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読書感想文

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記事一覧

【読書記録】芦沢央「火のないところに煙は」

【読書記録】芦沢央「火のないところに煙は」

先日、読み終えた芦沢央さんの「火のないところに煙は」が面白かった。
芦沢央さん、エックスとかで読了ツイートに上がっているのをよくお見かけして、
ずーっと気になっていたので、ちょっくら読んでみることに。
初めて読む芦沢央さんがコレで正解なのかは、わからないけれど、私は面白かったのでよしとする。

芦沢央さん。
なぜか頭の中で必ず「芹沢」(セリザワ)に変換されてしまい、検索すると見つけることができない

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【読書記録】父の詫び状/向田邦子

【読書記録】父の詫び状/向田邦子

父の本棚を整理するとき、読みたいなと思った本をいくつか
持ち帰った。
読みたい読みたいと思いつつ、なかなか進まなかった向田邦子さん。
なぜだかわからないが、今回読んでみたらスルスルと心に入ってきた。

読書にはいつもなんだかタイミングがあって、不思議に思っている。

私が生まれる前に亡くなりになった向田邦子さんだが、
そのお名前はもちろん知っていた。
昭和の名作ドラマの紹介番組などには必ずお名前が

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【読書記録】よしもとばなな「なんくるない」を読みながら思ったこと

【読書記録】よしもとばなな「なんくるない」を読みながら思ったこと

夏休み。沖縄に行くにあたって「沖縄」がテーマの本を読んでいた。
(そういうことをよくやる私)
直接行く場所とは関係ないのだが、その空気を感じたくて。

こちらの短編集は沖縄が舞台のもの。
その中の「なんくるない」は離婚した女性がその傷から立ち直ることができず、
思い立って沖縄へ一人いき、そこで感じたままに出会って、時を過ごす…
という話なのだが、
この主人公の「離婚した夫」への感情を読んでいるとき

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【読書記録】春にして君を離れ/アガサ・クリスティ

【読書記録】春にして君を離れ/アガサ・クリスティ

よくできた妻・完璧な人生を歩んでいると思っていた主人公・ジョーンが
バグダッドへ娘を見舞った帰りに、
女学校時代の友人と出会い、その会話にふと疑問を持ち、
途中足止めを喰らったところで悶々と自分の人生を振り返ることに
なったお話。

結婚生活、というのは私の持論では、
「あまり深く考えない方がいい」と思う。

彼女も深く深く考えることで、
実は自分が家族からどう思われているかに
気がついてしまう、

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【読書記録】三千円の使い方/原田ひ香

【読書記録】三千円の使い方/原田ひ香

大変、身につまされる話である。

ずーっと話題になって気にはなっていたのだけれど、
啓発本?的な感じかなあと想像しており、
「今じゃないな」と勝手に後回しにしていたのだが、
この度、出会いがやってきた。

啓発本じゃない。
ちゃんと、物語である。

お恥ずかしい話なのだが、私はお金勘定が苦手だと思う。
この物語でいえば、妹に近いかもしれない。
「欲しい」と思うものをなんとなく手に入れがちなタイプ。

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【読書記録】小川糸/あつあつを召し上がれ

【読書記録】小川糸/あつあつを召し上がれ

私が小学生ぐらいの頃、
うちの両親は共働きだった。
兄二人が幼い頃は、母は専業主婦だったのだが、
私が幼稚園から中学生ぐらいにかけて
母は働き、父は定時に上がる仕事だったので、
夜ご飯を父が作ることが多かった。

うちの両親は自分たちが大変だとか、
手伝いをしろ、とか言うタイプではなく、
私はそれを当たり前のように享受していたと思う。

父が作る料理で、私がよく覚えているのは
牛肉と玉ねぎを炒めた

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【読書記録】暴虎の牙/柚月裕子

【読書記録】暴虎の牙/柚月裕子

いい年をした大人が、声を大にして言っていいのかどうかわからないのだが、

私は広島弁が好きだ
いや、もう…自分でもなぜか分からないけれど、広島弁が好きで好きで、
聞けばキュンキュンしてしまう。
幸か不幸か広島弁を話す男性にお近づきになったことがないので、
惚れた経験はないが、
もしも出会っていたなら、惚れていたんじゃなかろうか。
女の子のお友達はいたのだが、
問答無用で好感を持っていた。

