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事業再生の実際

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実体験として事業を再生した経験に基づいて、その時に得られた学びや実際の出来事について書きます。
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2022年7月の記事一覧

事業再生のこと−16

事業再生のこと−16

事業を始める前に充分な蓄えがあれば問題はないが、大抵の場合起業当初は潤沢な資金などないことが多い。
その少ない資金で何から手をつければ良いんだろう。
考えよう。すぐにはあきらめず、今何が出来るのかを考えよう。

オープンしたばかりのカフェで月の売上から経費を引くと1万円しか残らない。毎月そんな状態が続いて少しも楽にならない。

貯金に5000円、残った5000円では何もできない、と普通はそう思う。

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事業再生のこと−15

事業再生のこと−15

事業を始めたばかりの頃は正しく利益が出ているかどうかだけに注意していれば良かった。
小さな儲けであれば、仕入れ額も小さく簡単には巨額の赤字が出ることは少ない。
それでも事業にかかる経費やランニングコストに注意が届かず赤字が出ることはある。

しかし、問題なのは事業が拡大基調に移ってからだ。
前年までの売上が翌年50%伸びたとすると、当然仕入額も50%大きくなっているはずだ。毎月の収支に合わせて仕入

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事業再生のこと−14

事業再生のこと−14

PRやブランディング、営業が上手くいって、ある臨界点に達すると売り上げは急激に伸び始める。
私たちが注力したのは「販売」そのものが「告知」や「認知」につながりやすい駅ナカでの催事出店だったが、催事出店場はユーザー層にとっては元々馴染みが深い場所で「あの場所では何か毎回新しい商品を買い物出来る」という習慣性があり認知されている場所だった。

それだけに、初めて催事出店をする事業者であってもある程度以

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事業再生のこと−13

事業再生のこと−13

感染症がまた蔓延し始めているが、政府は人流の抑制よりも経済の活性化に力を入れ始めた。この国の財政は破綻しているのだから、ここからはかつての円高の時代の逆が起こる。つまり諸外国の「日本買い」が始まる。

中には「売り逃げ」を図ろうとする日本企業も出てくるだろう。
今のうちに企業価値を上げておけば強い外貨で買ってくれるだろう、と考える。しかし、実際のところ円安なのだから買ってもらったところでその企業価

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事業再生のこと−12

事業再生のこと−12

事業を始めようと思って何から手をつければ良いのだろう?
お勧めするのは「妄想」すること。「妄想」と言ってもぼんやりしたものではなく、できる限りリアルに妄想して欲しい。

例えば自分でレストランを経営したいと思ったら、そこで自分が働いていて、朝起きたら何をするのだろう。

出来たばかりの新しいレストランの前で掃除をして水を巻いて、置いてある花の枯葉を拾っている自分。
振り返るとお店のエントランスが見

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事業再生のこと−11

事業再生のこと−11

事業を再生するときに最初に注力したのは認知の拡大だった。
最初の事業がローカルを対象にした商圏だったのに対して、もっと広範囲の商圏からユーザーを取り込んでいく必要があった。
事業再生に取り組む時点で視点はローカルの展開ではなく全国の展開へと変えなくてならなかった。

大規模な資本を持った企業ならば多店舗展開で勢力を拡大し、多方面の媒体で訴求を繰り返し認知度を上げれば良いのだろう。
でも私たちにはそ

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事業再生のこと−10

事業再生のこと−10

1960年代より続いていた核家族化は終焉を迎えようとしている。
かつてのように所得が増え、マイホームの夢を実現して家族ごとに生活をすることが難しくなってきている。
個人が稼げる所得は減り、物価が高騰し、大黒柱である夫が家計を守ことが難しくなり、夫婦共働きが主流となって、さらには夫婦で稼いでも子供を育て上げることが難しくなってきている。

家計が一家全体の食費や光熱費のことを表していた時代ではなくな

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事業再生のこと−9

事業再生のこと−9

どの企業も最初は力がなく、思うように広報や宣伝が出来なかったのだろう。
かつての販売戦略で最も多く使われ、実際に効果があったのは「一定の商圏エリアでの多店舗展開」だった。
どこを商圏と見るかで店舗の形態や出店方法は変化するが、以前はユーザーの多くは店舗を見かけることでその店舗を認識していた。

ロードサイド店は多くの量販店が手がけた手法で、交通量の多い幹線道路沿いに大型店舗を構え、視認性の良い看板

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事業再生のこと−8

事業再生のこと−8

「逆転のマーケティング術」とか「絶対成功するマーケティング」とか、某有名コンサルティング企業が本を出したり、動画配信をしていたりする。
でも彼らの言っている「マーケティング」とは何を指しているのだろう?

「マーケティング」とは、かつては「市場調査」という言葉から置き換えられていた。
ある一定の商品やサービスについて、それを購買したり利用するユーザーの規模や指向性を調査して、それに応じた戦略を立て

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事業再生のこと−7

事業再生のこと−7

デザイナーの仕事って忙しくて、最盛期の頃は1ヶ月のうち家に帰れたのが3日とか異常な忙しさだった。生産している量に対して支払われるペイは今も昔も割りに合っていない。
ただでさえ割りに合わない仕事をクライアント、特に代理店と呼ばれる中間マージンだけで収入を得ている人たちは能力もないのに間違った指示を出して1時間で終わる仕事を3時間に延長させたりした。

現在は最前線からは身を引いて、周辺のわずかな実務

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事業再生のこと−6

事業再生のこと−6

個人店主が経営者になるハードルは高い。
経営というのは勘でするものではない。
「商売」と「事業」が別のものであるとわかっている人は少ない。
現在の若者達が我々の世代よりも有利なのは、我々の事業構築が積み上げ型なのに対して、これからの事業構築はネットワーク型であり未来先行型であることだと思う。

我々の時代は「信用」は積み上げないと作ることが出来なかった。現在でも多くの企業はこの方式に頼っている。

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