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Seiji Lakefield
2024年4月11日 17:38
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜第四話《最終回》 「一陣の風のように」次のレガッタ大会に向けて部員同志のチーム・ミーティングがある。その席で、監督は紫釉の本当の病名と本格的な抗がん剤治療に入ることを部員に公表した。部員たちは衝撃を受け、ざわざわと動揺し始めた。ちはるは緊張した面持ちで部員に直訴する。「次の大会はわたしに舵手(コックス)をやらせて下さい!」数
2024年4月10日 18:12
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜第三話 約束の記憶ちはるは一瞬耳を疑った。「監督?紫釉くんがホントに言っててるのですか?」監督は「あゝそうだ。それと岡崎のことについてはもう一つ伝えておかなければならない。」ちはるは「何なんですか?」と訊き返す。 監督は重苦しい胸の内を明かすようにちはるに告げるのだった。「岡崎はメニュエール病なんかじゃあない。アイツは白血
2024年4月9日 16:48
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜第二話 紫釉《しゆう》ちはるは漕艇部に入部すると今までぼんやりと眺めていただけのボート競技の奥深さに魅せられていった。ボート種目は大別するとオール2本で漕ぐ種目とオール1本で漕ぐ種目に分かれている。"スカル"はオール2本で漕ぐ。乗員は漕手の人数によって1名(シングル)〜4名(クォドルブル)に分かれる。オール1本の種目は"舵手
2024年4月7日 20:10
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜第一話 ちはる「キャッチ ソーオッ! キャッチ ソーオッ!」遠くから"エイト"の勇ましいかけ声が響く。朝焼けがあたりを照らし始める刻薄紫色に染まった水面をスラリとした白い艇身が波飛沫を切り裂くように滑べりゆく。"エイト"は近づいたかと思うとすぐさま遠のいて__薄明の霧がかった遠く水平線の向こう側へと霞んで消えてゆくさまが幻想的に
2024年4月1日 03:45
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜・・・・当時、学生だった僕にとって社会人として働いている彼女Sの存在はまさに憧れのお姉さんであり高嶺の花だった。初めてデートの約束を取り付けて憧れのSと念願のデートの行き先は京都の清水寺に決まった。向かう道中は産寧坂(三年坂)を登る。冷たい風に入り交じる草木の爽やかな薫りは桜の花びらを撫でるように生命の息吹きが駆
2023年9月21日 04:35
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜カチンとZippoの金属音が響く。暗がりのガレージでライターを灯しすっかりと乗らなくなったオンボロ車のエンジンをかけてみる。ようやくキー穴を探しセルを何度か回してみたがエンジンはかからない。(ダメかな?)諦めかけた時ふいにカーステレオから懐かしいジャズが聴こえてきた。(バッテリーは残っていたんだな。)すっかり銀髪に
2023年5月20日 11:47
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜・・・・五月だというのに季節外れの猛暑が到来したまだ来ぬ梅雨を通り越して湿り気のない暑さを凌いでいると一羽のツバメが飛んで来たわたしは恐る恐る窓をほんの少しだけ開けてみる彼は群れから離れて一番乗りに飛来したけれどこの突然の暑さでむしろ取り残された風に目を円くしている姿に愛らしさがあった彼とははぐれ者同志と
2023年3月5日 11:49
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜入社して2年目工業の業界で働き出して間もない頃のこと。当時は腕一本で頑固一徹に働いてきた戦前生まれの職人さんが多かった。職場の課長は当時30代後半のいわゆる団塊の世代でありそれよりもさらに上の世代となる熟練工の方は既に50歳を過ぎており歴戦を潜り抜けてチェスのポーンがプロモーションしたような《昇格:将棋の歩兵から"と金"に成
2023年1月29日 01:59
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜或る雪の降る夜だった彼からの別れの電話もう繋がることはないことを悟ったあの日の夜それ以来ひたすら仕事をすることで彼のことを忘れようとしていたオフィスに独り__時計を見ると22:00外の寒さは厳しそうだとふと窓ガラスの霜をそっと手で拭うと凍りついた窓に雪の華が咲いている(すっかり遅くなってしまったようね。)いつも
2022年11月5日 16:38
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜わたしはあの日の出来事が脳裏に焼き付いて離れることがない。少年の瞳を持った男Rと言う人物の生涯について、わたしが見た出来事を筆にしたためる__ 。・・・・それは__青い光で激しく動いていた。肉汁から作り出した培養基に眩く光る物体が見える。目に突き刺さるような放射が広がる。Rはついに発見したのだ__ 。内側を
2022年9月2日 22:50
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜 翌朝、宿泊していた民宿から少し離れたところに行くと、そこには大きなレールがあった。(わぁ!すごいジェットコースター みたい!)「これはね。今までの常識がくつがえるような技術なんだ。」と望帆パパは言う。レールの一番下には木造りのトロッコが一両ある。「このトロッコには 超電導の装置が設置されている。 物体に
2022年8月31日 22:30
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜 毎年、夏の終わりツクツクボウシが鳴く頃になるともう夏休みも終わりか. . . と、ユウウツな気分になる。特に夏休みの宿題ともなると先生から色々とたくさんの宿題を出されるものだから毎年、決まって悩んでいる。(小学生もなかなか大変よね。)わたしと言えば__ 遊びたい気持ちが素直にがまん出来ない性質だから誘惑に負けて
2022年8月9日 22:31
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜Cavatina ;カヴァティーナ (イタリア語)・・・・ 激しい衝撃が起きた__突然、樹里が運転していた軽自動車が宙を舞い割れたリアガラスから身体が空中に放り出された。(一体、何が起こったの?) 樹里はいつの間にか、路面に横たわり少し離れた視界の先に大破した自分の車と、この状況の原因と見られるトラックが停
2022年7月11日 01:56
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜7月__灼けつくような夏の陽射しも放課後、夕暮れ前になるとほんの少しだけ和らぐ決まってこの時間になると校舎の屋上からラッパの音が鳴り響く。吹奏楽部の女子部員がひとりで練習をしている。(なんて愛らしい響きなんだろう)彼女が吹くトロンボーンはポワンとした円い音色の中に少しハスキーな雰囲気もあり郷愁を揺さぶる感