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2021年9月の記事一覧
番外編 スサナルとあきら2
〈30秒で読めるよの巻〉
スサナル先生は何でもできる。
元々理系が得意な上で、人の心の機微に魅せられたくさんの小説を読むうちに、日本語の持つ深さと面白さに目覚めて今は国語を教えている。
生徒と一緒にテストを受ければまったくノー勉にも関わらず、社会で98点を取ったこともあった。
ギターが弾けて、運動ができて、身長も高くて頭もいい。
そんなスサナル先生を前にして、あきらがとんでもない
第62話 豊穣の女神
秋が過ぎ冬が過ぎ、再び春になった。
春休み中、私は埼玉に住む友人のつきちゃんから誘いを受けて、大宮まで遊びに行った。その日はまだ三月なのにまるで初夏のような陽気で、さすがに日傘の出番には早すぎると思っていたけど、実際にさしている人を見かけた時には自分も持ってくればよかったかなとちょっとだけ後悔した。
駅ビルでのランチのあと、東口へ出てそのまましばらくまっすぐ歩く。やがて街路樹のトンネルの
第57話 記録と記憶
体育祭や校外学習といったいくつかのイベントごとでさえも、今年は私に無慈悲だった。去年はあんなに会えたのに、子供の担任から外れるというだけで、こうも関係性がなくなるものなのか……。
三週間ほど前、偶然スサナル先生に会えた時に借りた本たちは、未だ私の手元にある。読み終わってから毎日小さな紙袋に入れて持ち運んではいるけれど、なかなか返すあてがない。
「僕は本なら何でも読みます。読書に関して僕は本
第55話 perfect situation
春休み明けのその日は、すっきりと晴れてはいたけど風が冷たくて、校舎内に入るとその暖かさにホッとした。
旧一年8組の教室まで送ると、今は五人となった友人達が「また同じクラスになりたいね」とあきらの元に近寄ってきた。聞けば今日は、Rも保健室に登校しているとのことで、そのことがわかって少し安心した。
この日のスケジュールは一旦前のクラスに集まって、朝のホームルームでクラス替えのプリントをもらっ