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現代語俳句への旅 42 〜明らかに鶴〜


「 明らかに鶴 」
~現代語俳句集~

平和通りいまは静かに木の葉降れ

恋二人セーターに陽があたるまで

あるときは嶺々あるときは冬光よ

コート着て都会は都会富士は富士

さいごにはゆう焼けてこそ十一月

奈良じゅうに耳をすまして冬の空

木枯らしのあちらこちらで疫病か

だれも行くマスクの白を盾として

能登がただ散っているだけ冬怒涛

あかるさよはるかに滅ぶふゆの星


おおさかのこのしずかさが雪の音

詩じんとは寒暮の灯りそのものか

護国寺というさいげつよふゆの虹

じんるいにかんけいのなく鯨跳ぶ

かお上げてもう三歳の日なたぼこ

降る雪よ背中をむけたほうが過去

旅の能登はじめての雪降ってきた

明けをまつ列ながながと除夜の鐘

ゆく道のかなたまで未知落葉踏む


山みちのあしあと凍りついていた

さいげつよ押し黙るとき年の暮れ

その夜にむかって聖樹かがやくか

見るひとも金閣として日なたぼこ

あるだけの星を見て去れスキー場

くしゃみして大空すこし遠のくか

くしゃみして五秒世界に遅れたか

いっせいにたぬきが跳ねて罠の音

鳴くこえは風の間に間にたぬき山


えきびょうに寒むざむニ〇二〇年

らい年へさらいねんへと餅伸びよ

蕪村忌よ発句に技の美こころの美

ゆきの夜よ折り鶴すべていのり鶴

うたうとき遥かな国歌ラグビーよ

さいごにはすべてを焚べて夕焚火

焚火してうたがうべくもない濁世

夢追いの果てのジンギスカン鍋か

明らかに鶴飛んでいるあかつきよ


11月27日〜12月16日
発表日順


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