見出し画像

#316 「ビジネス頭の体操」 今週後半のケーススタディ(5月27日〜28日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


5月27日(木) 仏具店の売上合計は○○○億円!?

東京都千代田区神田司町に事務局を置く全日本宗教用具協同組合(全宗協)が制定した「仏壇の日」(毎月27日)です。

西暦685年3月27日(旧暦)、天武天皇が「諸國(くにぐに)の家毎に佛舎(ほとけのみや)を作り、即ち佛像と経とを置きて礼拝供養せよ」との詔を出し立し、これ以来「仏壇」を拝むようになったとされるのに由来しています。

(5月27日の記念日は、海軍記念日とか日本海戦の日などでこちらで取り上げるのに適当なお題がなく、毎月27日の仏壇の日を取り上げることにしました)

仏壇。
昔は多くの家であったように思いますが、今はあんまり見かけないように思います。

東京商工リサーチの『全国「仏具店」の業績調査』によると、全国の仏具小売152社の最新期(2019年9月期~2020年8月期)の売上高合計は、515億6600万円(前期比4.4%減)と減少し、利益は前期の3億9100万円の黒字から、15億1100万円の赤字(同486.4%減)へ大幅に悪化しました。

原因としては、感染症拡大に伴う三密回避で法要や葬儀の縮小の影響が考えられますが、もともとマンション等の住宅事情、家族葬や小規模葬の広がりで厳しい状況のところに感染症が影響し、売上の急減に見舞われています。

全国の主な仏具小売152社のうち、赤字は47社(30.9%)と前期の27社(同17.7%)から1.7倍となっています。

仏具店は売上規模が1億円未満が102社(67.1%)、1〜5億円未満が36社(23.6%)と、5億円未満の零細、中小事業者が9割を占めます。
売上高10億円以上の大手7社の売上合計は360億円と全体の7割を占めています。

そのため、倒産や廃業、解散が多くなっています(下図)。

画像1


仏具に絞ったデータではありませんが、経済産業省によると、2002年の宗教用具の小売業者の事業所数は4,886箇所、売上高は2,705億円でしたが、2014年には事業所数が3004箇所、売上高1,639億円と、いずれも2002年から4割減となっています。

画像2


こうした厳しい環境の仏壇仏具業界ですが、最大手は「あの」株式会社はせがわです。2020年3月期の決算の概要は以下の通りで、単体売上高178.7億円、純損失10億円となっています。

画像3


感染症の影響のない時代での推移を見ると、2017(平成29)年3月期の同社決算資料に、2013(平成25)年3月期から5年間の業績の推移がありました。売上高は200億円、営業利益は20億円を超えていましたが、2015(平成27)年3月期から、営業利益が半減し、その後は横ばいとなっています。

画像4


同社の事業セグメントは仏壇仏具事業が売上の7割、墓石事業が2割を占めています。

画像5

2020年3月期決算で見ると、墓石事業で特に落ち込みが大きかったことが分かります。

なお、2021年3月期の中間決算では、売上はさらに減少しているものの、店舗休業等による経費の圧縮により、3億円を超える営業利益を計上しています。

画像6


厳しい市場環境で、はせがわは店舗を商店街等の路面店からショッピングセンター内へと見直すこと、今の家に合うデザインの仏壇を投入すること、などの工夫を行なっています。

最後に、はせがわではないのですが、デザイン性の高い、高価格帯(最高は500万円)の仏壇を投入しているメーカーを紹介した東洋経済の記事を紹介します。ご興味があればご覧ください。


→縮小する仏壇市場。どのような方向の事業モデル、マーケティングが考えられるだろうか?


5月28日(金) 花火大会中止の経済損失は1兆円!?

