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1982年生まれ、地方出身の会社員。情けない、しょうもない毎日を通して、言葉にならない…

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1982年生まれ、地方出身の会社員。情けない、しょうもない毎日を通して、言葉にならない、捨てきれない気持ちを小説、記事等を通して創作。社会の片隅で生きる、情けない小市民の記録。

マガジン

  • (連載小説) 小さな世界の片隅で。

    創作中の連載小説(2022/10/9より連載開始):”小さな世界の片隅で。”の全号が入っています。地方の川辺(土手沿いの道)を行き交う人を中心に、社会の主人公となりえない、名もなき者達が紡ぎ出す小さな物語です。(になる予定です。) ※お暇な方はどうぞ。

  • 僕の好きなもの

    僕が、世知辛い世の中を生きていく上で、大切にしている言葉や考え方の一部が入っています。 ※お疲れになっている方。お暇な方はどうぞ。

記事一覧

(連載小説:第21話)小さな世界の片隅で。

歩は、手洗い〜手指消毒を済ますと、急いで奥へ向かった。 杉山さんが意識したかどうかは分からないが、 その聴きなじみのあるやりとりは、歩が入職した時と同じ声掛けだ…

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1日前
1

(連載小説:第20話)小さな世界の片隅で。

<本日、ある宗教団体の施設に警察の家宅捜索が入りました。そして、その信者の一部が、混乱に乗じて、脱会を求め脱走している模様…、云々…。> アナウンサーが淡々と伝…

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2か月前
5

(連絡小説:第19話)小さな世界の片隅で。

歩は、歩きながら思う。 ふと、青年が歩に向き直った時の、涙を堪えた笑顔が浮かんだ。 いや、あの青年なら、きっと会えるさ。 心の中で、一人呟く。 土手へ上がる階段…

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3か月前
2

最近、職場にいても家に帰っても、なんか気分がソワソワして落ち着きません。以前は、気分転換(出かけたり、体を動かしたり)して気が晴れる事はあったんですが、スッキリしません。
お年のせいかしら…
忙しさや体調の変化もあるかもですが、習慣自体が合わなくてなって来ているのかもしれません。

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5か月前
4

(連載小説:第18話)小さな世界の片隅で。

”はい…。お願いできますか…?” ”分かりました…。” 歩は、主婦の方を見て、言った。 ”「大丈夫」。きっと…、大丈夫ですよ。” 主婦は、少し間をおいてから、 …

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6か月前
4

(連載小説:第17話)小さな世界の片隅で。

歩は、泣きながら食べている、ハンバーガーをみて思った。 やっぱり今日は、車じゃなくて、歩いてくるべきだったと。 食べ物も、ハンバーガーじゃなくて、おにぎりとお茶じ…

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7か月前
4

最近、忙しくて、ほとんど記事を読むことも、書くこと事も出来ない状態が続いておりましたが、少し落ち着きました。

また、無理のないペースで投稿していこうと思います。

皆様、どうぞよろしくお願い致します🙇

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9か月前
4

いもぼうっていう料理を知ってますか?年齢で変わる美味しさって何か。

皆さんは、京都の名物の一つ、いもぼうという料理ご存知でしょうか? 先日、少し用があって京都に行ってきました。その時、お昼に、いもぼう平野屋というお店に入って、“…

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11か月前
8

(連載小説:第16話)小さな世界の片隅で。

小玉さんがまた付け加え、放送は再びCMに入った。 歩は、車の中で、聞くことの無かった放送をしんみりと聞いていた。 歩の運転する車は、目的地に向け、幹線道路をまっす…

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1年前
4

はじめて、つぶやきの投稿をしてみます。
え~と、あの~、何かちょっと涼しくなってきましたね。
このはっきりしない、どっちつかずの微妙な空気感が好きだったりします。

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1年前
5

(連載小説:第15話)小さな世界の片隅で。

歩は、自宅へ向けて、自転車をこぎだした。明日は休日だ。大切な事に時間を使いたい。まだ明るさが残る夕暮れの中を、そんな事を考えながら、帰路についていった。 (X-4…

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1年前
4

(連載小説:第14話)小さな世界の片隅で。

歩は、覚悟を決めた。これから先は、予測不能な未来になるだろう。 杉山さんと、科長の待つ、4階の会議室へゆっくり向かう。 廊下や階段の窓から差し込む西日が、白色~オ…

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1年前
6

(連載小説:第13話) 小さな世界の片隅で。

歩は、杉山さんに声をかけ、軽く会釈をし、スタッフルームを後にした。 デイサービスから病院へ戻る院内の通路で、他部署のリハビリスタッフとすれ違った。 すれ違いざま…

