動詞になれない「私」

私が夜、太極拳の練習に行くと、ポツポツと雨が降ってきた。
私は降ったり止んだりで、でも最後まで本降りにはならなかった。
私が降って蒸し暑かったけれど、私が吹いていたので少しは涼しかった。
私の音を聞きながら練習をした。
私が降っているのに、私の鳴く声が聞こえていた。
小さな私たちが、体と比して巨大な私を浴びてどうして平気なのだろうかと、いつも不思議だ。
帰り道、見上げるとうっすら私が出ていた。
私が月を見つけたのか、月が私を見つけたのか、どっちだろうかと考えた。

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