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俳句 まとめ記事 一覧

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俳句作品のまとめ記事を集めています
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#文学

現代語俳句への旅 50 〜帆はすべて〜

現代語俳句への旅 50 〜帆はすべて〜


「 帆はすべて 」
~現代俳句集〜

ほんとうの桜が観えてふぶくなか

十万歩きょう良いおとのへんろ杖

赤く咲いてなんのきざしの沈丁花

春惜しむ路地奥に住むひととして

春雷よひとりひとりがひとりの夜

観潮船うずのあたりがあかるいぞ

春雨よきのうは待たせ今日は待ち

そもそもがいのちがけの世燕の巣

その主張花でしめしてたんぽぽよ

鼻うたが変わりつづけて春終わる

ふるさとを出た沈黙よ

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現代語俳句への旅 48 〜今朝ここに〜

現代語俳句への旅 48 〜今朝ここに〜


「 今朝ここに 」
~現代俳句集~

八重桜世がながながとあかるいぞ

大ざくら七日ふぶいてしずかさよ

坂というさくらふぶきのただ中へ

春の月おなじとおさのふるさとよ

千年桜これがこどくということか

花見してまぶしい今が散りやまず

初ざくら世阿弥の舞ということか

初花にすこしおくれていまの世よ

春ゆうやけ三人ほどは見ているか

この道よ一重ばかりの落ちつばき

よいひとによいことば

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現代語俳句への旅 47 〜春山河〜

現代語俳句への旅 47 〜春山河〜


「 春山河 」
~現代俳句集~

その奥に池咲くさくら散るさくら

ひこう機を遠景にして野にあそぶ

大宇宙ちいさく見ればたんぽぽよ

さんがつよ橋あるくおと川のおと

まっしろな蝶にも影のしずかさよ

手品師がハト出すように春めくか

雛まつりあるくはやさで川ながれ

さいげつに押し黙るのも雛の日か

この町よ春そのままにコーヒー店

呼びかけるイヤホンマイク春の空

北を見ればどこまでも北鳥

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現代語俳句への旅 46 〜なにかある空〜

現代語俳句への旅 46 〜なにかある空〜


「 なにかある空 」
~現代俳句集~

あたらしいさいげつをまた耕すか

いままさに春日大社であることよ

ただ愛の歴史よバレンタインの日

終わっても終わらず今日の卒業式

草ばなは摘まれるままにはるの旅

町じゅうをなつかしむのが雪解よ

熊本は阿蘇をはじめののどかさよ

自動車が飛ぶというそら春めくか

卒業歌せんそうというおろかさよ

ふるさとの山ふるさとの山ざくら

あおあおと島あおあ

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現代語俳句への旅 45 〜島やがて〜

現代語俳句への旅 45 〜島やがて〜


「 島やがて 」
~現代俳句集~

にんげんもすなおに咲けよ冬の菊

きょうまでの幸が不幸がはるの雪

まぼろしのおととどろかす凍滝よ

しんしんと耳のいたさの凍て滝よ

ほっかいどう零下四度の冬ぎんが

学問もあすへあすへと木の芽どき

マネキンのとわの静止よぼたん雪

しみじみと大ぞらのした雲雀ヶ丘

鳶だけが飛んでいる島うららかよ

北方領土雪ふりつづきふりやまず

歯舞群島ひとつにこおる

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現代語俳句への旅 43 〜晴ればれと〜

現代語俳句への旅 43 〜晴ればれと〜


「 晴ればれと 」
~現代俳句集~

大風邪の世のなかはまだ夜の中か

身について夕空いろのセーターよ

この星をあたたかくするしら息か

いまの世よだまったままの冬の月

着ぶくれておおぞらを見て純朴か

ぼろぼろよ芽吹きまぢかの大枯野

心から浮いたここちの柚子風呂か

はじまりのひとりをたたえ聖歌隊

富める者ますます富むか聖夜の鐘

りんりんと橇が聖夜をりんりんと



お歳暮よおもい

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現代語俳句への旅 42 〜明らかに鶴〜

現代語俳句への旅 42 〜明らかに鶴〜


「 明らかに鶴 」
~現代語俳句集~

平和通りいまは静かに木の葉降れ

恋二人セーターに陽があたるまで

あるときは嶺々あるときは冬光よ

コート着て都会は都会富士は富士

さいごにはゆう焼けてこそ十一月

奈良じゅうに耳をすまして冬の空

木枯らしのあちらこちらで疫病か

だれも行くマスクの白を盾として