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1年前
4

(連載小説:第12話)小さな世界の片隅で。

その日、歩は、祖母の夢を見た。 それは、遠い遠い、昔の記憶と、亡くなる数日前、ばあちゃんに会った時の記憶。 夢の中でも、ばあちゃんは微笑んでいた。 歩に心配をかけ…

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1年前
3

初投稿から10ヶ月程経ちました。

暖かくなって、花粉も少し落ち着いてきたのでしょうか? 僕は、花粉症なんですが、今年は特に症状が辛くて、今まで出たことの無い、咳の症状が出たりしまして、それがよう…

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1年前
23

映画“この世界の片隅に。”を観て。

こんにちは、徒歩です。日に日に暖かくなってきましたが、皆様、どうお過ごしでしょうか? 桜が咲きましたね。花粉症の症状と共に、この時期少し切ない気分になるのは、僕…

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1年前
14
(連載小説:第21話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第21話)小さな世界の片隅で。

歩は、手洗い〜手指消毒を済ますと、急いで奥へ向かった。

杉山さんが意識したかどうかは分からないが、
その聴きなじみのあるやりとりは、歩が入職した時と同じ声掛けだった。

遠くから海野さんの視線を感じた。
振り返ると、お茶の配膳をしていた海野さんが、こっちを見て軽く微笑んでいた。歩と目があうと、そのまま小さく頷いた。

歩も小さく頷き、そのままリハビリへ入った。

起きた出来事を消化する時間もなく

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(連載小説:第20話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第20話)小さな世界の片隅で。

<本日、ある宗教団体の施設に警察の家宅捜索が入りました。そして、その信者の一部が、混乱に乗じて、脱会を求め脱走している模様…、云々…。>

アナウンサーが淡々と伝えている。

不意に意識がテレビの方に向いた。

”ここらにも、そんな施設あったんだ…。”

ふと思った。

”っていうか、一週間前にも、こんなニュースあったっけ…?”

歩は、ゆっくりテレビの方に身体を向けた。

”なんだか、物騒だねぇ

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(連絡小説:第19話)小さな世界の片隅で。

(連絡小説:第19話)小さな世界の片隅で。

歩は、歩きながら思う。

ふと、青年が歩に向き直った時の、涙を堪えた笑顔が浮かんだ。

いや、あの青年なら、きっと会えるさ。
心の中で、一人呟く。

土手へ上がる階段を上り、再び、散歩道へ戻った。

歩が行く先に、土手の木々が見えた。

土手の木は青空に向かって大きく枝葉を広げ、西側から吹く風を全面に受け、枝葉や幹を軽く揺らしていたが、力強くそこに落ち着いていた。その力強さを感じさせたのは、地上の

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最近、職場にいても家に帰っても、なんか気分がソワソワして落ち着きません。以前は、気分転換(出かけたり、体を動かしたり)して気が晴れる事はあったんですが、スッキリしません。
お年のせいかしら…
忙しさや体調の変化もあるかもですが、習慣自体が合わなくてなって来ているのかもしれません。

(連載小説:第18話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第18話)小さな世界の片隅で。

”はい…。お願いできますか…?”

”分かりました…。”

歩は、主婦の方を見て、言った。

”「大丈夫」。きっと…、大丈夫ですよ。”

主婦は、少し間をおいてから、

”ありがとうございます…。本当にありがとう…。”
少し擦れた声で言い、軽く頭を下げて、歩と反対方向へ歩いて行った。

主婦が頭を上げた時、顔に手をやり、直ぐに振り返って行ってしまったので、表情を伺う事は出来なかったが、歩には、なん

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(連載小説:第17話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第17話)小さな世界の片隅で。

歩は、泣きながら食べている、ハンバーガーをみて思った。
やっぱり今日は、車じゃなくて、歩いてくるべきだったと。
食べ物も、ハンバーガーじゃなくて、おにぎりとお茶じゃなきゃなと、歩はそう思うのだった。

少し落ち着いたあと、歩は、そのベンチから静かに歩み去っていった。

青空に向かって、”大丈夫だよ。”とつぶやいた。

(X-4日)
歩は、顔を隠す様に頬を伝う涙を袖で拭いて、ベンチを後にした。公園か

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最近、忙しくて、ほとんど記事を読むことも、書くこと事も出来ない状態が続いておりましたが、少し落ち着きました。

また、無理のないペースで投稿していこうと思います。

皆様、どうぞよろしくお願い致します🙇

いもぼうっていう料理を知ってますか?年齢で変わる美味しさって何か。

いもぼうっていう料理を知ってますか?年齢で変わる美味しさって何か。

皆さんは、京都の名物の一つ、いもぼうという料理ご存知でしょうか?

