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ことば

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メビウス

自分の中の言葉を減らしていくということと、
逆に心の中を徹底して言語化していくということは、
実は同じことをしているのかもしれない。

動詞になれない「私」

私が夜、太極拳の練習に行くと、ポツポツと雨が降ってきた。
私は降ったり止んだりで、でも最後まで本降りにはならなかった。
私が降って蒸し暑かったけれど、私が吹いていたので少しは涼しかった。
私の音を聞きながら練習をした。
私が降っているのに、私の鳴く声が聞こえていた。
小さな私たちが、体と比して巨大な私を浴びてどうして平気なのだろうかと、いつも不思議だ。
帰り道、見上げるとうっすら私が出ていた。

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風、世界、私

風、世界、私

風はいつも世界がそこにあることを教えてくれる。
風が吹くと私は開かれ、世界がそこに現われる。
開かれてはじめて、自分が閉じていたことを知る。
開いてみれば内も外もない。
思考に溺れるのも、風に耳を澄ますのも、同じだった。
言葉も、風も、同じところからやって来ていた。
私は、彼らが通りすぎるときに、一瞬だけ現われる幻想。
存在しない、永遠に続く一瞬。

人間

人間

 人は間。ただの間。すき間だ。

 そこには日々、色々なものが溜まっていく。
 人はそれを自分のもの(時には自分自身)のように思っているけれど、風が吹けばどこかへ散ってしまうものに過ぎない。

 きれいなすき間は、風が吹き抜けるときに美しい音を奏でる。

ありがとう、世界

ありがとう、世界

「ありがとう、世界」

空に向かってこぼれたことば。
風が吹いた。
風が世かいをふきとばす。
わたしはただかぜのなかにたっていた。

落ちてくる月

落ちてくる月

 もっと自分の手が長ければ、落ちてくるあの月を支えられるのにと、子供のころ思っていた。
 誰もあの月が落ちてくるなんて信じなかったケド。
 でももし月が本当に落ちて来て、見上げるその姿が日に日に大きくなっていくとしたら、人はいつまであの月を美しいと眺めていられるだろうか。
 爪の先ほどだった月が手のひらぐらいの大きさになったら?
 バスケットボールぐらいでは?
 落ちてきた月はやがて大気圏に触れ、

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震える世界

震える世界

ワンネス。
漢字で書けば「一」。
一は線。
つまり世界は線である。
この線とは波だ。
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