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【自作詩集】 霧の森〜記憶を彷徨いながら〜

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オーストラリアに来てからの風景や心情を綴った詩 心から消し去ることのできない想いなどの書き殴りの詩
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#自作詩

【写真とエッセイと詩】トロウィープ

【写真とエッセイと詩】トロウィープ

今回のロードトリップの山場とも言えるグランドキャニオンのトロウィープ。正直この発音で正しいのか?(笑)
予定では、ここでキャンプをして翌朝の日の出の写真も撮影することになっていたのだが、病み上がりの私にはキャンプはキツイということで、急遽日帰りに変更した。ここは、グランドキャニオンの一角にある秘境の地とも言える場所で、訪れる人は数少ない。その理由の一つは、辿り着くまでの道のりが極めて困難で、まず四

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【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

欧米でよく売れる写真の一つがサンスター。
太陽光を星が輝くように撮影した写真のことである。
サンスターは、希望、夢が叶う、縁起が良いなど色々言われているらしい。
私は、太陽の光が眩しくて、撮りたいと思う被写体が見つからないとサンスターを撮り始める。
もちろん、最も美しく、縁起が良いサンスターは日の出直後。
山の端であったり、木や岩の陰から輝く様を切り取る。
カメラ側も、サンスターを撮るための設定を

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【詩】通り過ぎた香気

【詩】通り過ぎた香気

有名ブランド店が立ち並ぶ大通り
ウインドウを横目に見ながら
少しだけ時間を気にして歩いていた
今日は面接の日だ
昨日まで何度も練習したから大丈夫
それでもまた
頭の中で繰り返し繰り返し
シミュレーションしていた

完璧...絶対に上手くいく

時々すれ違う人のことなど気にかけていられない
よくありがちなこの街のグレーの空だが
溢れる街のエナジーが
街全体を灰色に染めることはない

突然頭の中に艶か

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【詩】朧陽(おぼろび)

【詩】朧陽(おぼろび)

白い霧が街全体を覆う朝
天気予報では朝から晴れ
冬の寒さの中に
太陽の暖かさらしきものが
僅かに混ざっている

久しぶりに美しい朝だ
こんな日をカメラに
全て収めたくて
何かに導かれるように
心は少し焦りながら
いつものようにカメラを持って
森に出かけた

霧の中に朝陽がぼんやりと輝いている
朧陽(おぼろび)とでも言うのだろうか
私はこういう日を
『天の門が開く日』
と呼んでいる
必ずと言ってよい

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【詩】嘘つき

【詩】嘘つき

白金のお城みたいなレストラン
シャンデリアがゴージャスに輝いて
服がシャンデリアに追いつかなくて
惨めに思えて
「誰が、こんなシャンデリアに合うような服が着れるのよ」
と呟いたよね

ソムリエが来てワインの説明してたけど
わからないこといっぱい言われて
隣の友達が答えるのを聞いて
「ワインを飲んで酔う私、
そんなことわかってもどうしようもない」
と心のどこかで思ってたよね