先日、少し用があって京都に行ってきました。その時、お昼に、いもぼう平野屋というお店に入って、“いもぼう”というものを食べてきました。

その時の感想等を書いていきたいと思います。

お店は、東区の八坂神社を抜けた、円山公園の一角にひっそりとあります。

いもぼう平野屋は、老舗で赴きのある感じです。敷居が高そうな感じがして入りづらか

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(連載小説:第16話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第16話)小さな世界の片隅で。

小玉さんがまた付け加え、放送は再びCMに入った。

歩は、車の中で、聞くことの無かった放送をしんみりと聞いていた。

歩の運転する車は、目的地に向け、幹線道路をまっすぐ走っていく。

(X-4日)
車を走らせ続け、時刻は、9時を回ろうとしていた。
朝の幹線道路は、通勤の車、社用車、デイサービスの送迎の車、運送のトラック等の車両が多い。

混み合ってはいるが、渋滞する事はなく、車はスムーズに流れてい

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はじめて、つぶやきの投稿をしてみます。
え~と、あの~、何かちょっと涼しくなってきましたね。
このはっきりしない、どっちつかずの微妙な空気感が好きだったりします。

(連載小説:第15話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第15話)小さな世界の片隅で。

歩は、自宅へ向けて、自転車をこぎだした。明日は休日だ。大切な事に時間を使いたい。まだ明るさが残る夕暮れの中を、そんな事を考えながら、帰路についていった。

(X-4日)
一日が明けた。思いのほか、頭がすっきりしていた。不思議なもので、会社を辞めると決意した、たったこの一つで、背中の重荷が大分軽くなった様な気がした。ずいぶんと体が軽くなった気がした。

布団をどけながら、部屋の時計に目をやる。時計の

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(連載小説:第14話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第14話)小さな世界の片隅で。

歩は、覚悟を決めた。これから先は、予測不能な未来になるだろう。
杉山さんと、科長の待つ、4階の会議室へゆっくり向かう。
廊下や階段の窓から差し込む西日が、白色~オレンジ色に変化し始め、柔らかく院内の床や、壁を照らしていた。

歩は、その暖かさや、色を感じる事の出来る感覚が戻っていた事に気づいた。

廊下を歩く、歩の足元には、いつものように、肩を落とした少し情けない歩の影が寄り添っていた。

淡いオ

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(連載小説:第13話) 小さな世界の片隅で。

(連載小説:第13話) 小さな世界の片隅で。

歩は、杉山さんに声をかけ、軽く会釈をし、スタッフルームを後にした。
デイサービスから病院へ戻る院内の通路で、他部署のリハビリスタッフとすれ違った。

すれ違いざま、今回の人事考課で、鈴川が出世する事が決まったと話をしていた。

後輩が、上司になった瞬間であった。そして、先輩が部下になった瞬間でもあった。

歩は、食堂まで続く長い廊下を、俯き歩きながら、廊下がもっと長く続いてくれと、願っていた。

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(連載小説:第12話)小さな世界の片隅で。

(連載小説:第12話)小さな世界の片隅で。

その日、歩は、祖母の夢を見た。
それは、遠い遠い、昔の記憶と、亡くなる数日前、ばあちゃんに会った時の記憶。

夢の中でも、ばあちゃんは微笑んでいた。
歩に心配をかけない様にクシャっと微笑むその顔は、今でも、決して色あせ
ることはなく、その笑顔と一緒に、皺の刻み込まれた手の暖かさや、ばあちゃん家の匂いが、歩の傍で、ふっとしたような気がした。

(Xー6日)
歩は、薄明かりの中、浅い眠りから眼を覚まし

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初投稿から10ヶ月程経ちました。

初投稿から10ヶ月程経ちました。

暖かくなって、花粉も少し落ち着いてきたのでしょうか?

僕は、花粉症なんですが、今年は特に症状が辛くて、今まで出たことの無い、咳の症状が出たりしまして、それがようやく治ってきました。

新型コロナも5月に、5類に引き下げとなる様で、規制も徐々に緩和されて、世間的にも少しずつ以前の活気が戻ってきている様に感じます。

収束(収束なのかな?)も近いんですかね。

話は変わりますが、僕は、昨年の6月から

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映画“この世界の片隅に。”を観て。

映画“この世界の片隅に。”を観て。

こんにちは、徒歩です。日に日に暖かくなってきましたが、皆様、どうお過ごしでしょうか?
桜が咲きましたね。花粉症の症状と共に、この時期少し切ない気分になるのは、僕だけでしょうか。

それは、出会いや別れの節目である不安定なこの時期の気持ちと、桜が一斉に咲き、惜しげもなく散っていく淡く儚い桜の記憶が、自分の中に同時に存在しているからかもしれません。

ちょっとそれらしい事をいってみました。

僕は、昨

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