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言葉のテリーヌ

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色とりどりの言葉を僕の好みで集めてみました。
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#書くこと

夜景は汚物。

夜景は汚物。

この夜景を見てきれいだという人たちは、それをみるために1500円の入場料を払っている。夜景はたしかに、間違いなく綺麗だった。1500円以上の価値があるものだった。肌に刺さるような冷気を感じながら、静かにひとりでその景色をみていられたらどれだけ幸せだっただろう。実際は、マスクを顎まで下ろしたオバサンがわたしの左肩に向かって「うわあ!綺麗ねえ!みてよ〇〇ちゃん!娘に電話してみるわ!」と叫んだ挙げ句、そ

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コメントについて。

コメントについて。

既にお気づきの方もいると思うが、わたしはコメントを返すのが"とても"遅い。

ひとつひとつの言葉と想いに向き合う時間を確保できなくなっているいま、コメントに対する返信が遅くなっていることを心から申し訳ないと思っています。貴重な時間を割いてコメントを残してくれるのは本当に嬉しいと感じており、返信が遅いからといって嫌だと思っているわけではないということを、この記事ではっきりと、明確に、書いておきます。

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秋を探して

秋を探して

お風呂から上がると、いつも眠気がとろりと忍び寄る。身体が心地よく重たくなってきて、まだ濡れたままの髪の毛を気にしながら、少しだけ、とソファに横になる。

このまま寝てしまいたい、と思う自分と、まだまだすることはあるんだぞ、と思う自分がせめぎあう。会社では眠たくなってもあくびをかみ殺してパソコンに向かえるのに、お風呂上がりの眠気にはどうしても抗えない。肌にぴたりと吸い付くようなソファの革の冷たさが心

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この景色が消えないように

この景色が消えないように

二十数年も同じ街で暮らしていると、あちらこちらが変わってゆく。

映画館やジムが入ったショッピングセンター、駅前のロータリー、ガラス張りのバスターミナル。こどもの頃には無かった小綺麗な施設に、街の景色はいつの間にか上書きされている。この街には似合わないと思っていたショッピングセンターは今やなくてはならないものになって、ここでなければどこで買い物をしていたのか、もう思い出すことができない。生まれたと

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渺茫とした海と街で艶やか心を取り戻す

海の静けさから潮風がそっと匂いだす。それは夏の趣を帯びて砂浜に溶け、また地球の大地に消えていく。水平線上から打ちあがった入道雲は真っ青なキャンパスの中央に力強く描かれている。その下には、小さくなった船がある。そして手前には白波で身体を揺らす子供と親が照り付ける陽ざしをも喰ってしまうほどの笑顔を弾ませて楽しんでいる。私はそれをじっと見ている。足跡が、私の、辿りを示してゆく。背中には私の暮らす街が佇ん

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