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【詩】朧陽(おぼろび)

白い霧が街全体を覆う朝
天気予報では朝から晴れ
冬の寒さの中に
太陽の暖かさらしきものが
僅かに混ざっている

久しぶりに美しい朝だ
こんな日をカメラに
全て収めたくて
何かに導かれるように
心は少し焦りながら
いつものようにカメラを持って
森に出かけた

霧の中に朝陽がぼんやりと輝いている
朧陽(おぼろび)とでも言うのだろうか
私はこういう日を
『天の門が開く日』
と呼んでいる
必ずと言ってよいほど
森で命を舞い上がらせる者がいる
木漏れ日はまるで
天への梯子のようで
選ばれし者だけが
あの門をくぐる事ができるのだろう
今日は誰か?

森の中を駆け抜けた
三脚を持ち急ぎ足で
一分一秒も逃したくない
今ここにある景色を全て...

少し気合いを入れ過ぎた
疲れた私は
大きな木の下に座り
イヤフォンとスマホを取り出して
ラフマニノフ交響曲第2番第3楽章をかけた
最高の気分だ
私は目を瞑り暫し音楽に酔いしれた

身体の力は抜けていく
少しずつ少しずつ
この世のしがらみからも
限られた身体の制約からも
喜怒哀楽の感情の波からも
解放されて自由になる
全てのものと一体となって
溶けていく感覚

目を開けると
私は宙を舞っていた
あの天の門をめがけて
少しずつ確実に

下を見ると
木の下でうなだれる
ヒトがいた…


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