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【短編小説】ここは僕の国
私がその日、そこへ一人で訪れたのは、決して傷心していたからではない。一週間前に昔からの親友と喧嘩別れをしていたとしてもだ。言葉を当てはめるとしたら自暴自棄だったのだろう。それでも、彼女のことだけを気にしていたわけではない。三十を超えた私の生活にはいくつかの問題があった。仕事では管理職を任され始めたが、部下の教育が思うように行かなかったり、私生活では、一年前から申請していたイギリス行きの研修ビザが
もっとみる【#fetishism31】Day26 : 魔 / Magic
その年のある日、ブルーパークのクリスマスツリーの銀の星が盗まれた。銀の星は本物の星くずで出来ていて、僕の住む一日中真っ暗な夜の国を、そのツリーのてっぺんの銀の輝きが、いつも照らしてくれていた。町で暮らすみんなは、光がなくなって困っていた。僕の学校でも、銀の星を盗んだ犯人は誰だ? という話題で持ちきりだった。
この町には昔から、数人の魔法使いがいる。魔法使いたちは、大昔に別の世界から来た魔法使い
【短編小説】秋に催花雨
金沢駅に着いたのは土曜の夜だった。雨降る日本海の側の空気は凛と冷え、吐息が薄く紅色のライトアップに溶けいった。浅野川のほとり、予約していた和食屋で、一人日本酒を煽った。
この秋、私は三十歳になった。恋人はもう六年もいない。周りの友達はどんどん結婚していくのに、私には指輪をプレゼントしてくれる相手どころか、誕生日を祝ってくれるような男友達の一人もいない。年齢に比例して理想も高くなる。幼稚にもシン