見出し画像

現代語俳句への旅 39 〜灯していても〜


「 灯していても 」
~現代語俳句集~

大宇宙をものおもいして灯の秋よ

まんてんの星きよめるか虫のこえ

つぎの代つぎの代へとばった飛ぶ

さきもりのすがたをいまに草の花

あかとんぼダムの放流とどろくか

そのむねに手をあててみよ秋彼岸

見つめればだんだん観えて名月よ

あかるさよ世捨てびとらも月見酒

ちんもくをもって真向かう台風よ

嶺揺れるかえで紅葉のそのおくで


デパートがどんとある世よ秋夕焼

横断歩道のまんなかあたり秋の風

顔あげてあっという間に都市黄葉

おとならのコーヒー店の夜長こそ

胸に灯をともして夜学こつこつと

若さとは消えたさだった秋晴れよ

とりどりのこえもあざやか色鳥よ

古町から傘さしてゆくあきしぐれ

之がつれてゆく之之之之之漁の秋

あざやかに都市おもいだす彼岸花


地球ただ雄ぜんとしていなびかり

もともとをたどれば狩りの国原よ

移民来る雲よりたかいそらを越え

はたらいて又はたらいて秋の田よ

おおぞらとおおきな野はら秋日傘

ねんねんに身ぢかになって望月よ

とおい灯はとおい灯のまま秋の暮

歳げつはひとすじの道すすき手に

柿噛んで大のおとこになりゆくか

かえりみちいそぎはじめる十月か


閑寂が身にしみてくるかしわ手よ

さかずきに新酒次々ちょっと待て

たまきわるいのちは歌にぬくめ酒

ひさかたの月のあかりの都会こそ

いちぞくもおおかた老いて後の月

いもうとをおもえばあわれ鬼胡桃

ふでとって描くすがたこそ美男葛

こうこうと灯していても夜寒さよ

しあわせかそうでなければ温め酒

そうそうにこたつを出して雨音よ




いつも
ご覧いただき
ありがとうございます

Kusabue ホーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?