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MNB連続詩集『どどめ色』

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毎日1〜2つずつ更新する詩集です。ジャンルあれこれです。よかったら読んでね。いや絶対読んでね。
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2022年11月の記事一覧

詩「たろう・イン・師走タウン」

「チャンピオンの白パーカー着て
告白に失敗した たろう
こんちきしょうのトゥ・シューズ
人混みでアンのないトロワばかり
きつい上に退屈さを
実行 実行 実行!」

聖母から授かった使命とか全うしたい
はあ おれ 全うしたいのに
人生の卒制は
色塗り間近で牛丼に負けてる

「ご覧の勢いで
突進されました件の殿方は
姫君に大
層気を遣っていらっしゃるようです」

そうです おれ
この通りを渡っていくの

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詩「スノウ/わたがし=それはわたし」

詩「スノウ/わたがし=それはわたし」

初雪が消すためらい線から
君の家までは700m
身体の後ろに大きな街が見える
病んだ志はいつも花柄

しまいそびれた風鈴の
泳ぐ金魚に赤二匹

りりーん りん り 
   りりーん りん り
 黒い金魚の背びれを見ながら
     わたしはおどる
  りりーん りん り
      りりーん りん り
       冬のお祭りであなたと
             いっ しよ

夕方街を照らす光を

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詩「パッチワーク・ソングス・マイライフ」

詩「パッチワーク・ソングス・マイライフ」

朝髪を  気持ちいい  束ねるとそれは矢になり高 拝啓 くなりかけた  待って  昼の太陽を射った破 平素は 片は夜空の星となり  ちょっと痛いかも  地上を照らすサーチライトサテライトどうか彼と彼女だけを  一回こっちを  私の知らないところで  触って  褒め称えて慈 誠にご助力等 母の瞳の奥に映る  あ  冴えないゴミ  あ  箱の中にはヘア  あ  ピンが捨てられ続ける弾 頂きまして 丸み

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詩「日比谷線午前二時の記憶の記憶が」

きみの舵を取るのは青い猫
探さないで今夜の狡いエコ
僕の両目は今日も尖るレオ
隠し 回るペン先軋むエゴ

嗚呼

街角は酷い人違い
(ララ ラ)
開くスマホにあらぬガイドが
(ラ ララ)
日比谷線 獰猛にたける
スマホの中には
埋葬された時間たちが
(ラ ラ ラ)
その時ごとの産声を上げる

きみの舵を取るのは青い猫
探さないで今夜の狡いエコ
僕の両目は今日も尖るレオ
隠し 回るペン先軋むエゴ

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詩「ちかしつで しゅき」

詩「ちかしつで しゅき」

2018/07/02 地下室で しゅき というだけの仕事だった。これでお金をもらえるのだから何てことはない。少し声をかすれさせて、指に力を入れる。スポーツのようだ。控室にて。

(この吐息があなたの吐息であることを忘れた朝にもあの金木犀は少しだけ香っており、それは紛れもなく ※読めない)

2019/12/04 寒い朝だった。凍っている。世界が。卒論は完成間近で、あとは発表を残すのみ。

もう少し

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詩「ブラインド・L」

詩「ブラインド・L」

一歩ごと闇に溶けていく公園
決まって道はゆらゆら揺れてる
まっすぐ立つわたしの絵筆は
同じ動作を続ける 続ける

通ったベンチにレイヤーを
今じゃ撮るだけで消せちゃうものだが

工事現場を避けて通った(記憶が)
いつも開かれてる無色の手帳に
刻む 塗る 切り取る 映える
それにしても長い 長い夢

通ったベンチにレイヤーを
今じゃ撮るだけで消せちゃうものだが

シャセイカンリョウ
ココロノドコカニ

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詩「キャンパス・キャンパス」

詩「キャンパス・キャンパス」

最後までそれは
コーヒーの陰に隠れてたんだ
ふりつもるばかりの夕暮れ
舞う塵に親しむ栞
霜が降りたページをめくってる
毎夜 毎夜毎夜 毎夜 嗚呼

気障と言うしかない口癖を直すこともせず君はいつもいつまでも喋り続けていて退屈さを巡らせた僕は気障になりたくてもなれはしない安い絹ごし豆腐のような相槌を打つばかりの日々スーパーなどで買い物をするたびに君の顔を思い出してシチュールウとローレルをかごの中に入

