マガジンのカバー画像

小さな話

12
日々の小さな話、メモ。無料、有料、すぐ消す可能性が高いもの。
運営しているクリエイター

記事一覧

雷鳴

雷鳴

台風の風を浴びながら

草刈りをした。

波打つ稲が

倒れずに頑張れますように。

祈るというより

稲を信じるような気持ち。

たとえ倒れても

稲を責めたりしないし

台風を呪ったところで

私達の生きている星は

常に動いている。

もっとみる
眺める

眺める

雷雨の後

まだ濡れている道を

透けたシャツを着た

学生達が笑いながら自転車で

過ぎて行った。

何にも思わない。

そのことだけを見る。

最近の私がやっていること。

抑圧なのか

怠惰なのか

薄められた快楽なのか

分からない。

目と兆。

気配すら

気配すら

私を見て、が多すぎるから

人を見るのは疲れちゃう

光をつくる光らないものを

讃えるように

眺めて それでおしまい

意識とか意思とか

バタ臭く感じるほど

疲れてる

疲れるのも悪く無い

消して消して消して

気配を

消して消して消して

いないことにしてしまおう

結果

結果

詩を書くより

詩みたいに生きてるかどうか。

そうあり続けるかどうかは

努力でも意識でもない気がするのよね。

なんともならないことだと思っている。

羽音

羽音

雨が上がった時間を狙って

きゅうりを収穫していると

同じく貴重な時間を待っていた蜂たちが一斉に畑に集まった。

邪魔しないでね、と言うような羽音に

うんうん、と答えるように

遠慮気味にきゅうりに手を伸ばす。

メルヘンではない。

一緒に生きていれば事実だと分かる。

生きる時間が凝縮されているもの達の

切実な生は間延びした私の生に輝きの元を見せてくれる。

とはいえ、わたしも確実に老い

もっとみる
箱庭

箱庭

社会というと

大きなものに感じるけれど

社会ってのは目の前にいる他人との空間みたいなもので

政治家が、福祉が、教育が、

と大きなものに憤りを感じたり

無力感を感じた時は

目の前の空間において自ら出来る範囲で

コツコツと行動していかない限りは

その集合体である社会というものはもしくは世界というものは

ある日いきなり変わったり都合よく働いたりはしない、ということは

仕組みとして当然

もっとみる
太陽

太陽

1981年7月31日。

この日だと思う。

もっとみる
文化は文が化けるのか

文化は文が化けるのか

あまりこだわりのなさそうなお店で

美味しいか美味しくないかを期待せず、

コーヒーに300円前後、払うことはある。

それでもその時間がとても充実していて楽しいことはいくらでもある。

100円ちょっとのコンビニのコーヒーが

一日の疲れをとってくれることもある。

反対にやっぱり止めれば良かった、と後悔することもある。

美味しいコーヒーに500円前後払うこともある。

美味しいなあって思うけ

もっとみる
虚空

虚空

塗った畦の際からはみ出した草を

撫でるように切る。

わたし そのうち 消えていく。

切っても切らなくても

わたし そのうち 消えていく。

切っても切らなくても

いつかわたしが 消えたなら

この草は伸び続け 

誰かが切るかもしれないし

もう誰も切らないかもしれない。

虚しいことは常態だ。

否定されるようなことでもない。

恐れることでもない。

常態なのだから

忘れることもあ

もっとみる
その手

その手

鳥が巣を蛇に襲われたのかな、
というような
聞き慣れないけれど一大事、みたいな
鳴き声が林から聞こえてきた。

もっとみる