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福島県への風評加害・情報災害問題

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情報災害としての福島県への風評被害問題および自主避難者問題について
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#自主避難

鴨下家は福島を代表するのか 鼻血は何だったのか

鴨下家は福島を代表するのか 鼻血は何だったのか

・2024.9.2 21:50 赤坂プリンスホテル避難所の様子を伝える報道、広報等のスクリーンショットを追加。

加藤文宏

1 はじめに 鴨下全生氏がX/Twitterのアカウントから「レジ袋で鼻血を受けながら歩く子供 避難所でよくある光景」とポストしたのは記憶に新しい。ポストで示されたリンク先では、

と福島第一原発事故が発生した直後の避難所で経験したことを語っている。
 鼻から出血するほど被

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鼻血デマと公務員宿舎明け渡し裁判をまとめる

鼻血デマと公務員宿舎明け渡し裁判をまとめる

加藤文宏

当記事の内容

 原発事故にまつわる被曝で鼻血を流す人の噂は、2011年3月14日に『Yahoo!知恵袋』へ投稿されたものが初出と言ってよいだろう。この噂話は広がることなく消え、のちにツイッター上などでインフルエンサーが鼻血を話題にしたものの否定されて消えた。その後、5月19日発売の週刊文春5/26号の『肥田舜太郎 内部被曝患者6000人を診た医師が警告する』と題する記事が注目され、6

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語られてこなかった自主避難/生協が母たちに届けた原発事故

語られてこなかった自主避難/生協が母たちに届けた原発事故

整理・タイトル写真
加藤文宏

第一回

生協が母たちに届けた原発事故 被曝を恐れて首都圏から自主避難した母親がいる。彼女らが抱えていた不安は、妄想によって生まれた感情ではなく、日常的に接していた情報から芽生えた確信だった。
 この時期に、少なからぬ数の生活協同組合(生協)が会員のほとんどを占める女性たちに伝えた情報は、他の食料品店が伝えたものとも、政府や自治体が伝えたものとも大いに違っていた。

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語られてこなかった自主避難/保養という名の不可解な旅行

語られてこなかった自主避難/保養という名の不可解な旅行

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加藤文宏
協力/ハラオカヒサノ

第一回

第二回

不可解な保養が作り出した被害幻想 「保養」と聞けば、体を休ませて健康を養うことを思い浮かべるのが普通だ。だが避難や移住を意味する「保養」があった。厳密に言えば、今もある。この「保養」は2011年に発生した原発事故のあと登場し、きわめて特殊な活動であるため一部の人々には強烈な印象を残したが、特殊さゆえに実態が一般に知られないま

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語られてこなかった自主避難/母たちを動かした助言者と支援者の実態

語られてこなかった自主避難/母たちを動かした助言者と支援者の実態

整理・タイトル写真
加藤文宏

前回なぜ母親たちは自主避難を選択したのか250キロメートルも離れた場所から

 2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故に際して、首都圏で被曝を恐れる人々がいたのは奇妙なことではない。ところが真偽不確かな情報を真実であると確信する者が多数現れ、しかも科学的で合理的な説明を受け入れず、家族を割ってまで母子のみで関西や沖縄などへ避難する者が現れたのは反応が

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語られてこなかった自主避難/証言で綴る母と子の実態

語られてこなかった自主避難/証言で綴る母と子の実態

整理・タイトル写真
加藤文宏

 筆者と協力者による首都圏からの自主避難者への帰還支援は営利のための活動ではありません。協力者は福島県から神奈川県に避難した震災被災者の女性Hと、この女性の旧友Mでした。MがHに紹介した避難相談が筆者にもたらされて円満解決した実績をもとに、寄せられる事案が増えて第二、第三の相談例になりました。自主避難女性にとって、同性かつ避難者であるHの存在は心を開きやすかったもの

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首都圏から被曝不安層および自主避難者を生んだ情報災害の構造解明

首都圏から被曝不安層および自主避難者を生んだ情報災害の構造解明

加藤文宏(情報災害研究プロジェクト 代表)

当ページは『第1回東日本大震災・原子力災害 学術研究集会』で加藤文宏が口頭発表した論文(予稿/口頭発表スライド)のダウンロードページです。ダウンロードされるものは、正当な範囲内で行われる引用を除き、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

目次
・抄録
・ダウンロード
  予稿
  口頭発表スライド

首都圏から被曝不安層および自主避難者

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政治に誘導され利用された人々が犯した罪

政治に誘導され利用された人々が犯した罪

山本太郎を支持することで、次々と怒りが焚きつけられ、苛立ちが強くなるいっぽうだった。原発事故にまつわる真偽不確かな情報や、あきらかに誤った情報を拡散した人物は山本太郎以外にも、活動家や政治家に多数いた。マスメディアも「鼻血」や「汚染水」と連呼した。これらすべてが風評被害の原因だった。

加藤文(加藤文宏)

元被曝不安者の告白 原発事故の直後は被曝への不安でいっばいだったという首都圏在住の男性が、

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鼻血デマから考える情報災害を拡大した報道災害/首都圏からの自主避難者研究

鼻血デマから考える情報災害を拡大した報道災害/首都圏からの自主避難者研究

いまだにALPS処理水を汚染水と呼ぶなど、虚像をもとにした情報操作が行われているため風評被害が長期化しています。マスメディアや活動家が生み出した虚像は風評加害そのものです。目に見えない放射線の、存在しない被害を、虚像で可視化したはじまりは「鼻血」報道でした。この問題はマスメディアが社会的にも、政治的にも異論の者を沈黙させ、一地域を抑圧できる権力であることと、報道やコンテンツが暴力そのものであること

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災害時の不安と危機感から発生した攻撃衝動/首都圏からの自主避難者研究

災害時の不安と危機感から発生した攻撃衝動/首都圏からの自主避難者研究

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故は、原発から250kmも離れ科学的見地からも安全が見込まれていた首都圏で自主避難者を生み出しました。記事『なぜ首都圏は恐れいつ忘れたのか 放射線デマと風評加害発生の構図』で、首都圏で悪しき風評が生まれ、拡大され、この風評が信じられた背景を整理しましたが、今回は不安と危機感から攻撃衝動が発生した原因と、風評加害との関係を考えます。

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なぜ首都圏は恐れいつ忘れたのか 放射線デマと風評加害発生の構図

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被曝を恐れて首都圏から自主避難した女性たちがいます。東京都、埼玉県、神奈川県で過剰反応が生じ、デマが生産され消費されていた様子が国内の興味や関心の度合いを示すデータに表れています。なぜ首都圏で被曝を恐れる人々が多数登場して、いかにして首都圏で福島産の品々は忌避されるに至ったのでしょうか。悪しき風評が生まれ、拡大され、その風評が信じられた背景を整理します。

構成・タイトル写真
加藤文

はじめに 

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