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風花 朋(Kazahana Tomo)
2022年2月20日 15:29
重たい灰色の雲が空を覆っている。まさに「どんより」という表現がぴったりの景色だ。吐く息は白く、凍えそうな空気が頬に痛い。春の訪れはまだ感じられず、たまにうっすらとさす日差しは、すぐにまた分厚い雲にかき消されてしまっていた。そんな冬空の下、私たちは近所の川沿いの遊歩道を二人並んで歩いている。手にはたくさんの食料とお酒が詰まった袋を携えながら。つないだ手はひんやりと冷たい。「寒い、寒い」と言いなが
2021年11月7日 12:23
ずっと待ち続けていたその時を、もう待たなくていいことへの安堵と少しの罪悪感。そんなもの、持つ必要はないのだけれど。ずっと望んでいたその時は結局来なかった。けれどおそらくそれを上回る時に巡り会えたから、きっとこの道で合っているのだろう。私のこころの中に、きっとずっと居続ける人。忘れることはないであろうその人。私の時は、おそらくあの瞬間で止まってしまっていた。動いてはいけないような気もして
2021年10月24日 16:50
目の前に愛しい人がいる。その人も私を想ってくれているという。大真面目な顔をしながら「あなたが好きだ」と話すその人の、その言葉のひとつひとつは、とても率直で、あけすけで、そこにはまったく嘘が存在しなかった。私はその人を見つめながら、その嘘のない言葉が私の心のなかにまっすぐ入ってきて、そして徐々に心の内をあたためてゆくのを感じていた。こんなふうにお互いがお互いを愛しく想いあえるということは、
2020年8月26日 12:44
1度知ってしまったことを、知らなかったことにはできない。そばにいる安堵感、心地よい温もり、離れ難いあの感触。それらすべてを、どうしても自ら手放すことができなかった。もうどうにも誤魔化しが効かないことは、明白だったけれど。それでもどうにか、この心のなかのモヤモヤをこのまま見ないふりをして、そうしていればいつかそれも霧散して消え去って、すべてはうまいこと進んでいくんじゃないかなんて思ってみたり
2020年8月18日 17:44
暑い。うだるようなこの過酷な暑さに、私の頭が正常な判断をしてくれなくなった。まるで熱に浮かされたように。あまりに久しぶりのそれは、思っていたよりとても素敵なことだった。もうあの人に対しての罪悪感も感じなかった。それくらいには時間は経ったのだと、実感した。もともと罪悪感を感じる必要性など、なかったのだけれど。あたたかさに、心から安堵した。そのあたたかさは、私の中のずっと頑なに閉じ
2020年7月8日 13:27
一緒に毛布にくるまりながら映画を見た。君は途中で寝てしまったけど。そんなきみの寝顔を見ていたら、なぜだか妙に安心したのを覚えている。なんだか、もうずっと前からこれが日常だったみたいに。そうして2人で過ごすことが当たり前みたいに思えたのだ。いま思い返すと、あれがすべての始まりだった。あの時の光景を思い出そうとすると、いつだって、まるで世界が突如として煌めきを放ったように、あの場面がキ
2020年4月16日 22:01
わからないよ、そんなこと。君は時にカッコいいし、時にかわいいし、時に情けないし、時に弱っちいし、時に情熱的だし、時にセンシティブだし、時に大人の男性だし、時に無邪気なクソガキだし。愛おしい気持ちが大きい分、嫌いなところもけっこうある。そんなの受け入れられない!って思う。でもなぜか最終的には、そのすべてをひっくるめて愛おしく感じる。君の存在そのものが愛おしい。頭が狂ったのかも
2020年4月7日 13:02
「そんなに好きじゃなかったから、付き合い続けたいかよくわからない。」これが、人生で唯一生涯を共にしたいと願った男性に言われた一言。私が彼の親友と揉めて、迷惑をかけたから別れてもいいよ、と話した直後の一言。別れてもいいよ、なんて言葉を放った私が悪い。だって本当は期待していたのだから。「別れない」という言葉を。寄りかかってはいけないとわかりながらも、生まれて初めて感じた愛情に浮かれ