- 運営しているクリエイター
記事一覧
『李の花は散っても』深沢潮著
朝鮮の李王朝の王世子、李垠と政略結婚させられた梨本宮方子(李方子)の実話を基にした小説。同時代を生きる同世代の庶民の女性の物語が並行して描かれる。
史実を文献から相当に読み込み、構築したと思われるフィクション。分厚い本だが一気に読める。面白かった。
絵本『あかちゃんはどうやってできるの?』
人の「物語」が入っている卵子と精子が一つになったものが子宮で育って子どもができる、と語る、子ども向けの絵本。
作者の前書きに「性交や精子提供による人工授精、不妊治療、代理出産、養子縁組に関する情報は含まれていません」とある。
「女性が卵子を持ち、男性が精子を持つ」といった書き方はせず、「卵子も精子も子宮も、持っている人もいれば持っていない人もいる」というふうに表現しているのが本書の特徴だ。
『うけいれるには』クララ・デュポン=モノ著、松本百合子訳
フランス、セヴェンヌ地方で自然に囲まれながら暮らす家族。長男、長女、そして生まれてきた「子ども」。その子どもには重い障害があった。庭の「石」を語り手として、障害のある子が生まれた家族を描く小説。
著者の実体験が基になっているらしいが、家族の名前が登場せず、「長男」「長女」「子ども」というように言及されるのは、固有性より普遍性を表現するためだろうか。各人には個性があり、類型化されているわけではない
絵本『みにくいおひめさま』フィリス・マッギンリー著
何不自由なく暮らすお姫さまの唯一の「欠点」は、「みにくい」こと。途方にくれる王さまと王妃さまのもとに、お姫さまを美しくできると言う女性が現れてーー。
「内面が大事」ということが、実際に顔を美しくするという、あまり納得できないお話。比喩と解釈すればいいのか?しかし、実際の容貌が激変したからこそ、本人も家族も結婚相手もハッピーになるという、これはルッキズムではないのか?
『純粋な人間たち』モハメド・ムブガル=サール著、平野暁人訳
セネガルで文学を教える30代の男性教員が、国中を騒がせている動画を見たことをきっかけに、国内で激しく弾劾されている同性愛の問題に向き合うことになる物語。
著者は、本書とは別の著書がフランスのゴンクール賞を受賞している。1990年セネガル生まれ、現在はフランスの博士課程に在籍中。
冒頭に引用した文章について、考えさせられる。本書には直接的に身体に加える暴力も出てくるが、ほかにもあらゆる形の「暴力
『僕の狂ったフェミ彼女』ミン・ジヒョン著:属性のために選択が限られる世界は変わるのか?
学生時代の恋人に遠距離となって振られたことが忘れられない、結婚願望の強い30歳の男性。4年後に偶然再会した彼女は、フェミニストになっていた。交際を決めた2人だったが、互いに愛情はあるものの、考え方や振る舞いがことごとく対立し――。
韓国の小説。男性の主人公の一人称で語られる。加藤慧訳。ラストがご都合主義でないのがよかった。
フェミニズムが何なのか、私はわかってはいないと思うが、望むのは、対等な