おそら

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【読書記録】地球星人/村田沙耶香

【読書記録】地球星人/村田沙耶香

気分が、村田沙耶香さんづいていて、
「信仰」から続けて読んでみた。

ポハピピンポボピア星人のあたりでは、
村田さんワールド炸裂だな、ふむふむ、なんて気持ちで
読んでいたのだけれど、徐々に、私の想像の範疇を越える展開が始まり、
手に負えなくなっていく。

主人公の奈月は、
自身を「魔法少女」と言い、「ポハピピンポビア星人」のピュートと
友達なのだという。
年に1回しか会えない、いとこの由宇は自分の

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【読書記録】死は存在しない/田坂広志

【読書記録】死は存在しない/田坂広志

書店に並んでいた、この強すぎるタイトルに惹かれて思わず購入。
だって、東大卒の多摩大学名誉教授が、量子科学の観点から死後について語るってんだから。
どうも大学名にものすごい説得力を感じてしまう私は、将来大学名で怪しいものに引っかかりそうだなと自分でも思い、これからの人生の教訓にしたいと思う。
(本書が怪しいかどうかは別の話)
怪しいの定義は色々あるが、
「死は存在しない」というその事実について、は

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【読書記録】ミトンとふびん

【読書記録】ミトンとふびん

みとんさんのこの記事を読んでから、
ずーっと読みたいと思っていたもの。
読書には出会いとタイミングがあると思う。
その時に読んでいた本があって、
あとで読もうと思って忘れてしまうものもあったり、
不意に出会って先に読んだり、
一度読んでなんか違うなぁと思って、本棚に閉まっていたのに、
ふと手に取り、読んでみたらこれが一気読み…
なんてこともある。
こちらの本も、みとんさんの記事から一年、頭の片隅に

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【読書記録】母性/湊かなえ

【読書記録】母性/湊かなえ

高校生の女の子が自宅から転落した事件の報道記事から始まる本書。

「愛能う限り」

母親の言葉を巡り、事故なのか自殺なのか、が謎を呼ぶ…。

娘と母親の二つの視点から語られていく物語。
そこに時々挟まれる第三者の目線。

真実は何なのか。母親の目線と娘の目線、どちらが真実なのか。
完全に食い違う話に、一致する事実はあるのか。

湊かなえさんの本は、ラストで視点がぐるりと反転し、「ほーっなるほど!」

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【映画感想】ラーゲリより愛を込めて/ニノと映画と戦争と

【映画感想】ラーゲリより愛を込めて/ニノと映画と戦争と

観たいなあ観たいなあと思っていて、
観に行ってきた。
公開前にニノが色々とテレビに出て番宣をしており、
それを見た娘が、
「私もこれ観たいな〜」と言う。
一度目はちょっと聞こえないふりをしてみたら(ひどい)、
娘がもう一度私を見ながら
「これ、私も見たいな〜」と言う。
返事はせずに、じっと娘を見返してみる。
「これ、私も見たいな〜」
3回言われた。
「か、考えとく」
辛うじて返事をする。
だ、だっ

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【読書記録】傲慢と善良/辻村深月

【読書記録】傲慢と善良/辻村深月

現代の「婚活」における男女についての小説なのだが、
私は婚活をせずに結婚しているので、「は〜そういうもんかあ。
こういう世界があるのか〜大変やな〜」といういたって呑気な感想を
持って読むことができたが、
これが今まさに婚活をしている人や、婚活経験のある人が読んだなら、
さぞや胸を抉られるような、呼吸困難に陥ってしまうような
嫌な気持ちになるのではないかと思う。

本書の中で、真美の地元の結婚相談所

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【読書記録】本心/平野啓一郎

【読書記録】本心/平野啓一郎

亡くなった人の「本心」が知りたい。
もし、叶うならば、あの時、あの人は
”本当は”何を思っていたのか、それを知ることができたなら…。

主人公・朔也は、亡くなった母のVF(バーチャルフィギュア)を作ってほしいと
依頼する。
生前の母は、「自由死」を選択したいと言っていた。
主人公はその考えを受け入れることができずにいた。
そうこうしているうちに、不慮の事故で亡くなってしまった母。
その死を受け入れ

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