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あの日の僕(第2話)━跡
あの日の僕(第2話)━跡
僕は想像するのが好きだ。
いつからそうなったのだろう?と記憶をゆっくりと遡ってみた。
僕は先天性の病気を持って生まれ、生後3日で手術をしたり、12歳の誕生日まで通院していたけれど、両親に特別扱いとかはなく、ごくごく普通に育てられた。たまに検診の為に病院に行って、注射とかはするけど、みんなもそういう事をてっきりしているとさえ思っていた。成長して、そういう経験はなかなかみ
あの日の僕(第3話)━絵本
あの日の僕(第3話)━絵本
少し過去の記憶を書いてみたけど、しんどい事だらけで、楽しいエピソードがちっとも出てこない。いや、楽しい事も沢山あったはず。それなのに、すぐに思い浮かんだのはしんどい景色。
楽観的に生きてきたのに、実はそうではないのかな?ただその感情に蓋をしているだけなのだろうか。しんどい記憶が優先的にどんどん忘れて去っていると考えていたのは、間違いなのか。
僕はわりと早い段階で、周
あの日の僕(第5話)━海と夢
あの日の僕(第5話)━海と夢
今でこそ、海の仕事をする位海が好きだけど、僕は大人になるまで海が嫌いだった。理由はいたってシンプルで、泳げないから。僕はスポーツが苦手で、泳ぐのも苦手であった。水泳なんてしなくていいならパスしたかった。
しかし、僕の住んでいた吹田市は、何故か水泳に力をいれていて、高学年になると海で遠泳が決まって実施されていた。それに危機感を持った親に、一駅離れた所にあるスイミング
あの日の僕(第6話)━のび太
あの日の僕(第6話)━のび太
どんな子供だったか?はドッチボールの時に最後までどっちのチームに入るかわからない位、僕は運動が苦手で、クラスの中心にいなかった事でわかる。いつも一番外からクラスメイト達を見ていた。適度にふざけたりはしていたけど、クラスの序列的には最下位の部類であったと思う。バレンタインの日なんて悲惨。絶対にもらえないとわかっているのに、そっと下駄箱を開け、教室の自分の椅子に座ってゆ
あの日の僕(第7話)━フントサカ
あの日の僕(第7話)━フントサカ
「うんこ坂」って知ってるだろうか?その名の通り、犬のうんこだらけの坂だ。とにかくうんこがある。幼稚園と小学校の家からの通学路にその坂はあった。あまりにもうんこが多いので、僕らはいつしかその坂を「うんこ坂」と命名した。毎朝通る時に、必ず1つはうんこを見つけた。
1つ、2つと数え、沢山あると何故か嬉しかった。うんこの数を数えるなんて、そういえば大人になってからして
あの日の僕(第8話)━じいちゃん
あの日の僕(第8話)━じいちゃん
うちは、親父とおかんと兄ちゃんと妹のほかに、じいちゃんとばあちゃんもいた。
じいちゃんはどこかの会社の役員で、じいちゃんが生きている時まで家はそれなりに裕福だった。どこで働いていて、どんな会社かは知らなかったけど、とにかくじいちゃんは僕たち孫に優しかった。僕と兄ちゃんが「聖闘士星矢」にはまって、その絵を「トレーシングペーパー」に描いたのをせっせと会社でコピーを
あの日の僕(第9話)━ベンチ
あの日の僕(第9話)━ベンチ
僕はお兄ちゃんが少年野球を始めた真似をして、隣の地区にある少年野球チームに入った。土曜と日曜日は基本的に野球をした。
通っていた小学校とは違う友達が初めて出来た。土曜に練習をして、日曜日に試合が多かった。わりと初期に加入したから最初はレギュラーで試合に出場していたけど、高学年になるとベンチが定位置になった。たまに出ても代打くらい。守備はあまりつかなかった気がする。
あの日の僕(第10話)━ハラマキ
あの日の僕(第10話)━ハラマキ
僕は両親に健康な人と同じように育てられた。基本的には特別扱いはされなかった。そのおかげか、お腹に大きな手術跡があるのも一度として嫌とは思わず年を重ねた。物心がつくともうそれはすでにあったから、それがあるのが僕にとっての普通だ。ずっとこの跡と共に生きてきた。ただ、なんとなく裂けるかも?とお腹を洗っている時に不安になった事はある。縫い目を数えたり、跡の幅を測ったりも
あの日の僕(第11話)━雪とすまいる
あの日の僕(第11話)━雪とすまいる
夏はキャンプへ、冬は雪山へスキーをしに家族旅行によくでかけた。おとんの仕事が普段平日の1日しか休みがなく、あまりいつもは遊んでいないからみんなで過ごせる旅行が僕ら子供は楽しみにしていた。おとんは無口な人。二人で10分として話した記憶がない位、話さない。関西人らしくボケる時もあるけど、基本は聞き役になっている。その代わりおかんが二倍話をするから、夫婦としてうま
あの日の僕(第12話)━トロロコンブ
あの日の僕(第12話)━トロロコンブ
久しぶりにとろろ昆布を食べた。おいしかった。昔よくばあちゃんと食べていた記憶が甦った。
昔、何を食べてたかな?僕の家にはばあちゃんもいた。じいちゃんは僕が5才位の時に亡くなってしまったけど、学生時代までばあちゃんと暮らした。ばあちゃんはめちゃくちゃ優しい人。怒られた記憶がない。全く覚えてないけど、兄ちゃんと一緒になってプラスチックの刀で遊んでたたいたりもし
あの日の僕(第14話)━ニガテ
あの日の僕(第14話)━ニガテ
僕はダイビングの仕事をしながら、病院での海の写真展示の活動をしています。
何故この活動をしているか?というと、自分自身が先天性の病気を持ち、生後3日での手術と12年間の通院経験があるからです。その時に、病院の壁に綺麗な写真や様々な絵が飾られて欲しかった事を覚えています。大人になった今、『当事者としての夢を実現し、入院と通院をしている方たち、ご家族、医療関係者の癒