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【note集】はじめての麻酔科

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麻酔って、なんでそうするんだろう? はじめて麻酔の現場をみる人向けに 「麻酔科医がなにを考えているのか、やさしく解説する」をコンセプトにしたnote集📚 全35記事 1記事…
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#医療従事者

【note集】はじめての麻酔科【もくじ】

【note集】はじめての麻酔科【もくじ】

麻酔って、なんでそうするんだろう?

かつて自分が麻酔科研修をしていた頃、疑問だらけでした。

「どうしていま鎮痛薬を増やすんだろう」

とか

「なんでこの吸入麻酔薬の濃度なんだろう」

とか

上級医によって言うことも違いました。
教科書をみても、はっきりとした答えがないこともありました。

しかし、麻酔はしなければなりません。
決断をしなければなりません。

どう考えて行動を選択していけばい

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「安全で快適な抜管」を実現する5つの準備

「安全で快適な抜管」を実現する5つの準備

「麻生さん!!落ち着いて!手術終りましたよ!」

「うおぉー!こ✗ん△C□*K・・」

こんな麻酔の終わり方は嫌ですよね。

覚醒や抜管に伴う興奮は術後の合併症を増やします。
喉頭痙攣や、気道損傷、交感神経亢進による循環動態の変動、創部離開などがあります。

静かに穏やかに目がさめて、いつの間にか抜管されていた、、。
そんな覚醒・抜管を目指して私が実践してきた5つの準備について解説します。

「い

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鎮痛を調整する

鎮痛を調整する

手術も終盤。
外科医が皮膚を縫い始めた。

麻酔科医
「そろそろレミフェンタニルを下げようか。」

研修医
「あ、はい!」
(まだ手術は終わっていないのに、鎮痛薬減らしちゃって大丈夫なのかな、、?)

今回は手術終了に向けた鎮痛の調整についての話です。
終わりに向けて麻酔科医が何を考えているのかを解説します!

■ multi modal analgesia最近の麻酔ではmulti modal a

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吸入麻酔濃度は【年齢調整】0.7MACで維持する

吸入麻酔濃度は【年齢調整】0.7MACで維持する

前回吸入麻酔濃度を考えるときの考え方
【MAC】について解説しました↓

今回は吸入麻酔を具体的に何%で設定するか、です。

先に結論の表を貼っておきますね。

ん?これはどう使うんだ?
と思った方でも大丈夫です!
記事の最後で具体的な使い方について解説します。

■ MACの応用、MAC-awake現代の麻酔で吸入麻酔薬に求められているのは「鎮静」です。
鎮痛・筋弛緩は別の薬剤があります。

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【全身麻酔中】痛みを判断する2つの軸

【全身麻酔中】痛みを判断する2つの軸

全身麻酔中

研修医
「心拍数と血圧があがったら患者さんが「痛がっている」っていうことですよね?」

麻酔科医
「基本はね。でもそうじゃないことも結構あるんだよ。」

例外もあるので、
総合的な判断が必要になります。

というのが前回の話でした。

今回は、

心拍数の上昇
血圧の上昇


本当に「痛み刺激」由来なのか?
その総合的な判断の仕方
についてまとめます。

(ちょっと長めの記事です。

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【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)

【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)

