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ドラマ・シネマローグ

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日本のドラマ・映画を中心に感想と思ったこと考えたこと。
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#おすすめ名作映画

映画「怪物」〜人は、見たいものだけを、見たいように見ている

映画「怪物」〜人は、見たいものだけを、見たいように見ている

ずっと観たかった映画「怪物」
実は、昨年の一時帰国の際に飛行機の中で観ることが出来たのだけど、途中何度か機内アナウンスが入り画面が中断したりで集中出来なかったこともあり、観終わったあとも混沌として感想がまとまらず…。
今こちらの国ではやっと上映が始まりもう一度観たので、今頃だけど感想を書こうと思う。

あらすじについては、note内でも沢山の感想記事があるので割愛する。

まず2度観た最初の感想は

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映画「ノスタルジア」 アンドレイ・タルコフスキーの内的宇宙と映像詩

映画「ノスタルジア」 アンドレイ・タルコフスキーの内的宇宙と映像詩

30年ぶりくらいにタルコフスキーの映画を再び観た。

アンドレイ・タルコフスキーは旧ソ連出身の映画監督で、亡命後は祖国に戻ることなく1986年にパリで生涯を終えている。

「ノスタルジア」は、タルコフスキーの中でも一番好きな作品だ。
18世紀ロシアの音楽家であるサスノフスキーの足跡を辿りイタリアに滞在している、主人公の詩人・ゴルチャコフは、信仰心の厚さから世界の終末を信じ7年間も家族ぐるみで家に閉

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アキ・カウリスマキと私

アキ・カウリスマキと私

私がアキ・カウリスマキの映画に出会ったのは、今からもう30年以上も前のことで、たまたま映画館で「真夜中の虹」を観たのがきっかけだった。
失業した炭鉱夫カスリネン(トゥロ・パヤラ)は、寒々とした北からひたすら南へと向かうが、数々の不運が彼を襲う。しかし、カスリネンは泣きも喚きもせず、当然ながら笑いもしない。のべつまくなし煙草をふかすだけだ。
仏頂面のぱっとしない男は、いくつもの仕事を掛け持ちしている

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ジョン・カサヴェテス~30年ぶりの邂逅

ジョン・カサヴェテス~30年ぶりの邂逅

先日、契約しているサブスクでジョン・カサヴェテス監督の作品が配信されているのを発見し、30年ぶりくらいに鑑賞した。
20~30代の映画漬けだった頃に出会った、インディペンデント映画の父と呼ばれるギリシャ系アメリカ人のジョン・カサヴェテスの作品は、ハリウッドとは一線を画し、あくまでもインディペンデントにこだわり、自身が俳優業で得たギャラ(「ローズマリーの赤ちゃん」では夫役)、自宅も抵当に入れ、撮影場

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映画「男と女 人生最良の日々」~53年後の男と女

映画「男と女 人生最良の日々」~53年後の男と女

フランス映画「男と女」の完結篇ともいえる「男と女 人生最良の日々」を先日観た。この二つの作品の間に「男と女 II」という続編もあったようだが、それは未見のまま。


「男と女 人生最良の日々」は、かつて愛しあった元レーサーの男と元映画プロデューサーの女の、長い年月を経た再会が描かれている。
息子に施設へ入れられたジャン=ルイは、時々記憶が飛ぶようになり、夢と現実の境界が曖昧になっている。
息子は父

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映画「すばらしき世界」〜厳しくも優しくこの世は美しい

映画「すばらしき世界」〜厳しくも優しくこの世は美しい

西川美和監督作品『すばらしき世界』を遅ればせながら視聴した。
今回も一人の人間の多面性と人生に深く切り込んだ脚本が素晴らしかった。

役所広司さん演じる三上は、旭川刑務所での13年の刑期を終え出所し東京へ向かう。
人生の大半を刑務所で過ごしてきた三上は、今度こそもう二度とムショには戻らないと誓い悪戦苦闘しながら社会復帰を目指すが、元ヤクザの前科者である三上が堅気の世界で生きる術を見つけることはそう

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