宇乃夏

うのかと申します。作品をたくさんの人に読んでもらう目的で始めました。 傾向は青春/耽美…

宇乃夏

うのかと申します。作品をたくさんの人に読んでもらう目的で始めました。 傾向は青春/耽美/退廃 英語と表現の勉強のために、洋楽の和訳もやってます。たまに人生や恋愛についてのエッセイも書きます。 フォローよろしくお願いします!

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最近の記事

So over you - Charli XCX(意訳)

I'm so over you あなたのこと忘れちゃったよ Tell me, baby, are you over me? 教えて、あなたも私を忘れちゃった? I'm so over you あなたのこと忘れちゃったよ Tell me, baby, will you ever regret me? 教えて、私のこと後悔しない? Just a little girl on the TV screen TVの画面の前の小さな女の子みたい Stuck inside a silve

    • 【連載長編】エナメルの夏-六月(初夏)

       入部テストを終え、友人何人かとの帰り際、教科書を置き忘れたことに気づいた陽は一人教室に戻った。教室の横の廊下がいやに水浸しで不思議に思ったのを脳裏に、下駄箱場で新品の靴を履くのに苦労していると、後ろから「陽」と名前を呼ばれた。振り返るとそこには、阿須賀が頭からタオルを被り、野球のバットを片手に立っていた。一番上のロッカーに手を突っ込んで、靴を陽が座る隣に置く。 「陽ってどこに住んでんの」  近づいてきた阿須賀の表情は、機嫌良くにこやかで、先ほどの様子とは大分違った印象だった

      • 【短編小説】ここは僕の国

         私がその日、そこへ一人で訪れたのは、決して傷心していたからではない。一週間前に昔からの親友と喧嘩別れをしていたとしてもだ。言葉を当てはめるとしたら自暴自棄だったのだろう。それでも、彼女のことだけを気にしていたわけではない。三十を超えた私の生活にはいくつかの問題があった。仕事では管理職を任され始めたが、部下の教育が思うように行かなかったり、私生活では、一年前から申請していたイギリス行きの研修ビザが昨今のヨーロッパのテロの影響で降りなくなったり、三回もデートをした男性が実は家庭

        • 【連載長編】エナメルの夏 - 四月(春)

           中学の登校初日、桜の香る開放的な昇降口で、雪見《ゆきみ》陽は立ち尽くしていた。自分のネームを探し回って、ついに見つけたと思えば一番上。身長の低い彼は背伸びをしても届かなかったのだ。同級生たちがその横をどんどん通り過ぎていく中、同じ色のシューズを手に持った背の高い少年が、陽と同じ段の一番下を眺めていることに気づく。彼は陽に、靴箱を取り替えないかと訊ねた。彼の靴箱は陽と真逆で一番低い場所にあり、その長身では毎朝かがむのに苦労すると言う。どちらにとっても都合が良いと思う、という提

        So over you - Charli XCX(意訳)

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        • 短編小説
          8本
        • 洋楽の意訳
          3本
        • エナメルの夏(長編小説)
          2本
        • 美少年×fetishism
          2本

        記事

          Who knew/P!NK(意訳)

          You took my hand, you showed me how 手を取って教えてくれた You promised me you'd be around 一緒にいるって約束してくれた Uh huh, that's right そうでしょ I took your words and I believed in その言葉を信じてた everything you said to me 言ってくれた言葉全て Yeah huh, that's right そういうこと If s

          Who knew/P!NK(意訳)

          落下する生月

          ※官能描写有りのため、18歳未満は閲覧禁止です。 ※純文学の皮をかぶったエロ小説です。(少年×人魚) <あらすじ> 朝霧のホテルのプールで、人魚を見たことがある。僕は小学生で、真夏の月曜日だった。名門野球部に所属する高校生の矢崎はその夏、合宿のため幼少の頃訪れた神戸の朝霧・海辺の古いホテルに泊まっていた。 ある朝、朝食会場で美しい女を見つける。 それは幼少の頃に、矢崎がこのホテルのプールで見た人魚だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  朝霧のホテルの

          落下する生月

          夏を見ている

           その夏、熱あたりで体調を崩した私は、とある海端の田舎の町で、アパートを借りて療養していた。アパートは小づくりで、南国を感じられる木造の外観に、白の戸張が部屋を囲っていて、手入れの行き届いたベランダからは数キロ先の海が一望できた。ベランダ向きの窓へ風鈴をひとつ下げて、キラキラとした音で風の知らせを乗せてくるのを感じる日々だった。  部屋の前は一メートル半ほどの緑の美しい敷居で囲われていて、ひなげしの花が色とりどり咲いていた。アパートの前はコンクリートの歩道になっていて、通学

          夏を見ている

          【#fetishism31】Day26 : 魔 / Magic

           その年のある日、ブルーパークのクリスマスツリーの銀の星が盗まれた。銀の星は本物の星くずで出来ていて、僕の住む一日中真っ暗な夜の国を、そのツリーのてっぺんの銀の輝きが、いつも照らしてくれていた。町で暮らすみんなは、光がなくなって困っていた。僕の学校でも、銀の星を盗んだ犯人は誰だ? という話題で持ちきりだった。  この町には昔から、数人の魔法使いがいる。魔法使いたちは、大昔に別の世界から来た魔法使いたちの末裔なのだ。銀の星は、彼らとの友愛の証に、夜の国に光をもたらそうと渡された