1733年(亨保18年)のこの日、隅田川の両国橋付近で水神祭りの川開きが行われ、慰霊を兼ねた花火が打ち上げられた。これが「両国川開きの花火」の始まりで、「花火の日」です。

花火。
残念ながら多くの花火大会が中止になりました。
花火業界にとっては大変な打撃だと考えられます。

そもそも花火の市場規模はどのくらいあるのでしょうか?
帝国データバンクが、火薬類製造業、煙火製造業、火薬類卸売業を主業もしくは従業としている企業の中から、花火に関連している業者のデータ(爆薬等製造業者は除く)209社を抽出し、分析したデータがありました。

209社の中で2015年度から2018年度まで3年連続で業績が判明した企業134社の売上高動向を見ると、2018年度の総売上高は150億4900万円(前年度比0.2%増)。
花火業界は、「おもちゃ花火製造、小売り」と「打ち上げ花火製造」の2業種で構成されており、おもちゃ花火業界は、年々拡大する少子化やゲーム機器の普及といった遊び方の変化に伴い、販売本数は減少しているものの、煙が少ない手持ち花火など毎年100種類もの新商品が開発され、急激な売上減とはならず推移しているそうです。

毎年100種類、すごいですね。
もっとすごいのは、業歴です。

先ほどの209社を業歴別に見ると、
☑️「100年以上」の老舗企業が70社(構成比33.5%)
☑️「50~100年未満」が85社(同40.7%)

これは、全業種の老舗企業の割合が2.26%であることを考えると非常に高い水準です。

花火市場については、日本政策投資銀行の子会社である日本経済研究所の「withコロナ時代における持続可能な地域産業に関する調査〜花火業界からのアプローチ〜」に詳しいのでご紹介します。

まず、打上花火と玩具花火の国内生産額の推移です。

画像7

2018年度で61.6億円、うち玩具花火は9.5億円となっており、8割以上が打上花火となっています。また、生産額はあまり変わらず安定的な市場と言えます。

なお、先ほど帝国データバンクのデータでは150億円程と乖離がありますが、こちらのデータの出典は日本煙火協会の事業報告書とのことです。

次に花火の国内生産額と輸入、国内需要に占める輸入額の割合です。

画像8

玩具花火では中国産が多く輸入されているそうですが、打上花火では国産が圧倒的に優位で、輸入の割合は15%程度です。

その打上花火、多くは花火大会で打上られますが、年間でどれくらい行われているのでしょうか?
一定量以上の花火を打ち上げる場合、都道府県知事に「煙火消費許可」を申請する必要があるそうです。その件数の推移が以下になります。

画像9

これを見ると、年間6千件以上の花火の打上が行われていることが分かります。

また、2017年度にはなりますが、花火大会の観客動員数上位15位はこちらです。

画像10


花火大会、当然花火の打上費用もあるのですが、実は、観客動員規模が大きくなるほど、その割合は小さくなり、会場設営と安全対策費、要は警備費ですが、その割合が大きくなり、半分を占めます(下図)。

画像11


さて、多くの人を楽しませてくれる打上花火ですが、昨年は多くが中止になりました。
花火打上に携わる方だけでなく見物に訪れる人たちに対する飲食やサービスにまつわる経済波及効果まで考えると大きな影響があったと思われます。

このレポートでは、花火大会中止に伴う経済損失を1兆円雇用者で48万人と試算しています。

画像12


こうした状況から、花火大会をクラウドファンディングで行い、それをWebで中継するなどの新しい試みも行われていますが、中止の影響をカバー全てカバーできるものではなく、支援も含めて試行錯誤が行われている最中と言えます。

→花火。体に響く大きな音も含めて体感するものだが、中止が相次いでいる。花火作り、打上は伝統の技とも言えるもので、実際に行われなくなると伝承も途絶える恐れがある。一時的な支援ではなく、収益化できるビジネスモデルは考えられないだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

仏壇。マーケット的には厳しい状況かもしれませんが、高級品シフトや店舗のロケーション変更など様々な工夫で生き残りを図っていることがわかりました。

花火。年間6千回も花火大会が行われていたんですね。それらが軒並み中止になったことでの経済損失が1兆円。とてつもない影響ですね。


皆様の頭の体操になるようなネタが1つでもあれば嬉しいです。

昨年7月から続けていますが、だいぶ溜まってきました。
以下のマガジンにまとめておりますのでよろしければ覗いてみてください。


この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?