い、二人の関係は修復したようだった。………だが、俺の心は晴れない。
単にあのキスのような行為が忘れられないだけなのかと思ったが、気付くとカネチカのことを考えている自分に気付き、俺はハッとした。
…………俺はカネチカを好きになってし
【お題】26.胸にくすぶる炎
——————青天の霹靂。
まさに、その言葉のままの事が起こった。とんでもないことだ。この俺が!!
今まで一度だって奪われたことがなかった。学年一位の座を。あのチャラいカネチカですら俺を抜かなかったのに、あの、ポッと出のモジャ毛の眼鏡野郎がかっさらっていきやがった!
許せない。単なるモブ顔のくせに。俺をあっさり抜くなんて。
「獅子王めけ………許さない」
あのモジャ毛野郎が転校したの
【お題】25.切ない恋心
春樹の様子がおかしかった。それは、急な生徒会への誘いから始まった。
「生徒会?」
俺が戸惑っていると、春樹はぐいぐい迫ってくる。夏休みが明け、俺と春樹はバイトから解放されて時間は有り余っていたのだが。
「めけ先輩、お手伝いしません?」
「………まあ手伝いくらいなら」
そんなこんなで、俺は春樹に誘われて一緒に「生徒会」へ手伝い要員として関わることになった。何でも経験してみたいという春樹の要望な
【お題】24.夏の花火
大輪の花が夜空に咲いている。ドン!と腹に響く音を立てて、沢山花火が咲いている。美しく、儚い風景だった。
「主様。ここは穴場なんです」
タナカは声をかけた。ここは、タナカの家の近く。開かれた場所から街並みが見え、空には大きな花火が咲いている。
「すごいね。タナカくんは花火は好き?」
こちらに背を向けたまま主が聞く。
「ええ。まあ」
「そっか」
タナカは主の隣に並ぶ。彼は花火を眺めている。色々