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【詩】初恋

小学校5年生の春
彼は遠くから見ても光り輝いていた
クラス替えがあって彼と同じクラスになると
私のところに来てこう言った
「ねえ、僕を見てたよね。
僕も君を見てたんだけど、気づいてた?」

席替えの時、彼は私の隣に座る予定だった子と
席の番号票を交換していた
先生に不正を知られずに
私達は隣同士座る事になった

ある日彼は机の下で私の手を握ってきた
びっくりしたけど嬉しくて
それから毎日ずっと手を繋いで授業を受けた

放課後、級長会で遅くなっても
彼はいつでも校庭でサッカーの練習をしながら
私を待っていてくれた

ある日の放課後私に気づいて駆け寄ってきた
柔らかそうな長髪と屈託のない笑顔に西陽があたり
彼は天使のように優しい光に溶けていた
私はたまらなくなって思わず頬にキスしてしまった
彼は驚きと嬉しさを隠せず頬をピンクにして
校門まで走っていって
「早く来いよ!」と私を呼んだ

いつも通り
何も喋らず距離を置いて歩いて
人気のない通りに出ると
彼はまた手を繋いできた
今日あったことを少しだけ話して
いつも通り右に曲がって
「明日も学校来るよね?」と聞く
私は「うん、明日も学校来るよ」と
笑顔で応えた

私はこんな日がずっと続いて
中学も高校も一緒に通うのだと思っていた

3学期初日、彼の姿が見えない
先生が教室に入ってきて皆んなに伝えた
彼が転校するのだと
少しして彼と彼のお母さんが教室に入ってきて
簡単に挨拶を済ませると寂しそうな顔をして彼は出て行った

あの時追いかけて行きたかった
あの時ちゃんと「好き」と言えばよかった
あの時「君が好きなのは私だよね?」と聞けばよかった

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