マガジンのカバー画像

映画時評〜新作から名作まで

31
入江悠が観た映画を論評するマガジン。旬な新作や話題作を中心にきまぐれに評論していきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

【映画評】新作『猿の惑星 キングダム』公開記念!『猿の惑星』シリーズとは何なのか?

【映画評】新作『猿の惑星 キングダム』公開記念!『猿の惑星』シリーズとは何なのか?

はじめにわたしは『猿の惑星』シリーズの大ファンです。
今回リブート版の最新作が公開になったので、ワクワクしながら観てきました。
まずは1960年代から続く『猿の惑星』シリーズについてまとめておきましょう。
SFとしても、キャラクターものとしても、文明批評としても、第一級の傑作揃いといえます。
未見の方はこれから1本ずつ観ていっても楽しめると思います。

1、『猿の惑星』の歴史エポックメイキングだっ

もっとみる
【映画評】『オーメン:ザ・ファースト』がいいぞ!

【映画評】『オーメン:ザ・ファースト』がいいぞ!

わたし、『オーメン』が大好きです。
ラーメンが好きです、みたいですね、文字ヅラだけだと。
言わずと知れた『オーメン』は1976年公開のホラー映画で、「ダミアン」と呼ばれる男の子のまわりで不可解な事件が起きていくストーリー。
666、という忌まわしい数字をこの映画で覚えた人も多いんじゃないでしょうか。
監督は名匠リチャード・ドナー。
その前日譚にあたる映画がこのたび公開されました、やったぜ。

もっとみる
【映画評】クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』をどう観たか

【映画評】クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』をどう観たか

クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』が公開になりました。
まずはじめに、本作が日本で公開されてほんと良かった、というのが率直な感想です。
変なとこに気をつかったり、忖度したりして、公開されないのがいちばん悲しく、地球上で日本だけスキップというような最悪な可能性を回避できただけでわたしは満足です。
配給のビターズ・エンドさんありがとう、です。

先に個人的なオススメです。
この映画の公開

もっとみる
【映画評】31年ぶりの長編映画、ビクトル・エリセ監督『瞳をとじて』

【映画評】31年ぶりの長編映画、ビクトル・エリセ監督『瞳をとじて』

これはもう2024年、最大級のニュースでしょう。
ビクトル・エリセ監督の新作が公開される。
なんと長編としては31年ぶりとのこと。

スペイン出身のエリセ監督は1940年生まれで今年84才。
今回の『瞳をとじて』が長編4本目(ドキュメンタリーを除くと3本目)。
本当に寡作な作家であり、同時に多くの映画ファンが新作を観たいと願っている監督でもあります。
わたしも『ミツバチのささやき』『エル・スール』

もっとみる
ラッセル・クロウ論ー自分の<存在>を信じる演技

ラッセル・クロウ論ー自分の<存在>を信じる演技

・はじめに

今回のテーマはこちらです。

<俳優ラッセル・クロウについて真剣に考えてみよう>

俳優の世界は栄枯盛衰。
おごれるもの、だけじゃなく、おごっていなくとも、消えていく可能性がある非情の世界。
主演俳優ともなれば、さらにシビアです。
次から次に素敵な俳優は出てくるし、若手も出てくる。
そんななか、特にイケメンじゃなくてもずっと生き残り、最前線で戦っている主演級の俳優がいます。
わたしが

もっとみる
【映画評】三宅唱監督『夜明けのすべて』/世界はこんなに優しく、僕らは夜空を見つめて生きていける

【映画評】三宅唱監督『夜明けのすべて』/世界はこんなに優しく、僕らは夜空を見つめて生きていける

昨年の夏前、東京の撮影所で『室町無頼』の準備をしていると、ばったり三宅唱監督に会いました。
「今日は何の作業ですか?」と聞くと、三宅さんは「新作のダビングです」と答えました。
『ケイコ 目を澄ませて』という傑作に続き、どんな映画が放たれるのか楽しみに思った記憶があります。
その映画こそ、今公開中の『夜明けのすべて』でしょう。
大泉学園のT-JOYで観てきました。