ビーフ、フォアグラ、キ

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【詩】甘えるなんて

【詩】甘えるなんて

可愛いらしい女じゃない
声も可愛くないし
誰かを頼る前に
自分でやってしまう
無愛想で口下手で
優しい言葉なんて出てこない

子供の頃から年下の面倒みてきたから
甘えられることに慣れてしまった
甘えてきたら
助けてあげたくなる
抱きしめてあげたくなる
一緒にいてあげたくなる

私はいつだってしっかり者の
お姉さんだから
凛とした優等生を気取る
大人のふりをする

それでもね
甘えたい時もあるんだよ

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【詩】光る海

【詩】光る海

初秋の週末
また雨が4日間ほど続くと聞いて
急いで身支度をして大好きな海に向かった

到着してすぐに
靴を脱いでビーチサンダルに履き替える

砂浜から見る海は
陽の光を受けて
キラキラと星が降ってきたかのように
輝いていた

「わー、綺麗!」

私は砂浜に座って
ボーッと海のキラキラを眺めていた

打ち寄せる穏やかな波が
集めてきたキラキラを落としていく

水平線の彼方には
沢山のキラキラが集まり

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【詩】午前2時のスパイラル

【詩】午前2時のスパイラル

誰もが言った
彼女は聡明活発
ウイットに効いたジョークで
みんなを笑わせ いつだって
リーダー的存在だったって
全てを完璧にこなし
怖いものなどなかったと

誰かと時間を共有すれば
相手が何が好きかを察し
必要な言葉を用意して
気持ちよくさせる名人だった
誰もが彼女を好きだった

どんなに荒んだ心を持つ者でも
優しく包める自信があった
心を宥め穏やかにできると自負していた
汚れた道を雪を積らせ白く

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【詩】ノスタルジー

【詩】ノスタルジー

幾つの夜を越えたのだろう

生ぬるい部屋の中で

脳裏に隠れていた記憶を
掻きむしるような
不安定な音楽が流れている

ダンスフロアで踊るカップル
どこだ?
皆んな微笑んでいる
微笑みが古過ぎて
現実だったのか
想像なのかわからない

坂道を下る若い女
赤いジャケットに
ホワイトのパンツ

誰だ?見たことあるけど
思い出せない顔
背が低かった筈なのに

記憶の断片だけが
浮かんでは消える
頼りにな

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【詩】時間のループ

【詩】時間のループ

いつまで貴方は
私を時間のループに
閉じ込めるつもりなの?

私はもう疲れきっている

どうしたらここから抜けられる?
ここは本当に私がいるべき場所なの?

何もないよ
あるのは頭の中を巡る
掴めないものたちと
時間(とき)を刻む音

どうして耐えなきゃいけない?
役に立たない思い出抱えて
何ができるというのか

過去の経験も知識もスキルも
今は使い物にならないガラクタ

自分のために生きる弱さよ

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【詩】初恋

【詩】初恋

小学校5年生の春
彼は遠くから見ても光り輝いていた
クラス替えがあって彼と同じクラスになると
私のところに来てこう言った
「ねえ、僕を見てたよね。
僕も君を見てたんだけど、気づいてた?」

席替えの時、彼は私の隣に座る予定だった子と
席の番号票を交換していた
先生に不正を知られずに
私達は隣同士座る事になった

ある日彼は机の下で私の手を握ってきた
びっくりしたけど嬉しくて
それから毎日ずっと手を

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【詩】風との出逢い

【詩】風との出逢い

私がカメラを持って森へ行くのは
心に棲みついた耐えがたい寂しさを
森の花達に投影させていたから

明るい小径と暗い小径があれば
私は迷わず暗い小径を選ぶ
太陽が照らす道は私には眩し過ぎた

行き着いた森の奥は薄暗く
人の気配はない
私にはこのくらいが丁度いい

出くわすのは動物たちだけで
鹿、野うさぎ、ワラビー、
笑カワセミ、コトドリに遭遇した

すぐに逃げ去ってしまうもの
遠くから私の様子をうか

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【詩】無力な私

【詩】無力な私

都会のビルの谷間の空を見上げた
グレーの小さな空は高すぎて
私にはつかむことができないと
笑うしかなかった

広大な大地を包む空を見上げた
果てしなく広がる空は大きすぎて
私には全部抱えることはできないと
笑うしかなかった

時間をかけぬけ
見上げる空が変わっても
私は何も変わらない
笑うことしかできない無力な私

【詩】南十字星の駅で

【詩】南十字星の駅で

改札を抜けて「またね」と

友達に笑顔で手を振った

冷たい風が吹き抜ける

南十字星の駅で

西に向かう列車を見送った

青かった空が

薄紫に変わりゆく

iPodから流れるEnigmaの曲

この街の躍動が

この街の人々のエナジーが

彷徨い続ける魂にこだまする

メルボルンには本当に「南十字星」という駅が存在する。
英語だとSouthern Cross Station(サザンクロス駅)。

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