          【#fetishism31】Day26 : 魔 / Magic

          【#fetishism31】Day14 : 濡 / Wet

           雨の日に、誰も居ないバス停で雨に濡れた美少年を見かけたら、声をかけてはいけない。彼は女の人を食べるのが趣味なのだ。    ある田舎町の田んぼの真ん中にあるバス停は、一時間に一本しかバスが来ない。さらに雨が降ると、三十分は遅れてやってくる。それでも、三時間以上歩いて町まで帰るよりは、雨の中バスをおとなしく待った方が効率がいいのだ。  女がバス停に入ったとき、少年が一人椅子に腰かけていて、彼は上から下までずぶ濡れだった。その手には傘を持っておらず、この大雨にやられてしまったのだ

          【#fetishism31】Day14 : 濡 / Wet

          【#fetishism31】Day2 : 手 / Hand

           山那緋夏は左手の指がなかった。小指と薬指の、第二関節から上がないのだ。二つの指の先はソーセージの端のようになっていて、力を籠めるとぷるぷる、と少しだけ動く。  彼は類まれなる美少年で、ちいさなその町の中でも目立つ存在だった。とにかく悪戯を好んで、彼はその中学生活を、人を笑わせることに注力していた。たとえば空手の授業中に、手本の方を見せるから相手をしてくれと先生に言われて挙手した彼は、先生が組手で向かってくるとそれをひょいとかわしてみたり、それから書道の授業中には学ランのまま

          【#fetishism31】Day2 : 手 / Hand

          そういえば昨日、君の夢を見ました

          そういえば昨日、君の夢を見ました。 道行く自転車乗りの目が君に似ていたので、ふとそのことを思い出しました。 君といずれ再会してまた人生を歩んでいくことを想像していた数年後の未来が、今こうしてやってきていることに思いを馳せて、ただ夢と現実の境に目を覚ましました。 君の夢を見ることはほとんどありません。もう以前のように毎日君を思い出したりもしません。夢の中で君は、新しい恋人を見つけ、その人と幸せに暮らしていたが、今は別れてしまった。私とまた会えてうれしいと言いました。 今、私は君

          そういえば昨日、君の夢を見ました

          【短編小説】秋に催花雨

           金沢駅に着いたのは土曜の夜だった。雨降る日本海の側の空気は凛と冷え、吐息が薄く紅色のライトアップに溶けいった。浅野川のほとり、予約していた和食屋で、一人日本酒を煽った。  この秋、私は三十歳になった。恋人はもう六年もいない。周りの友達はどんどん結婚していくのに、私には指輪をプレゼントしてくれる相手どころか、誕生日を祝ってくれるような男友達の一人もいない。年齢に比例して理想も高くなる。幼稚にもシンデレラ思想が抜けず、この年になっても運命的な相手と出会うことを求める節がある。誰

          【短編小説】秋に催花雨

          限局性激痛 2013年10月23日

          サウスポートの図書館で開かれる木曜日16.00からのカンバセーションクラブに初めて行って、彼に出会った。 2013年10月23日。私は1日前に23歳になったばかりだった。彼は16歳だった。 私はハロウィンの日にかわいい彼を海のほとりの家に初めて連れ込んだ日から1ヶ月の間、ほとんどの時間を彼と過ごした。 私と彼はまるで同じ種類の思考/嗜好を持っていて、天使にラブソングをの教会のシーン、留学先で同郷同士が群れている様子を嫌ったし、ひとりでは眠れない憂鬱な夜の時間帯、ただ一人ビーチ

          限局性激痛 2013年10月23日

          ガス屋の懸念

           こんな夢を見た。  ガスの定期点検で私が訪れたお宅は、工業高校の側にあるアパートの一階だった。一〇一号室のお客は突然の訪問にも物腰柔らかく、笑顔で私を迎え入れた。 「手前は在宅屋なもので。どうぞお気遣いなく」  独特な一人称の女は、ドアを開けて私を中に通した。整頓された部屋の中、壁掛けプレイヤーから漫才師の声がする。ガス管点検の横目、女はパソコンへ向き合っていた。三十前後といった風貌で、左右に動く切れ長の目が利発な印象を与える。  戸棚を開けて手を入れた配管の奥で、がたん、

          ガス屋の懸念

          Bloody Valentine / Machine Gun Kelly【意訳】

          お騒がせラッパーとして有名なMachine Gun KellyのBloody Valentineを和訳。(というよりはほぼ意訳ですが)シンセポップが夏を彩る疾走感ある恋愛ソング。ぜひ聞いてみてください。 MGKは傾向としてHipHopよりもロックやパンクの色が強く、表現や主張が他のラッパーに比べ叙情的。また耳に残るキャッチ―なメロを生むのが上手いです。他のアーティストとのコラボ楽曲はヘイリー・スタインフェルドとの「At My Best」やYoungBloodとの「I Thin

          Bloody Valentine / Machine Gun Kelly【意訳】

          Still Breathing

           夢を見た。きっと白昼夢だと、夢の中で気づいた。  目の前を通過していった電車は、都会では滅多に見ない鈍行列車。古びた腰掛けも、薄汚れた窓も、久しく見ていない。短い車両が見えなくなると、目の前に見慣れた駅が現れた。「双葉駅」と錆び付いた金属の文字が並ぶその駅は、高校時代に毎日通った場所だ。毎日の部活を終え、夕方になると、電車到着時間の差し迫る古びたこの駅へ部活終わりの疲れた身体を酷使して走った。六時半の電車を逃すと、次が到着するのは一時間後だ。ひと駅隣の町に帰るのに、徒歩だと

          Still Breathing