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現代語俳句への旅 36 〜天球儀〜


「 天球儀 」
~現代語俳句集~

これ以上踏みいらず山ほととぎす

目つむってしずかな光ひぐらしよ

はるばると呼びあうことよ秋風鈴

あれからのこれからの鐘へいわ祭

年々よ身にしみてくるへいわの鐘

たましいが呼びあってこそ迎え盆

せんそうもえきびょうも越え盆踊

鳥わたる見えるかぎりの山河越え

京よりも奈良のふかさよあきの色

星あかりたたずむ橋の名もしらず

かがやいていのちの故郷あまの河

月を見て三日こころのしずかさよ


うみのいえ太陽わかちあってこそ

たいようの塔あるかぎり暑い野よ

蛇口からしたたるみずよ夏のはて

なんとなくくちぶえがでて初秋よ

つぎつぎにあきがとびたつ飛行場

ひとそだて都市そだててよ秋の土

りんごひとつ置かれ現代アート展

たびびとをわれにかえらす秋風よ

とうめいな傘でゆく都市秋しぐれ

待たされて月スクランブル交差点

マンションは足おとばかり月の夜

ベランダよこよい大きな月のなか


身にしみて東京ギターつまびく夜

行くことはかえることあの秋夕焼

おおぞらはいつかの自分鳥わたる

無になってなにを釣るひと秋の雨

ひととしてただいっぽんの蘆よ秋

中年の笑顔くしゃくしゃぬくめ酒

秋さばよそこらあたりのうみの幸

きつつきとともにさかえて山村よ

むくどりよ建ったばかりの一軒家

来世にはらい世のなやみ曼珠沙華

立って見て居てみて月の明るさよ

なんというあおよ月から地球の出

ほしぼしがながれてここに天球儀



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