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koruri31
2021年11月26日 12:58
歴史は繰り返される。壊れたロボットは電池がなくなるまで意識を保ち続ける。 人間が発明した長寿命電池のおかげで、私は未だに死ぬことができない。 老いもない体、いつが最期になるのか分からないまま、今日も流れていく時間というものを、た だ眺める毎日だ。人間は今よりも早いスピードで移動し、早いスピードで物事を処理し、その代償と言わんばかりに、より多くの手軽な娯楽を求めた。時間がかかるこ
2021年9月26日 19:43
「次の方どうぞ。」カウンセリング室の引戸が、カラカラと音を立てて開いた。「先生、ご無沙汰しておりマス。」一人の青年型ロボットがにこやかに入室してきた。穏やかな動作で頭に乗せていた帽子を取り、軽く会釈する。帽子の下には、人間ではないことを示すように、通信状態良好を表す青いLEDランプの光がこめかみ辺りを走っていた。「やぁ、久々だね。さぁ座って」私は、いつものように、冷蔵庫からお
2021年7月19日 23:27
「先生、こんばんは。」彼女は今週もやってきた。黒い楽器ケースを背負い、楽譜を入れた灰色のバッグを持った女性が現れる。黒のブラウスに黒のパンツスタイルの全身真っ黒コーデに、彼女の黒髪の間から赤いイヤリングだけが目立っていた。コツコツと床を鳴らして僕に近づいてくる。今週はハイヒールの日のようだ。彼女は、レッスンに来るたびに服装の系統が違う。先週は、キャリアウーマン風のジャケットを着てい
2021年7月3日 00:43
赤いアンスリウムが、道で土下座をしている。きっと花束から転げ落ちたのであろう。さっきまで華やかな会場にいたのであろうその切り花は、今や新宿のアスファルトに突っ伏して、雨に打たれて、とても惨めな様子だった。雨は強い。傘をさした気まぐれな女が、モデルウォークのようにやってくる。ヒールの音がコツコツと僕の横を通り過ぎる。あまりに近くを通るので、頭に響く。体を濡らす雨の温度と、やって来
2021年6月29日 00:42
比較的小さめの駅電車から降りてエスカレーターに群がる、スーツ姿まるで、甘い物に群がる、ありんこのようだとか、後ろで傍観しているけれど私もその甘い蜜へと吸い込まれていくただの一匹のありんこなのさ。