#小説
モラトリアム【オリジナルSS】
モラトリアム
ようやく解放される、寂しさよりもそんな安堵感が勝っていた。
今日も彼は誰よりも早く出社していた。悟られないよう挨拶は軽めに、彼が用意したコーヒーを啜りながらメールを確認する。これが日課になっていた。たまに話しかけられるほとんど他愛のない世間話に、私はまた悟られないように適当に合わせ、そのうちに他の社員が出社してくる。これもあと一週間で終わる。
彼は本社からの出向社員として二年前に
Revive【オリジナルSS】
Revive
睡眠時間は30分も取れていない。壁の時計を見るといよいよ植物が生え始め、足の踏み場もないこの部屋には妙な一体感すら感じるほどだ。私はベッドの上から動かず、天井や壁から聞こえてくる言葉を遮るように両手で両耳を塞ぐのだが、ボリュームは変わらず話しかけてくるからどうしていいものだかわからない。
「お前はどうしようもないやつだな。」
部屋中が笑う。
「お前を監視してるんだよ。
夢見る紅茶【オリジナルSS】
夢見る紅茶
一体私のなにがいけないっていうのかしら。初恋のレン君も、3年3組のテツヤくんも、中学のショウゴ先輩も、誰も私のことを好きになってはくれなかったわ。私は恋が敗れれば敗れるほど、どんどん恋に、誰かに愛されることに憧れていったの。そしてついに運命の人を見つけたわ。大学のミスターコンで優勝した北山君。背がスラッと高くて、切れ長の瞳が色っぽい彼に、私はもう夢中になったの。でも彼の周りにはいつも