もっとみる
エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』、20世紀最後の大傑作

エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』、20世紀最後の大傑作

わたしの地元のミニシアター、深谷シネマでリバイバル上映がやっていたので観に行ってきました。
不朽の名作、エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』です。
1995年製作の本作、第48回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しています。
日本にもファンが多く、もはや説明不要の傑作といえるでしょう。
わたしは大学生時代にVHSで観て、いたく感動した記憶があります。
それ以来ずっと観ていなくて、今

もっとみる
傑作! 世界史に残らない西部開拓史『ファースト・カウ』(ケリー・ライカート監督)

傑作! 世界史に残らない西部開拓史『ファースト・カウ』(ケリー・ライカート監督)

昨年くらいから、「ケリー・ライカート監督」の高い評判をよく耳にするようになりました。

「アメリカのインディペンデント映画監督」
「現代アメリカ映画の最重要作家」

そんな冠がつき、紹介されることが多い気がします。
どんな作家なんだろう、観てみたい。
そう思っていたら、監督作『ファースト・カウ』の上映が始まりました。

2020年製作の映画なので、少し時間が経っての日本公開のようです。
東京の新宿

もっとみる
こんな時代だからこそ丁寧に生活する歓び。アキ・カウリスマキ監督『枯れ葉』

こんな時代だからこそ丁寧に生活する歓び。アキ・カウリスマキ監督『枯れ葉』

アキ・カウリスマキ監督の新作がやってきました。
タイトルは『枯れ葉』。

『希望のかなた』を観たのは2017年だから、あれからもう5年が経ったことになります。
今回、新宿のシネマカリテへ観にいきました。
年配の方を中心にけっこう混んでいて、嬉しくなっちゃいました。

冒頭から、「おっ」と思います。スーパーのベルトコンベアに、袋につめられた肉が流れてきます。その肉がベルトコンベアのゴールに到着し、行

もっとみる
悪魔か、バケモノか。リドリー・スコット監督『ナポレオン』評

悪魔か、バケモノか。リドリー・スコット監督『ナポレオン』評

・イントロダクション
こんにちは、入江悠です。
いきなり私ごとで恐縮ですが、先月、時代劇の撮影現場でまたひとつ年をとりました。
時代劇の撮影日記はこちらからお読みいただけます。

年をとると、老いてなお精力旺盛に頑張っている人をすごいな、と思うようになります。
そのひとりが、リドリー・スコット監督です。
彼が撮った代表作のひとつ『エイリアン』は、わたしがこの世にオギャアと生まれた1979年に公開で

もっとみる
みんな〜やってるか! 北野武監督のオールスター時代劇『首』

みんな〜やってるか! 北野武監督のオールスター時代劇『首』

北野武監督の新作『首』を観てきました。
時代劇です。

10代の終わりは完全に「世界のキタノ」の虜だったわたし。
北海道大学を受験したその足で、札幌にて『HANA-BI』を観たのも良い思い出です。
あの頃の映画監督北野武はわたしにとってスターでした。
世界的に観ても凄い映画作家だったと思います。
『その男、凶暴につき』『ソナチネ』『キッズ・リターン』などはいまでも個人的オールタイムベスト100に入

もっとみる
<AI映画の新たなビジョン>ギャレス・エドワーズ監督『ザ・クリエイター/創造者』

<AI映画の新たなビジョン>ギャレス・エドワーズ監督『ザ・クリエイター/創造者』

ギャレス・エドワーズ監督が監督・脚本を務めたSFがやってきました。

『ザ・クリエイター/創造者』

予告編を観るかぎり、人類とAI(ロボット)の未来の戦いを描いた作品。
このジャンルはこどもの頃から大好物のため、一抹の不安と、それを上回る期待を胸に、京都のシネコンへ向かいました。

もっとみる
オススメ! ドラマ『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』

オススメ! ドラマ『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』

こんにちは、入江悠です。
もう9月ですが、まだまだ暑いですね。

本題に入る前に、近況です。
まもなくクランクインする時代劇映画の主演俳優が発表になりました。
大泉洋さんです。

映画ナタリー「大泉洋、入江悠の新作大型時代劇で主演!エキストラ募集」

脚本の初稿執筆から約8年。
いくたびの荒波やコロナ禍を超えて、この映画の夢が潰えなかったのは、ひとえに大泉洋さんがいたからです。
感謝の気持ちを持ち

もっとみる