あの日の僕(第7話)━フントサカ

あの日の僕(第7話)━フントサカ

「うんこ坂」って知ってるだろうか?その名の通り、犬のうんこだらけの坂だ。とにかくうんこがある。幼稚園と小学校の家からの通学路にその坂はあった。あまりにもうんこが多いので、僕らはいつしかその坂を「うんこ坂」と命名した。毎朝通る時に、必ず1つはうんこを見つけた。

1つ、2つと数え、沢山あると何故か嬉しかった。うんこの数を数えるなんて、そういえば大人になってからしていないな。いつから僕は数えなくなってしまったのだろう。

そこにあるのが当たり前になりすぎて、なかなかうんこが目に入らない時は、いつもより注視して坂を進んだ。みんなの通学路にもこういう坂ってあったのかな?うんこは坂の端に並べられているからそんなに被害に遭う頻度は少なかったけど、それでもたまに踏んづけてしまう場合もあった。その度に僕らは靴底を草むらや砂地に擦り付け、学校に着くと水道水で洗った。

そういえば、最近はうんこを踏んでいないな。公園にあまり行かないからかな?犬と暮らしていた時はよく公園に行ってうんこを度々踏んでいた。うんこはどこにいったのだろう?

そんな事を今朝歩いてる時に道端に佇む犬のうんこを見て思い出した。

出だしから「うんこ」という言葉を複数回使ったのはいつ以来だろう?子供の頃はよく使っていたのに、大人になるとどうして使わなくなるのだろう?なんでだろうね、それが大人になるという事なのかな。「大人と子供の違いってなに?」の答えが、もしかすると「うんこ」をよく言うか言わないかなのかも。どうなんだろう、答えは風の中。

僕はよくまっすぐ家には帰らなかった。
キョロキョロと色んな景色を見た。蟻がいる季節は、よく蟻の巣の近くに座り、蟻さんたちをずっと一人で観察してた。蟻さんたちの考えていることを想像するのが好きだった。その巣の中がどうなっているのか?を考えながら、一匹一匹の動きにワクワクした。あれやこれやと興味があるものが出てきては没頭した。熱中していると、声をかけられてもすぐに反応出来ないのは今も変わらない。今はさすがにうんこを数えたり、蟻をじっと観察したりはないけどね。みんなは、子供の頃どんな遊びに熱中していたのかな?こういう坂、あったかな?

おしゃれな、アンニュイな、みずみずしいエッセイにしようと書いて、おしゃれなタイトルにしたけど、冒頭でアウトだったかな。。。





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