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詩「部屋とYシャツと括弧たち」

詩「部屋とYシャツと括弧たち」

来て
なんで?
来てほしいの
どうしよっかなあ
来るんじゃない結局
それはだって好きだし
そんなこと知ってたけど
ねえ耳の裏にある痣は何?
(こいつまたかよ)
【でもこのままで】
ダニにでも刺されたのかな
(ああうるさい)
【食ってかかってこい】
昨日布団洗ったのに出る?
(しらばっくれやがって)
【そこもかわいい】
そんなこともあるかもね
(ないけどな)
【昨日の男はよかった】
何かごまかしてる

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詩「泣いた」

詩「泣いた」

観葉植物 投げ   た
あなた が 飛ん だ
保険 わたし 証 の 行っ 外 た
ガ ラ ス  が 割 れ  た
地響き鳴っ         た
髪をむし         った
吠え  むかって わたしに た
あ     水      あ
大 リモ 音 コン 量
止められなかった
    陽のぼり
月消え      また沈む
     月
わたし 獣 刻む 爪 あ
あ  あ あ   あああ

後日

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詩「金属を折るマリオネット」

詩「金属を折るマリオネット」

きみは7回くらい折り曲げられた
はりがね みたいだ
学食で見てるとそう思う
焼き魚の焦げ臭さ感じながら
そう思っちゃう な
笑ってるときに
1ミリ釣り合ってない
右の口の端っこを
ちょっと引っ張ってあげたいな
オムライスを食べつつ いま
きみを13回くらい折り曲げている
わたしからすると
更に折るために折りたいな
合わせてあげた右の口の端っこを
不自然に釣り上げさせてあげたいな
たぶんきみは何度も

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詩「偉人私列伝」

詩「偉人私列伝」

偉人の顔を部屋に貼り始めた
わたし偉人が好きです
ピカソとか
初期の作品が好きです
しかしある朝
ピカソがものすごいぎょろ目で
見つめる先が
上原亜衣4時間ベストの
DVDであることに
ある時気づいてしまったので
その時一斉に剥がしてしまった
(声を上げました わたし)
ウィトゲンシュタインは横目で
日清麺職人の担々麺を見て
食べたそうだったので
食べ終わったそれを
一緒にゴミ箱に捨ててあげました

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詩「ユニコーン愛でる」

詩「ユニコーン愛でる」

秋の野でユニコーン愛でる
きみは
きみは
ユニコーンを愛でる
そう聞いたそう聞いた
大層ロマンチックにユニコーンを愛でる
三組の教室でケンタが言ってた
わたしがすきなあなた
ユニコーンを愛でる
とても愛おしいよ
わたしが愛でてあげたい
ケンタたちは嘲笑っていたけど
わたし
愛でてあげたい
そうっと そばにいてあげたいような
あなた
どんな顔をしてるだろう
目を細めて
どこか力んでいるだろうか
見た

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詩「丈のララバイ」

詩「丈のララバイ」

今夜くらいはわたしとともに 文

――何も言わない柳の下へ

わたしはそうせざるを得ないのだ

――光るさかなは群れをなし集う

わたしから漏れいでるものがあり

――ここ以外では焼け付く身体を

わたし以外では奏でられない

――感じられないそよ風でそっと癒やす

たまにはお前と二人で揺られていたい

――誰かの文からうまれたさかなは

しかし今宵もわたしの願いは叶わない

――その身をくだいて

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詩「サタデーベントラー」

詩「サタデーベントラー」

ストーブを取り出した土曜日
ツイッターのトレンドを見ながら
手帳などを取り出し
仕事の進捗を確認して
頭を抱えながら
スマホをスタンドに立てて
なにか違うなと考え出し
頭脳中
一から百までの引き出しにはひとまず
スランプと札を貼って
もうわたしにはものが書けないのだ
と今世紀最大の未発表名作を生み出したような
感慨を胸に
地球最後のイタコになってみる

(ベントラーハルキムラカミ
 ベントラーミエ

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