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ガス屋の懸念

 こんな夢を見た。
 ガスの定期点検で私が訪れたお宅は、工業高校の側にあるアパートの一階だった。一〇一号室のお客は突然の訪問にも物腰柔らかく、笑顔で私を迎え入れた。
「手前は在宅屋なもので。どうぞお気遣いなく」
 独特な一人称の女は、ドアを開けて私を中に通した。整頓された部屋の中、壁掛けプレイヤーから漫才師の声がする。ガス管点検の横目、女はパソコンへ向き合っていた。三十前後といった風貌で、左右に動く切れ長の目が利発な印象を与える。
 戸棚を開けて手を入れた配管の奥で、がたん、と音がした。中をのぞくと、何かと目が合った。
 人の頭だ。おそらく女性のもので、だらんと舌を垂らし目の縁が赤黒く変色している。鼻はそぎ落とされ、代わりにキウイフルーツが丸ごとねじ込まれている。
 ふと視線を感じ振り返ると、女が口先を歪めてこちらに微笑んでいた。
「上手く生きているでしょう?」
 いつの間にか漫才師の声も聞こえなくなっていた。

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