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#177 変えるべきは組織か?管理職か?担当者か?

昨日に続いて業務改善の話です。改善ってなかなか難しいですね。そもそも「改善」とつけられた時点で、「あそこはダメだから」というニュアンスがありますから、対象となった部門も身を固くします。
本当は、じっくり観察し、根本原因を見つけ、メンバーの意識を変えていくような、組織のカルチャーを変えていくような改革が良いとは思うのですが、経営者目線で見ると、「やった感」があるのは、組織や人をいじくることです。
その場合、いじくって効果があるのは、組織なのか?管理職なのか?担当者なのか?ある実際のケースについて考える機会がありましたのでメモ。

なお、3つの例は全て異なる組織です。


1、組織を変えました。

まず、組織を変更したケースです。
ある本社機能なのですが、従来は、業務ごとに部がある形だったものを、複数ある販売チャネルのそれぞれの特性に応じたサービスが提供されないことを改善するため、サービスを提供するチャネルごとに部を再編しました。

結果
チャネルごとにカスタマイズされたサービスが提供できるようになったものの、チャネルごとに商品やツールを作るようになったため、商品数、ツール数が増え、コストが増えた。また、チャネルごとの縦割りが強くなり、かつチャネル同士で競争していることもあり、この本社機能でも、お互いに情報を交換しなくなり、市場への対応が遅くなったり、同じようなことをそれぞれでやっていたりで不効率が目につくようになりました。


2、管理職を変えました。

次に、管理職を変更したケースです。
他の部門でマネージャーで、ある全社的プロジェクトを成功に導いたこともある実績のある人物を登用しました。

結果
劇的に変わりました。
全く経験のない業務でしたが、メンバーから課題をヒアリングし、優先事項を3つ選び、プロジェクト化、それぞれにリーダーを任命、権限委譲を行なって改革を任せました。

加えて、新しい管理職は常に経営層に報告を欠かさず、細かいことでも成果として役員からメンバーに対してメッセージを出してもらう、などを継続し、他部門からの協力というリソースを確保するとともに、会社としても注目している部署なんだ、という意識をメンバーに持たせ続けることを行いました。

この結果、組織の在籍メンバーは管理職以外変更していませんが、活性化、生産性を大きく向上させました。


3、担当者を変えました。

最後に、担当者を変更したケースです。
在籍が長いメンバーを中心に2割程の人員を半年ほどで入れ替えました。
これは、管理職にヒアリングすると、長く在籍しているメンバーが仕事を囲ってしまっていること、新しいことをやろうとしないこと、などが組織停滞の理由として挙げられたためです。

結果
ほぼ変わらず、むしろ一部業務で引き継ぎなどが漏れ混乱が生じました。

これは、仕事が属人的になっていたこと、特に、今回異動対象となった担当者が異動させられることに十分な納得感がなく、引き継ぎも表面的なものに留まったことに加えて、代わりに他部門から異動してきた担当者がろくな引き継ぎも受けれず、また、周りからの十分なサポートも受けられなかったこと等が原因です。

なお、これらのことは予め予想されたので、管理職に対しては、これを機会に、業務のマニュアル化、転入者に対する教育体制の構築、異動対象者でない、残るメンバーへの配慮(今回の異動の趣旨、背景等の説明と前向きに転換する等)など、事前に注意喚起していたものの、結果的に形式的な対応にとどまったため、転入者も意欲を無くすものが多く、組織の停滞感は解消されなかったものです。


4、まとめ

ご紹介した例では管理職を変えた2つ目のケースだけ上手くいっていますが、これは完全に人によります。実際、別のケースでは、優秀とされていた人が着任しても改善に繋げられなかったこともあります。

つまり、組織を変える、人を変える、だけでは組織改善には至らない、というのが私の経験上の結論です。

それでも、組織、管理職、担当者、の3つを効果がある順に並べると、
管理職>担当者>組織、になります。

そもそも、改善を組織変更で、という発想自体危険を孕んでいます。

冒頭にも書きましたが、経営層の「やった感」は組織変更が最も強いからです。本当は組織変更後の運用の定着が重要にも関わらず、組織変更で「終わった」となってしまい、経営層の関心が薄れた途端にあっという間に元に戻ります。それはもう笑っちゃうぐらいです。

新しくなった組織で元のように仕事をしようとしますから、さらに不効率になりますし、ミスも増えます。加えて、他部門から見たときの分かりにくさも増してしまいます。

ほとんどの改善は現在の組織のまま、運用の変更で成し遂げられます。

そのポイント(あくまで私の、ですが)の一部は以下の投稿でご紹介しました。

「あるべき論」を「ラクしたい」に言い換える、という部分だけ取り出したものでしたが、実際に実行、定着させるにはまた別の難しさがあります。

その辺りは現在進行中だったりするのですが、自分の頭の整理も兼ねて別の機会にメモしたい、と考えています。

今回は「組織だけ、管理職だけ、担当者だけ、変えてもあんまり効果ないなぁ」という経験則のメモをご紹介しました。


最後までお読みいただきありがとうございました。

あくまである会社のある個人の経験則&感想となりますが、何か参考にしていただけることがあれば嬉しいです。

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