Balance〜僕の恋愛観〜【オリジナルSS】

Balance〜僕の恋愛観〜

そんなに恋愛に積極的なほうじゃない、むしろ煩わしいものとすら思っている。毎日仕事に追われてはいるが、それでもやりがいはあった。自分の努力がきちんと形になって返ってくるのは仕事のいいところ。だが恋愛はどうだろう。どれだけ愛情を注いでいたとしても、いつか終わるってしまうのなら、恋愛なんてしないほうが時間も無駄にせずに済む。

「…もしもし。うん、起きてた。なんだそれ。…いいよ、もう寝るから少しな。」

3ヶ月前に年下の彼女が出来た。年下と付き合うのは初めてだが、存外悪くもない。彼女はストレートに気持ちを伝えてくるし、表情や声色にもはっきり感情が表れる。可愛らしいとも思うし、自分なりに大切にしたいと思う。ただ、僕は自分ひとりの時間が好きだったから、そこは懸念点ではあった。

「いいよ。なにもおもてなし出来ないけど。」

わかりやすい彼女ではあったけど、たまにふと、あまりに僕に一生懸命になりすぎてはいないか、そんなことが心配になった。いや、彼女のことが心配なんじゃない、僕が彼女の一生懸命さに応える自信がないんだ。仕事に集中したいからこそ、休みの日は頭を空っぽにして写真を撮りに行ったり、それを現像したりして、そういう時間を設けることが僕なりのバランスの取り方だった。

「写真溜めちゃってるから現像したいんだよね。…いいよ、退屈させてもいいなら。」

彼女はあまり贅沢ではない。どこか高い店に行きたがるわけでもなく、ブランド物を欲しがるわけでもない。「僕といること」それだけを望んでいる。たったそれだけ、それだけにすら僕は応え切れる自信がない。彼女にどれだけの時間を割くかは、僕自身を保てるかどうかに関わって来る。これだから恋愛は煩わしいのだ。

「ちゃんと好きだよ。…不安になった?」

時たま現れる彼女の不安。自分が全力で僕に向かうからこそ怖いんだろう。僕はちゃんと彼女が好きだし、大切にしたいと思っている。でも思った通りに出来るかどうかの自信のなさからくる不安は、彼女に滲んで伝わっているのかも知れない。

「いや、大丈夫。…うん、俺も楽しみにしてる。おやすみ。」

僕は彼女がちゃんと好きなんだろうか。好きだと言われるからそれに応えたい、ただそれだけにはなってないだろうか。いつか僕の中でバランスが取れなくなってしまったら、やっぱり恋愛なんていつか終わってしまうのだろうか。僕は彼女を心から好きになりたい。

End.


【後書き】
ひとつ前に投稿したオリジナルSSの

「Firewood〜私の恋愛観〜」

の彼目線で書いたものになります。初めて付き合った人がモデルになっています。

朗読、声劇、演劇など、お好きにお使いください。

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