【BL二次小説】 炎の金メダル⑪
「……」
「……」
沈黙が流れる。
荒北は目を逸らし冷や汗を垂らしている。
松井はその様子を見て、やはりそうだったのだと確信した。
……しかしビアンキ博士は「処分した」と言っていた。
だからもう何も問題は無いはずだ ──。
「松井サン」
荒北の方から沈黙を破る。
「……アナタはオレの発明のファンだ、って言ってくれましたよね」
荒北はソファに深く座り直し、腕を組んだ。
そしてそのまま背もたれに頭を乗せ、天井を見上げる。
「ええ」
「オレの発明には思いやりや暖かみを感じる、って……」
「その通りです」
それはお世辞ではなく、松井の本心だった。
「オレにとって発明は……懺悔なんス」
「ざ、懺悔?」
突拍子もない発言に松井は目を丸くし、思わず聞き返した。
「出来るだけ良い物を……世の中に役立つ物を作り続けていれば……オレの罪が……ちょっとずつでも減っていくんじゃねェか……そんな気がして……」
「……罪?」
「オレに出来る贖罪は、これぐらいしかねェから……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
松井は思わず両手を振り、慌てて遮った。
「過ちは誰にだってあります!あまり思い悩まないで下さい!」
「……」
「どんな罪を犯したか知りませんが、私には貴方が悪い人間だとは全く思えません!」
「……」
「だって貴方はたった今、私を救ってくれたじゃないですか!!」
「……」
必死で力説するが、荒北は天井を見上げたまま黙っている。
「……ビアンキ博士。余計なお世話とは思いますが……」
松井は気にかかっていたことを尋ねる。
「……親御さんと、ちゃんと連絡を取っていますか?」
「……いえ」
荒北の返答に、やっぱり、という感じで松井は溜め息をついた。
「所在は明かさなくとも、ただ元気だという事だけでも伝えてあげて下さい。きっと心配してますよ」
「……へッ」
荒北は笑い出した。
「へ、へへへッ……」
「博士?」
「オレのしでかしたことはね松井サン」
荒北は片手で両目を覆い、笑いながら首を横に振った。
「……あまりにもイタ過ぎて、とても親に顔向けなんて出来ねェんですわ」
「……」
「今のオレの姿は……親にも、ダチにも……見せられねェ……」
「……そんなこと……」
「オレは……自分の勝手な望みを叶えるために……魂を売ったんス……」
「……」
……この青年が、何を抱えているのかわからないが……。
ただひとつ言えるのは、何か心の支えが必要だという事だ。
それも早急に ──。
ビアンキ博士のために、次回までにそれを見付けてあげなくては。
松井はそう思った。
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