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#1 入社初日 〜期待と衝撃〜
通勤ラッシュを文字通り肌で感じ、降り立つそこは、まさに都会のビジネス街、高いビル群を見上げ、これからここで働くのかと期待と不安が入り混じる。
足早に行き交うサラリーマンの中には、着慣れないスーツを身に纏い、緊張した面持ちで、いかにも新社会人といった若者が僕以外にもちらほら混じっている。
まだ見ぬ同期がこの中にいるかもと思うと少しワクワクする。
いよいよ今日が社会人生活、その第一歩!
僕の記念
#19 盲目の剣豪 〜射出成形不良の確認〜
「あー、ごめんごめん!ちゃんと説明するね!」
新入社員である僕の指導係で技術部の先輩である冨樫さんは軽く謝りを入れたうえで、先程まで繰り広げられていた意味不明で摩訶不思議な業務の説明を始める。
冨樫さんはどこから説明していけば良いかを少し悩んだあと、その判断を一旦、僕に投げてきた。
「えーっと…どの辺が分からなかっとかあるかな?」
「全部です!!」
「そうだよね!じゃぁ!……」
軽く微
#17 最初の電話対応(後編) 〜無残な初体験〜
電話に出たくないという気持ちからか、せめてもの抵抗として、ゆっくりと電話に手を伸ばす。
自分の手が受話器に近づくにつれて、心拍数があがっていくのがわかる。
(あー……もうダメだ……)
抵抗虚しく手が電話に到達してしまった。
その瞬間、不意に静寂が訪れた。
(え?)
緊張のあまり音が聞こえなくなったか。
いや、違う。
電話の呼び出し音が止まったのだ。
(と、止まった………)
ただ
#14 技術部配属初日 〜不安な先行き〜
総務部人事課の田代さんに連れられ、技術部のあるオフィスフロアへと足を踏み入れる。
その広いフロアには、長手のデスクが整然と並べられ、始業時刻の前だというのに既に多くの人が各自のパソコンに向って何やら作業を始めている。
キーボードを叩く音が空間に鳴り響く。
その空間の静けさとキーボードの喧騒が無機質な圧力となって、僕の身体に伝わる。
反射的に気圧されないように努める。
しかしそれが逆に、不
#13 新入社員研修修了 〜幻滅と喝采、最後の通告〜
総勢40人前後の聴衆が注目する巨大なスクリーンが切り替わり、会場が大きくざわめく。
「へー」といった驚きの反応
「え…?」といった明らかな不信感
「うわー」といった明確な嫌悪
様々な声が飛び交う。
ざわめきの中には笑い声も所々で聞こえる。
しかし、その笑い声も楽しそうな笑い声と困ったような笑い声が入り乱れる。
様々な反応が重なり、まとまった騒がしさとなって僕の身体に強くのしかかる。
#11 最後の課題 〜秘めた過去と隠された陰謀〜
果てしなく長い道のりに思えたグループ会社全体での合同新入社員研修がようやく終わりを迎えた。
合同研修の2日目からはクラス単位で本格的な研修が始まったが、当然、初日以上の試練が立ちはだかることはなく、暫しの平穏が鉛のように硬直した僕の心を徐々に和らげていった。
子会社の僕は当然のように研修室の1番後ろの席だった。
それもあってか、大勢での研修は安心してよく眠れた。
というより、積極的に寝てや
#10 洗礼 〜新入社員挨拶〜
グループ会社全体の合同新入社員研修初日。
午後は外部の講師によるビジネス研修。
人事部の研修担当が舞台の隅に立ち、おもむろに講師の紹介を始める。
本が何冊出版され、累計発行部数がいくらで、こんなキャリアを積んで、現在はこんな肩書だと、いつの間に声高になって紹介に熱が入る。
どうやらそれなりに著名な人のようだ。
たいそうな紹介から満を持するようにその講師の人が舞台に上がってきた。
遠目か
#9 合同新入社員研修 〜ムカつく女〜
目の前に現れた全面ガラス張りの巨大なビルは日の光に照らされ輝きを放ち、圧倒的な存在感で僕の前に立ちはだかる。
子会社である自分の会社が入っているビルもそれなりに立派なものだが、別格だ。
さらに会社の敷地内に入ってもなお、指定された研修会場まではしばらく歩いかされるほどに広大な土地を所有している。
(こ、これが親会社の実力か……)
親会社の建屋と敷地面積で圧倒的な差を見せつけられた気がした。
#8 技術部研修 〜救世主との再会〜
1日ぶりに総務部のフロアにある自社研修用の会議室に戻り、無事生還できた事に思わずホッとする。
昨日の営業研修は散々な目にあった…
振り返るだけで嫌気がさす。
今日は気を取り直して、1日、技術部研修。
入社してから相次ぐ試練の日々に、今日だけは何事もなく終わってほしいと心から願うばかりだった。
そしてなにより、技術職で採用されている僕にとって、今後、実際に関わるであろう内容の研修に学ぶ意欲は
#7 営業研修 〜修羅場〜
入社4日目。この日は1日、営業研修。
朝から営業部のフロアに向かい、営業部長の田崎さんを訪ねると初対面で早速いじられる。
「お!来たな!たった1人新入社員!」
最速で僕の境遇を処理されたが、嫌な気はしなかった。
そして、営業部のフロアにある会議室で待っていると田崎さんと一緒に20代後半くらいの若い社員が入って来た。
「こいつが営業部の若手で高末!」
田崎さんは若い社員の肩に手を乗せなが
#6 自社研修(後編) 〜激闘〜
10分間の休憩をギリギリまで喫煙所で過ごし、可能な限り煙を摂取してから急いでアジトである会議室に戻った。
見計らったかのように、会議室のノックが優しく鳴り、次の研修の講師を担当する執行役員の矢口さんが会議室に入って来た。
「よろしくお願いしますね。」
矢口さんの雰囲気通りの優しい声色がこれから始まる睡魔との激闘を一瞬忘れさせた。
「よろしくお願いします!この前の歓迎会はありがとうございまし