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#284 Learning to be 『存在のための学習』〜リカレント教育の源流を辿る〜

「リカレント教育」「生涯学習」などの言葉があります。つまりは学校出ておしまいではなく、一生学びが大事だよ、という話ですが、ものすごい長い歴史があることを知ったので、メモ。


1、「生涯教育」という言葉は1965年にできた。

最近の流行り言葉だと思っていたらとんでもなく勉強不足であることを知りました。
「生涯教育」という言葉が広く世界に広がったきっかけは、1965年にパリで開かれたユネスコの第3回成人教育推進国際委員会に、当時ユネスコの教育局成人教育課長だった、ポール・ラングランが「生涯教育について」という報告書を出したことです。

この中で、ラングランは、「教育は人生を通じで行われなくてはならない」、とし、「学業成績や仕事上の義務のために学習するのではなく、主体性を発揮して学習することで、それぞれの人生において主体となることができる」と主張しています。

これ、十分今に通じる主張ですね。


2、Learning to be 「存在のための学習」は1972年に登場した概念。

ラングランの「生涯学習」は多くの反響があり、さらなる発展を見せました。
1972年のユネスコ教育開発国際委員会は、「Learning to be」(「存在のための学習」)を公表しました。委員長のエドガー・フォールの名前から、「フォール報告書」と呼ばれるようになったものです。

つまり、「生涯学習」は「自らの存在のための学習」へと発展したと言えます。

今から半世紀ほど前の話です。


3、「リカレント教育」は1973年には登場。

ユネスコが主導する「生涯教育」に対しては、実業界などからは理想的過ぎるとの意見も出されました。そのためか、同じ国連機関であるOECD(経済開発協力機構)も生涯教育の推進について乗り出します。

1973年にはOECDの下部組織であるCERI(教育研究革新センター)が「Recurrent Education: A Strategy for Lifelong Learning」(「リカレント教育 - 生涯学習のための戦略」)という報告書を出しました。

ここでいうリカレント教育とは、社会人が必要に応じて教育機会を提供する場に回帰し(recurrent)教育を受ける構想です。

OECDが出したものですから、個人の能力を学び直しによってキャリア向上を促すことで企業の活動を活発にするという視点が入っています。

今と同じ、ですよね。


4、まとめ

いかがでしたでしょうか?

半世紀前に出た概念、今やっと追いついた、といったところでしょうか?

でも、実はこうしたユネスコ、OECDのレポートを受けて、日本でも早くから整備が進んだのです。

なんだと思われますか?

「生涯学習センター」です。

なんか聞いたことありませんか?

市区町村が運営している公民館とかそういったところにある、あれ、です。
あれが、「生涯学習」「リカレント教育」の「場」として整備されたものなんです。

いやぁ、びっくりしました。


もう1つびっくり(?)なのは、本件、全く別の勉強をしていて知ったのです。
きっかけとなった参考図書は「博物館の歴史・理論・実践3 - 挑戦する博物館」ですから…


最後までお読みいただきありがとうございました。

単なる歴史のご紹介でしたがお役に立つところがあれば嬉しいです。

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