全身麻酔導入が終わり、手術が始まった。

麻酔科医
「患者さんが痛がっているか、ってどうやって判定する?」

研修医
「えっと、心拍数の上昇とか血圧の上昇ですか?」

麻酔科医
「そうだね!でも、、」

例外が結構あります。

■心拍数と血圧の上昇が基本

さきの会話で研修医が答えてくれた通り、

全身麻酔中の痛みの判定は、
心拍数と血圧の上昇が基本です。

簡単に流れを説明すると
図のようになり

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【麻酔記録】戦略を練る

【麻酔記録】戦略を練る

手術をうけた患者さんが
再び手術になることは
珍しくありません。

膀胱癌の再発でTUR-BT
片側人工股関節置換術後で反対側も
開頭血除去術後ではずした頭蓋骨をもどす

などなど

このような
「手術歴のある患者さん」の
麻酔依頼を受けたとき

麻酔科医は
以前の麻酔記録を
確認します。

麻酔科は
基本的にチームで診療することが多く、
同じ患者さんの
麻酔担当をすることはまれです。

なので、

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【麻酔記録】マスク換気の記録もお忘れなく

【麻酔記録】マスク換気の記録もお忘れなく

麻酔記録をながめるとき、
私は気道情報からみます。

気道はトラブルがあると
「死」に直結する
麻酔科医の重大な関心ごとです。

何か問題があるなら、
次の麻酔の時にどうするのか
考える必要があります。

次の麻酔で記録を役立てる

ひとつ
記録の例をみてみましょう。

挿管難易度:難
使用デバイス:喉頭鏡 Mac#3
BURP:あり
cormack grade:3
施行回数:2
合併症:酸素飽和

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麻酔科のお昼いっておいで=「30分休憩」

麻酔科のお昼いっておいで=「30分休憩」

「お昼休憩にいってきてください!」

同僚の麻酔科医がお昼の交代に来てくれました。
さて、あなたは何分休憩しますか、、?

麻酔科のお昼は短め

この時の休憩は長くても約30分です。

麻酔科医の多くは30分休憩できたら

「ゆっくりごはん食べられたなぁ。歯磨きまでできた。」

と感じます。

ここで
麻酔科医のお昼感覚についての
アンケートをひとつ紹介します。
twitterで「お昼休憩はどのく

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【挿管】介助者が大事な話【ポイントは2つ】

【挿管】介助者が大事な話【ポイントは2つ】

挿管というと、
「喉頭展開」に意識がいきがちです。

喉頭鏡でぐいっ、とやるおなじみの光景ですね。

挿管する手前の一番重要なところ、
というイメージですが
他の下準備にも注目するべきです。

他の手技にも言えることですが、
成功の9割が下準備にかかっています。

きちんと計画する、ちゃんと準備する。
それでほぼ決まり。
あとのことは細かいことなんです。

挿管の下準備、
それは「流れ」をちゃんと

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【開口】挿管で大切なことはすべて志村けんが教えてくれた。【解剖の解説】

【開口】挿管で大切なことはすべて志村けんが教えてくれた。【解剖の解説】

挿管の時に「口が開かないな、、」ということありますよね。
開口がイマイチな患者さんは確かにいます。

でも、ちょっとまってください!

やり方の問題で開口できていないだけかもしれません。

この記事では最大開口させるための基本と、
その解剖学的解説をしていきます。

意外と教科書に載ってないんですね!
図解で説明します。

すぐに実践できるので試してみてください。

この記事は1600文字で 3分

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点滴は麻酔科医の生命線である。

点滴は麻酔科医の生命線である。

点滴をとる。
そもそも点滴をとる目的はなんでしょうか?

手術室では、薬を入れる、急速輸液する、輸血をする、の3つが考えられます。

全身麻酔導入では「薬を入れる」が点滴の主な役割です。

最低限、薬が入れば細い点滴でもなんでもよいということです。
が、確実に血管内に入っていなければなりません。

点滴は麻酔科医にとって生命線です。

眠くなる薬も、痛みを取る薬も、血圧を調整する薬も全て点滴から入

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【ポイントは2つ】麻酔導入直後の呼吸器設定

【ポイントは2つ】麻酔導入直後の呼吸器設定

昔、人工呼吸器がなかった頃
麻酔中は麻酔科医がずっとバックをもんで「手動で」換気をしていました。
今はこれを自動でやってもらうわけです。

その為には指示(呼吸器設定)をしなければなりません。

挿管直後の人工呼吸は「とりあえず」の設定でOKです。

なぜなら呼吸器設定はバチっとはじめから決まるものではないからです。
患者さんの状態をみながら調整していきます。

とりあえずスタートしてみて、それか

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実は最も困難な手技、胃管挿入

実は最も困難な手技、胃管挿入

麻酔科の数ある手技の中で、一番難しい手技は胃管挿入です。

え?挿管とかCVとか、硬膜外麻酔じゃないんですか?

そう思う人もいるかも知れません。
が、最も手こずるのは胃管なんです。

報告にもよりますが、
文献上でも意識のない、挿管されている人の
胃管挿入初回成功率は50%程度です。

胃管挿入が難しくて、手術開始が遅くなってしまうこともあります。

「なんで胃管ごときが入らないんだ。」

そん

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