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「もういいよ、ササ美さん」(4)_完
「ねえ、ママ!!ちょっと聞いてる!!」
娘のササ子に揺さぶられ、ササ美は我に返った。
覚えていらっしゃる人がいるだろうか。(1)の冒頭だ。
ワカナさんに大葉をそっと挿入されてからというもの、ササ美さんは頻繁に物思いに耽るようになった。無論、冷蔵庫内及び冷凍庫での数日の話であり、人間の時間感覚とは違う。だが、そこはさほど重要ではない。とにかくササ美さんは考えた。そこには生真面目な彼女らしく、自分
「もういいよ、ササ美さん」⑴(再掲)
「ねえ、ママ!!ちょっと聞いてる!!」娘のササ子に揺さぶられ、ササ美は我に返った。
ササ美さんは鶏肉のササミだ。スーパーで98円/100gで売られていて、ボリュームパックだともっと安い。低脂肪・高たんぱく質ということで、筋トレしている人はゆで卵白身と同じランクのたんぱく質として溺愛されている。
ササミに意思なんてない? そりゃそうかもしれない。 人間みたいに、ササミ一本に対し、一つの人生、個性
「もういいよ、ササ美さん」(3)
「もしもーし。大丈夫かしら?」遠くで誰かの声がする。
目を開けると、覗き込んでいた玉ねぎ嬢が眼前に現れ、驚いたササ美さんは鮮魚のように跳ねた。
玉ねぎ嬢は「定例肉会議」の重要オブザーバーのため、寒い中ミンクの白いコートと帽子で冷蔵庫に来ていた。こちらの話で登場する玉ねぎ嬢はエシャロットと付き合っていないが、格好は同じ、というところが興味深い(注:別ストーリーで登場してるため)。玉ねぎは玉ねぎ。じゃ
「もういいよ、ササ美さん」(2)
ササ美さんとササ男さんは、夜ひっそりと寝静まったあとに、毎晩コミュニケーションを取っていた。テレパシーという類なのかもしれない。子供たちが寝静まった後に、帰宅した旦那さんをねぎらうように、ビールとつまみを出し、一緒に晩酌しながら、今日の出来事を話すように。ちょっと天然で喜怒哀楽が激しい、ササ美さんと、知的だけどのんびりしたササ男さん。夫婦の会話だ。
ちょっと待って。
「つまみになる側のササミが晩