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梅田行き芸バスから、もう映画は始まっているんだ。 #映画にまつわる思い出

#映画にまつわる思い出

というタグ企画への参加作品ではあるが、かなり特定の層に的を絞った記事である。具体的に言えば「大阪芸大に通ってる映画好きの生徒」にだけ響く記事だが、それでもよければぜひ読んでいってほしい。


前置きはさておき。

映画は、映画館の席に座ってシアターが暗くなってからがスタートなのではない。映画館でどの作品を見ようか迷っている時。制作が発表されて心ときめいている時。それぞれに映画の始まりと言うものがあって、ずーっと心がときめいてるというか、期待値が高まっていくだけの時間があるのだと私は考えている。

そう思うと、私は割と
エモーショナルな助走を踏んで映画を見ていた。

大学3年生ぐらいから私は、大きなシネコンで上映されるような大作ではなく、ミニシアター系の映画に手を出し始めてた。当時はいつも通っていた天王寺の映画館の他に、梅田界隈のシネリーブルや(今はなき)テアトル梅田に行くことが多かった。

芸大生の私が梅田までわざわざ出るには、まず芸大からスクールバスで最寄りの喜志駅まで出る、そこから近鉄で30分かけて阿倍野、地下鉄御堂筋線で梅田、と言うふうになかなかの工程を経ないと出てこれない。だが、芸大生にはとっておきの切り札があった。

それが、梅田直通のスクールバスだ。

実は、遠方から通う芸大生のために毎日阪神高速経由でスクールバスが運行されていて、学生課でチケットを買えば、定期券のない学生でも利用ができる。普通に電車賃を払うよりお得に、しかも乗り換えなしで梅田までダイレクトインできる。さらに、このバス。なんとシネリーブルがある梅田スカイビルの真下に停車してくれる。これは使わない手はない。

私は、注目作が公開されるたびに4限の授業もそこそこに乗り場へダッシュし、バスへ飛び乗って梅田へ直行していた。なんせ、スクールバスの便数は少ない。1本逃せば今日は終わり!なんてこともある。とにかく、油断ならないのだ。


梅田までは片道60分ぐらい。

河内の山間の光景から、松原あたりの住宅街、天王寺のハルカスをすり抜けて一気に環状線のなかへなだれ込む。大阪都心に近づけば近づくほどダイナミックな街並みになっていくのを見て、何度もワクワクしていた。だって、いつもの電車移動とは絶対に見られない景色と、バスの揺れ。映画を見るための移動とは思えない、ちょっとした小旅行のような感覚が私を包むのだからたまらない。
この時間がとても好きだった。

この間に、好きな音楽を聴いて気持ちを上げたり、映画の前情報をチェックして出演者のことを調べたり、予告編を見たり。一通りやることが落ち着いたら、窓の外の綺麗な夕日を見ながらのんびり黄昏れる。バスのシートにもたれている時間からもう映画は絶賛上映中だ。

だから、あの時に見た「サマーフィルムにのって」とか「愛なのに」とか、その辺りの作品のことはよく覚えている。バスの中で見た綺麗な夕日と、流れる車窓と、梅田の高層ビル群の消えない灯りと、全部セットにして覚えてるのだ。

あの60分間の「移動」という名の助走が何倍も映画を楽しくさせてくれたし、その後の余韻までちょっと美味しく味合わせてくれた気がして。ああ自分って恵まれた映画体験してたんだなぁと今でも懐かしくなる。

この記事を読んでいる大阪芸大生よ。
梅バスはいいぞ。梅バスで思いっきり黄昏て
その後映画見てラーメン食って、創作意欲高めてみな。



おしまい。



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