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好きが感謝に昇華した

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私が高3から空白の1年を挟んで今に至るまでを描いたエッセイです。
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#12 好きが感謝に昇華した話①【邂逅】

#12 好きが感謝に昇華した話①【邂逅】

「好きって極めると感謝になるんだ」

今年の3月、1年の足踏みを経て大学に合格したとき、私はそう思った

chapter0 空白の1年

秋になってもまだ感じることがあります

広い広い大学の敷地に入ると

「この大学の地面をずっと踏みしめられるんだ」

受験の一度きりじゃない、これからも

「本当に、頑張ってよかった」、と

春の頃なら誰しも感じたであろう
温かい誇らしさ

でも私は年がら年中感

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#13 好きが感謝に昇華した話②【進路】

#13 好きが感謝に昇華した話②【進路】

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chapter2 進路と迫る共通テスト

「進路」

その単語を意識し始めたのは実に7月の二者面談だった

高校まではごくごくふつうの公立に通っていたため、それほど自分の未来を考えたことはない

アブラゼミのけたたましい鳴き声が廊下中に響き渡る中、担任の先生との面談が始まる

ぼんやりと、間近で見てきた先生になりたいと思って高1の模試から書いていた志望校をコピーして提出していたのだ

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#14 好きが感謝に昇華した話③【決戦】

#14 好きが感謝に昇華した話③【決戦】

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chapter4 決戦①「筆記」

キャンパスはとにかく広かった

来るのが早すぎたせいか、まだ人影が見当たらないのでどっちが試験会場かわからない

しばらく周辺をさまよった

とにかく寒くて、手袋をしていても手はかじかんでいる

しばらくすると受験生がスーツケースをガラガラと引きながらやってきたのでこっそりついていった

(一体この人はどこから来たんだろ…)

全国津々浦々からや

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#15 好きが感謝に昇華した話④【告白】

#15 好きが感謝に昇華した話④【告白】

↓前回の記事

chapter7 告白

「あなたが好きです」

この言葉を伝えるためにどれほどの勇気がいるのか、その日初めて知った

3/1 am7:00

少しひんやりとした朝だ

いつもは寝ぼけながら目覚ましを連打するところだが、この日だけは目覚ましがなる前にベッドから起き上がった

陽の光がカーテンの端から差し込んでいる

むっくりと起き上がり、大きく背伸びをしたあと、頬をつまむ

(夢じ

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#17 好きが感謝に昇華した話⑤【再起】

#17 好きが感謝に昇華した話⑤【再起】

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第1部「高3期」の登場人物

「私」

「背高猫背目つき悪男」

「初恋の人」

「初恋の人の友達」(Kさん)

※4人ともクラスが一緒

ーあらすじー
「密」であるはずの青春がほとんど失われた高3。そんな中趣味が同じで幸せそうな女性に私は恋をして卒業式で告白をするも、気持ちは届かずにそのまま高校を卒業することに。その後たった一つの連絡手段をもとに舞台は新たなステージへと切り替わる

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#19 好きが感謝に昇華した話⑥【空白の春】

#19 好きが感謝に昇華した話⑥【空白の春】

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chapter11 3つの未来

平日のビル街

暖かな日差しが降り注ぐ大通りにはたくさんの人が行き交っている

塾が乱立するエリアに入ると一気に年齢層が低くなった

隣も、前も学生服を着た人で溢れている

小学生も中学生も高校生もいる

そんな人込みをかき分け、私は最も高いビルに入った

エントランスには警備員が配備されておりやや威圧感を感じる

それとは対照的に受付にはぱっと見

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#20 好きが感謝に昇華した話⑦【空白の夏】

#20 好きが感謝に昇華した話⑦【空白の夏】

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chapter13 梅雨の大型契約

2021.6

予備校の裏にある、レンタカー店の隣のコンビニにはなんと小さい庭がある

そこには店主さんが植えたのだろうか、綺麗な紫陽花が咲いている

サラリーマンたちと一緒の時間に昼食をよく買いに来る私はその紫陽花を思わず写真に収めた

(あの人に送ろっ!)

(この先も会話を続けてもいい許可がおりたらだけど)

そう、この時はまだ返信待ち

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#21 好きが感謝に昇華した話⑧【リベンジマッチ】

#21 好きが感謝に昇華した話⑧【リベンジマッチ】

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chapter16 声

そんな根拠もない確信を、恋が終わった瞬間の人間なら、いともたやすく感じてしまうらしい

別に失恋に酔いしれているとかではなくて、ただ純粋に、その時は思うのだ

「ありがとう」とか「ごめんね」くらいの
気持ちで

当然のことなのだが、時が経てばそんなことはほとんど忘れ去り、当時を思い出して涙を流す回数よりも恥ずかしくなる回数の方が多い

少々心が痛んでも、眠

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#23 好きが感謝に昇華した話⑨【想い】

#23 好きが感謝に昇華した話⑨【想い】

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chapter18 電子版文通

「LINE」

それは気軽にいつでもどこでもコミュニケーションがとれる画期的なツールである

今やそれを使っていない若者はいない程世の中に浸透している

だが近年では友達の今を共有するストーリーズから会話を広げることのできるInstagramがコミュニケーションアプリの主流になりつつあるらしい

LINEは事務的なもので仕方なく入れている感じ

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#24 好きが感謝に昇華した話⑩

#24 好きが感謝に昇華した話⑩

chapter20 好きが感謝に昇華した話

昇華

それは、誰かを想う叶うことの難しい「好き」のエネルギーを転換し自分のための受験勉強に注いで、それを経て「好き」がより高次元な「感謝」にレベルアップしていたという話

そしてその「好き」はなんと私の夢を1つ叶えてしまった

もちろん、ただ好きなだけではこうはならなかった

人間なんてそんなに強くないんだから、上手くいかない葛藤を転換してプラスの行

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#25 あとがき

#25 あとがき

ゆっくりじっくり、他の何にもとらわれず文章を紡いでいく、その時間が僕は何よりも好きになっている

別に文章が綺麗じゃなくたって、難しい言葉を知らなくたって、誰かに届けたい熱い核みたいなものが存在すれば、それは立派な作品だと思う

記事をたまたま見つけた人が、少しでも、1mmでもどこか心の奥底の部分で揺れ動かされたなら、物書き冥利に尽きる想いだ

***

人間なんてみんなどこかおかしい

急にネジ

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#29 集合!(1)

#29 集合!(1)

「だからさ、しゃぶしゃぶの店来て白玉食い尽くすのどうなん」

20を超えた三人組に食べ放題の肉は少々堪えるのだが、それでも鍋を挟んで向かいに座る背の高い男は、肉が重たいと言いながらカレーをこんもりよそい、苦しそうな顔で食べて白玉を取りに行く。

「せめて白玉にあんこくらいかけなよw」

隣には、白玉だけほおばる彼を見て笑う女性がいる。

できればこれからも集まる時はしゃぶしゃぶに行ってこのカオスな

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#37 「コーチ」と呼ぶ女性

#37 「コーチ」と呼ぶ女性

「コーチ!」

私の後ろから、そう呼び止める声がする。

いつも後ろから急に話しかけてくるから毎回驚いていて、それをけらけらと笑われるのがオチだった。

この人は、いったいなんだったんだろう。

他人と関わらずに生きたい自分の視界にふっと入ってくる彼女はなんとも不思議な人物だった。

今頃、どこで何をしているんだろう。

大学に入っていろんな新しいことに揉みくちゃにされて奥の奥の方に仕舞われていた

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