コンドウノリカズ

きっとたぶんほとんど夜のはなし。

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ハッピー

人は何かしていないと自分には価値が無いと 考えてジタバタしてしまうけど、 うちの二十歳まで生きた猫は 20年間ずっと ただ食べて寝ていただけだった。 (なのにあんなに…

『OTOGI』とまいぺんさんの音楽

OTOGIという音楽ユニット及びそのGt.Voであるまいぺんさんという人の曲・歌が好きです。 いい曲ばかりなのですが、これが物理的になかなか聴きにくい。 なぜ聴きにくいかっ…

メビウス

自分の中の言葉を減らしていくということと、 逆に心の中を徹底して言語化していくということは、 実は同じことをしているのかもしれない。

動詞になれない「私」

私が夜、太極拳の練習に行くと、ポツポツと雨が降ってきた。 私は降ったり止んだりで、でも最後まで本降りにはならなかった。 私が降って蒸し暑かったけれど、私が吹いてい…

風、世界、私

風はいつも世界がそこにあることを教えてくれる。 風が吹くと私は開かれ、世界がそこに現われる。 開かれてはじめて、自分が閉じていたことを知る。 開いてみれば内も外も…

孫の手くん

 いつも背中を掻いてくれる手がある。「あ、背中がかゆい」と思うとき、別にそうでもないとき、いいタイミングのときもそうでないときもあるけれど、その手がいつも私の背…

【夢】誰かの部屋に着かない

誰かがいなくなってしまった。 その人の部屋に手がかりがないか探しに行く。 友だち2人と一緒に。 でも、その部屋がどこにあるのか誰も知らない。 行ったことがあるはず…

孤独な魚

 雨の日は水槽の中にいるみたい。  雨粒の流れる窓を眺めていたら、昔魚だったことを思い出した。  暗い暗い光の届かない深海に棲む孤独な魚だ。  そのころはまだ孤独…

鳥とキツネ

 お腹を空かせたずる賢いキツネは、狩りのために鳥たちの言葉を覚えた。  言葉がわかるようになると、キツネは鳥たちと友達になった。  キツネは友達を食べることができ…

命の歌

 夜は生きている。  だから夜は歌うのだ。  生きているものはすべて歌っている。  強く弱く震えている。  命が歌っている。

人間

 人は間。ただの間。すき間だ。  そこには日々、色々なものが溜まっていく。  人はそれを自分のもの(時には自分自身)のように思っているけれど、風が吹けばどこかへ…

風と言葉

【夢】時間と結婚してろ

これからパーティーか何かがあるらしく、主催者の偉い人(社長とかそんな立場の人)が、部下だか会場のホテルの人だかに、何度も時間について念を押されている。 その人は…

ありがとう、世界

「ありがとう、世界」 空に向かってこぼれたことば。 風が吹いた。 風が世かいをふきとばす。 わたしはただかぜのなかにたっていた。

透明な雨

 透明な雨が降っていて、人々は雨が降っていることに気づかない。  街や人や地面が濡れていくことに気づくだけ。  道行く人々がしっとりと濡れてゆく。  濡れてふやけ…

桜散る乱

「桜は人を狂わせるって言うけど、あれってダジャレだよな」  突然友人がそんなことを言い出した。何のことかと思ったら、有名な文学作品のことらしい。それのどこがダジ…

ハッピー

ハッピー

人は何かしていないと自分には価値が無いと
考えてジタバタしてしまうけど、
うちの二十歳まで生きた猫は
20年間ずっと
ただ食べて寝ていただけだった。
(なのにあんなに偉そうに自信満々で)

最期はここと定めたように2週間
同じ椅子の上でずっと寝起きをして、
そのまま眠りながらいつのまにか死んだ。

思えば、
生きることも死ぬことも何もかも、
誰かのせいにはしなかった。
一度も。

『OTOGI』とまいぺんさんの音楽

『OTOGI』とまいぺんさんの音楽

OTOGIという音楽ユニット及びそのGt.Voであるまいぺんさんという人の曲・歌が好きです。
いい曲ばかりなのですが、これが物理的になかなか聴きにくい。
なぜ聴きにくいかって音源が少ない。
だから、何かでちょっと耳にして「お、いいな」なんて思っても、そこからどうやって他の曲を見つけて聴けばいいのかわかりにくい。

そこで、OTOGIの曲についてちょっとまとめてみます。

まず、現存するであろう曲の

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メビウス

自分の中の言葉を減らしていくということと、
逆に心の中を徹底して言語化していくということは、
実は同じことをしているのかもしれない。

動詞になれない「私」

私が夜、太極拳の練習に行くと、ポツポツと雨が降ってきた。
私は降ったり止んだりで、でも最後まで本降りにはならなかった。
私が降って蒸し暑かったけれど、私が吹いていたので少しは涼しかった。
私の音を聞きながら練習をした。
私が降っているのに、私の鳴く声が聞こえていた。
小さな私たちが、体と比して巨大な私を浴びてどうして平気なのだろうかと、いつも不思議だ。
帰り道、見上げるとうっすら私が出ていた。

