Firewood〜私の恋愛観〜【オリジナルSS】

Firewood〜私の恋愛観〜

みんなどうやって恋愛しているだろう。楽しく幸せな恋愛のさなかで、私はしばしば疑問に思う。

「もしもし?え、声が聴きたかった的な?ちょっと話そうよ。10分だけ!」

今は仕事が忙しい5つ年上の男性と付き合っていて、私が一生懸命に押して押して押してようやく振り向いてくれたのが経緯だ。仕事と息抜きのカメラにしか興味のない彼を押し続けるのはなかなかの苦難だったが、それでも今はそれなりに大事に想ってもらっているのが伝わって嬉しい。

「また週末泊まりに行ってもいい?…やった、楽しみ!」

私はこのやり方しか知らない。私の恋愛はいつも、焚き火のような、暖炉のようなものだと思っていて、常に薪をくべていないと、その火が潰えてしまうような焦燥感に駆られていた。私が好きを言葉や態度で表しているときいつも思う、みんなどうやって恋愛してるんだろう。私は私の恋愛感情を持続するために、どうしてこんなにあくせくしているんだろう。

「次の日起きたらさ、…え?現像作業?…そっか。出かけなくていいからさ、一緒にいたい。」

そばにいないと、常になにかで繋がっていないと、私の中の火が消えてしまう。だから薪をくべるんだ。でもわからなくなる、好きな人とずっと一緒にいることが目的だったはずなのに、いつの間にか、私がこの人を好きでいるため、そんな思いにすり替わってしまっている。相手から愛情が伝われば好きでいられるのかも知れない。でも、愛されるためにはこちらから愛さなきゃいけない。妙な義務感が、自分の恋愛を難しくさせていた。

「…ねぇ、私のこと好き?…ううん、なんでもない。」

猜疑心は相手に伝播する。こんなこといちいち聞かなきゃ不安になる自分が嫌だった。その不安の内訳は、「相手から想われなくなること」の他に、「私の中の火が消えてしまうこと」も含まれているように思う。良い彼女であり続けること、相手を想い続けること、何よりも私の中の火が消えてしまわないこと、そのために私はいつも必死だった。

「ごめんね?変なこと言って。…うん、週末楽しみにしてる。」

薪をどんどんくべて、酸素を送って、私の中の火が消えないように。彼への想いが消えないように。彼を好きな私が消えないように。残るのは灰だけ、そんな悲しい終わりは嫌だから。大きく燃えなくていい、静かにずっと絶やず続きますように。

End.


【後書き】
仕事で炭火をいじっているんですが、そのときにふと浮かんだのが「火を絶やさないようにしてるのって恋愛と似てるな」という考えでした。
この話が完全に私の恋愛観と一致しているかと問われればそうではないと思うのですが、かなり近いなと思ったときに、自分自身の歪みみたいなものと対峙したような気分になりました。

次に投稿する作品はこの作品と対になっています。
彼サイドのお話です。良ければ。

「Balance〜僕の恋愛観」


朗読、声劇、演劇など、お好きにお使いください。

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