能登がただ散っているだけ冬怒涛

あかるさよはるかに滅ぶふゆの星



おおさかのこ

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現代語俳句への旅 41 〜えらんだ都市〜

現代語俳句への旅 41 〜えらんだ都市〜


「 えらんだ都市 」
~現代語俳句集~

地球とは孤児かもしれずあまの川

果てるのは一日果てないのは秋思

おむすびのおおきなことよ運動会

フライパン火にかけどおし豊の秋

風おとのすき間すき間よのこる虫

とうきょうが顔あげている初雪よ

熱燗よまさにだいとうりょう選挙

手をあげて待つタクシーか木枯か

行くみちのままにそだてよ七五三

釣鐘は打つもの雪はたまわるもの



家いえのこ

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現代語俳句への旅 40 〜テント出て〜

現代語俳句への旅 40 〜テント出て〜


「 テント出て 」
~現代語俳句集~

笛吹いて天にとどくかあきまつり

ふるさとはきえのこる灯よ秋の雨

あかるさよ京都しずかに紅葉して

絵を描いてつぎの秋またつぎの秋

ひととして暮れのこったか秋遍路

すみだ川みずのひかりの朝寒むか

既視感のなかにたたずみ赤とんぼ

生きてこそかずかぎりない草の花

とうきょうもひと粒の灯よ星月夜

国じゅうがこころやすめよ十三夜



ふるさとか一

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現代語俳句への旅 39 〜灯していても〜

現代語俳句への旅 39 〜灯していても〜


「 灯していても 」
~現代語俳句集~

大宇宙をものおもいして灯の秋よ

まんてんの星きよめるか虫のこえ

つぎの代つぎの代へとばった飛ぶ

さきもりのすがたをいまに草の花

あかとんぼダムの放流とどろくか

そのむねに手をあててみよ秋彼岸

見つめればだんだん観えて名月よ

あかるさよ世捨てびとらも月見酒

ちんもくをもって真向かう台風よ

嶺揺れるかえで紅葉のそのおくで



デパートが

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現代語俳句への旅 38 〜百年のこと〜

現代語俳句への旅 38 〜百年のこと〜


「 百年のこと 」
~現代語俳句集~

また一人あかるみに出て十五夜よ

手かざしてぬける改札きょうの月

ひとの世を知ってしみじみ名月よ

柿食べてにっぽんがあるむねの奥

秋すずめとんとんとんと跳ねて空

旅びとが吹きゆくかぎり草絮とぶ

とかいとはなんの栄華ぞ銀杏ちる

船に風まったくもってさわやかよ

はるかさよ飛鳥寺まであきのそら

じぶんへのいのりしすかに星月夜



なが生きの幸

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現代語俳句への旅 37 〜西へ東へ〜

現代語俳句への旅 37 〜西へ東へ〜


「 西へ東へ 」
~現代語俳句集~

スカイツリーさえ大自然鳥わたる

そのままで富士そのままで秋夕映

あしおとも熊野の音かほととぎす

ほんもののひびきか奈良の秋の鐘

にわ石よしずかながらも秋のこえ

見ても歌聴いてもうたよもみじ川

琵琶湖からとおい都市まで水の秋

たくさんの船たくさんの秋の暮れ

隠岐の島いついつまでも秋夕映え

千ねんは生きていられず草絮吹く

住む街が問いかけてく

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現代語俳句への旅 36 〜天球儀〜

現代語俳句への旅 36 〜天球儀〜


「 天球儀 」
~現代語俳句集~

これ以上踏みいらず山ほととぎす

目つむってしずかな光ひぐらしよ

はるばると呼びあうことよ秋風鈴

あれからのこれからの鐘へいわ祭

年々よ身にしみてくるへいわの鐘

たましいが呼びあってこそ迎え盆

せんそうもえきびょうも越え盆踊

鳥わたる見えるかぎりの山河越え

京よりも奈良のふかさよあきの色

星あかりたたずむ橋の名もしらず

かがやいていのちの故郷

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現代語俳句への旅 35 〜かえってこない雲〜

現代語俳句への旅 35 〜かえってこない雲〜


「 かえってこない雲 」
~現代語俳句集~

しずかさをひびかせている風鈴よ

この世から消えてもきえず京の虹

いまの世の後ろすがたよ奈良団扇

目をつむっても瑠璃光寺蝉しぐれ

人として梅雨のなかゆく熊野古道

草笛は吹いてこそ野は晴れてこそ

富士の嶺はるかにひいてゆく汗よ

故郷までつらなって山ほととぎす

そのはてに都市いくつもよ夏の河

平およぎ海をひらいてゆくことよ

夜釣りして月

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