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風、世界、私

風、世界、私

風はいつも世界がそこにあることを教えてくれる。
風が吹くと私は開かれ、世界がそこに現われる。
開かれてはじめて、自分が閉じていたことを知る。
開いてみれば内も外もない。
思考に溺れるのも、風に耳を澄ますのも、同じだった。
言葉も、風も、同じところからやって来ていた。
私は、彼らが通りすぎるときに、一瞬だけ現われる幻想。
存在しない、永遠に続く一瞬。

孫の手くん

孫の手くん

 いつも背中を掻いてくれる手がある。「あ、背中がかゆい」と思うとき、別にそうでもないとき、いいタイミングのときもそうでないときもあるけれど、その手がいつも私の背中を掻いてくれる。
 振り返っても誰もいない。だから私はその手も、手の主も見たことがない。けれどその感触はたしかに人の手だ。そう大きくはない。女性か子供の手なのではないか。
 誰の手か、それとも「誰」ではないモノの手なのか。わからないのでち

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【夢】誰かの部屋に着かない

【夢】誰かの部屋に着かない

誰かがいなくなってしまった。

その人の部屋に手がかりがないか探しに行く。
友だち2人と一緒に。

でも、その部屋がどこにあるのか誰も知らない。
行ったことがあるはずなのだけど、道が思い出せない。
3人で、住宅街を延々うろうろする。

「こんなに着かないのは何かおかしい」
そのうち1人がそんなことを言い出す。
たしかに何かおかしい。

そういえば、この辺は再開発で様子がすっかり変わったのだというこ

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孤独な魚

孤独な魚

 雨の日は水槽の中にいるみたい。
 雨粒の流れる窓を眺めていたら、昔魚だったことを思い出した。
 暗い暗い光の届かない深海に棲む孤独な魚だ。
 そのころはまだ孤独を知らなかった。
 深い海の底はとても静かだったから。
 今は四六時中聞こえてくるこの鼻歌を知るまで、世界に孤独は存在しなかった。

鳥とキツネ

鳥とキツネ

 お腹を空かせたずる賢いキツネは、狩りのために鳥たちの言葉を覚えた。
 言葉がわかるようになると、キツネは鳥たちと友達になった。
 キツネは友達を食べることができなかった。
 そしてお腹を空かせたまま、キツネは死んだ。
 その日、森中の鳥たちが、キツネの好きだった歌を歌ってその死を悼んだ。

命の歌

命の歌

 夜は生きている。
 だから夜は歌うのだ。
 生きているものはすべて歌っている。
 強く弱く震えている。
 命が歌っている。

人間

人間

 人は間。ただの間。すき間だ。

 そこには日々、色々なものが溜まっていく。
 人はそれを自分のもの(時には自分自身)のように思っているけれど、風が吹けばどこかへ散ってしまうものに過ぎない。

 きれいなすき間は、風が吹き抜けるときに美しい音を奏でる。

【夢】時間と結婚してろ

【夢】時間と結婚してろ

これからパーティーか何かがあるらしく、主催者の偉い人(社長とかそんな立場の人)が、部下だか会場のホテルの人だかに、何度も時間について念を押されている。
その人は時間になんて興味がなくて、なのに何度もしつこく言われるのでうんざりして、
「そんなに時間が好きなら時間と結婚でもしてろ!」
と怒っていた。

僕はそれを、その人視点の、でもテレビを観るような感じで見ていて、次の場面はその人のどら息子の視点だ

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ありがとう、世界

ありがとう、世界

「ありがとう、世界」

空に向かってこぼれたことば。
風が吹いた。
風が世かいをふきとばす。
わたしはただかぜのなかにたっていた。

透明な雨

透明な雨

 透明な雨が降っていて、人々は雨が降っていることに気づかない。
 街や人や地面が濡れていくことに気づくだけ。

 道行く人々がしっとりと濡れてゆく。
 濡れてふやけて、水気いっぱいになった人々は街の景色に溶け、ついには皆風景と同化してしまう。

 だから見えない雨が降ると、世界から人は消えてしまう。
 雨が止めば、あとにはたくさんの水たまりが残っているばかりだ。
 雨上がりの街は、だからとても美し

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桜散る乱

桜散る乱

「桜は人を狂わせるって言うけど、あれってダジャレだよな」

 突然友人がそんなことを言い出した。何のことかと思ったら、有名な文学作品のことらしい。それのどこがダジャレなのかと言うと、「桜」と「錯乱」をかけているのだと。言われてみればかかっていないこともないとは思うが、単なる偶然ではなかろうか。

 けれどそう主張している友人は普段、そんな冗談を言うタイプでもない。どうしてそんなことを思い付いたのか

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