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記事一覧
口語俳句 作品集 12 〜ちる桜〜
「 ちる桜 」
~口語俳句〜
そよかぜよ天地吹きまぜ花すみれ
紋白蝶日ざしのいろということか
日に風にまかせる島よわかめ干す
大空をひっくりかえしつばめとぶ
さくら一枝咲きはじめたか白磁壺
春の富士羯鼓がひびきだすように
富士あおぐ耳におんがくはるの風
さいごまで見おくりはせず帰る雁
まんかいよ咲きうずもれて八重桜
離別後よ問いかけてくるはるの月
◇
おたがいのためにはた
口語俳句 作品集 11 〜花散歩〜
「 花散歩 」
~口語俳句〜
永遠にあたらしい都市あさざくら
エイプリルフールコーヒー店の朝
舞い上がる花スクランブル交差点
ビルが建つ蛙鳴いても鳴いてもよ
東京タワー後の世へ花ふぶくなか
植樹してすでに花咲くわかざくら
菓子楊枝葉かおりたってさくら餅
ショーウィンドウ街を映すか夕桜
住宅街夜ざくらほどのあかるさよ
目にうかぶ「平成」「昭和」朧月
◇
あけぼののベッドタウ
口語俳句 作品集 10 〜初桜〜
「 初桜 」
~口語俳句〜
そよかぜよ空ふるわせて初ざくら
一輪よこころほころぶはつざくら
都市にこそ並木通りのあさざくら
舞うそらよさくらに浮かぶ天守閣
いけの面よ桜のかげのありどころ
ちかづけば紅のうすれて山ざくら
てのひらを波があらえばさくら貝
あらわれる彼岸ざくらの咲く村が
さかみちよみなあゆみ入る花の雲
夜ざくらよ月とも違うほのあかり
◇
一凛よ日ざしのおくには
口語俳句 作品集 9 〜帰る雁〜
「 帰る雁 」
~口語俳句〜
かおどれもぼんぼりいろよ雛人形
春の雷夜のそらを鳴りわたるのが
人生をとおくながめて野にあそぶ
航跡は消えのこるみちかぜひかる
おやが来て喜喜叫喚のつばめの巣
過去ほどにうつくしいのが落ち椿
また来いよそらいちめんを帰る雁
そつぎょうの自転車かごに花束よ
卒業かそらにおおきな伸びをして
パレットよ青絵の具溶く春の富士
◇
木曽川よふねくぐり行
口語俳句 作品集 8 〜春まつり〜
「 春まつり 」
~口語俳句〜
春が来てやがて去りゆくバス停よ
春告げ鳥しみじみ耳にとどいたぞ
いるところどころへいわよ春の鳩
この村はたとえば日本タンポポよ
春の雷野やまそろそろ目覚めるか
想像よ咲いてはふぶくさくらの芽
つぎつぎかあかい芽吹きの吉野山
畑を打つひとのすがたも郷土史よ
雪とけて日がふりそそぐ海になれ
遅い日よ瀬戸に灯ともる島いくつ
◇
菜のはなよすえひろ
口語俳句 作品集 7 〜風光る〜
「 風光る 」
~口語俳句〜
来る春よ蛇口を落ちるみずのおと
いちりんよ水面揺れやむうめの花
うぐいすのこえのびのびて尊いぞ
手かざして富士見百景かぜひかる
畑を打つ故郷を打つということか
ひとつぶにそうぞう力よものの種
ものの種まいては大地そうぞうか
きらめいて波間波間のはるかもめ
おもうたび思い出になる日永さよ
おもいだすためのわかれか春炬燵
◇
しゃぼん玉そらいちめ
口語俳句 作品集 6 〜梅一輪〜
「 梅一輪 」
~口語俳句〜
とおぞらよへいわのように正月凧
梅いちりんさむい心によりそって
撒きまいてしおの花咲く正月場所
にわひとつかおりのなかよ水仙花
寒鯉よにしきのいろをあたえられ
じんせいよときはながれて冬の虹
寒つばきひと花ごとに散りごころ
いちりんをそっとつつむ手寒牡丹
日がしずむあかいちめんの大枯野
村ひとつとし老いながら春待つか
鳴きだしてふくろうという夜
口語俳句 作品集 5 〜春を待つ〜
「 春を待つ 」
~口語俳句〜
雪嶺がそらにうかんでいることよ
スキーヤー銀嶺の風、風、風、風
重力のどれもみごとよつらら折る
はつもうでいまにつづいて一家族
跳びとんでかるいすずめよ雪の上
よろこびを知る人たちよ若菜摘む
生きてこそかがみ開きの槌のおと
もち伸びていつまでとなくお正月
航海よ──夕映えの空──冬銀河
地も天もうごいているか冬ぎんが
◇
詩のなかに住んでい
口語俳句 作品集 4 〜初詣〜
「 初詣 」
~口語俳句〜
空ひろく仕事おさめということか
かるがると重い日記を買い行くよ
数え日よ晴れ雨曇り晴れ晴れ晴れ
めでたさのまえぶれ正月かざり売
すこやかでいることこそよ年用意
駅の灯よ夜やみあかるく年惜しむ
御歳暮をおくりおくられとおい空
めくる手よ文字目を覚ます古日記
いちねんをいちにちずつよ掃納め
早ばやと年過ぎて行くくやしさよ
◇
撞く僧よ間をたっぷりと
口語俳句 作品集 3 〜年末〜
「 年末 」
~口語俳句〜
明けがたよ僧たちの大すすはらい
せんぼんのつららしずかに凍滝よ
舞い舞ってときをこえるか里神楽
こと祝ぎの手に手に届け賀状書く
ことしまた降りだす雪の気重さよ
まっしろなせかいにこえよ雪合戦
寒菊のかすかにかおる日なたこそ
また朝よ摘んでも摘んでも蜜柑山
かえりみちはるばる日なた年の市
おでん酒頬でわらっているばかり
◇
水仙よどれを剪ってもか
口語俳句 作品集 2 〜ふる雪〜
「 ふる雪 」
~口語俳句〜
京というふる雪というしずかさよ
おどろいて水さわぎだす浮き寝鳥
手ばかりがいきいきうごく冬耕よ
はたらいてよい日があたる蜜柑山
木がらしよ神社の夜明け寺の暮れ
鬼がわら目をみひらいて霜の屋根
一つに手あわす神社よ冬あたたか
あさは掃きひるは焚きあげ神無月
にんげんがまっさきに暮れ浜焚火
ゆきだるましろじろと見え夜の奥
◇
いちまいのそらごとふ
現代俳句 作品集 50 〜冬あたたか〜 最終回
「 冬あたたか 」
~現代俳句〜
わたり鳥声さきだててあさぞらよ
さし上げてだれよりたかく秋神輿
木のえだに物見のからす秋まつり
いちねんをながめて立つか大刈田
一身を吹き抜けてよりあきかぜよ
すすき手に旅びと同士ちかよらず
一つついてせんねんのおと鐘の秋
ぐるぐると枝うねってよ松手入れ
ひとりずつちがうこころの観月よ
冷ややかようごかずのほし北極星
◇
飛鳥寺そのものの