西里亜

職人としての和裁士になる日々の徒然

西里亜

職人としての和裁士になる日々の徒然

記事一覧

砂漠の中で針を1本探すような

和裁を生業にするようになって数年。 実はまだ和裁だけでは食べていけていない。 本業だけで食べていけていないだなんて、悲しすぎて周囲の人にも詳しいことは伝えられてい…

西里亜
3日前
7

久々が鬼門

着物は季節ものです。 春夏秋冬着るものがちょっとずつ違う。 そのため仕立て屋に回ってくるものも季節によってちょっとずつ違うのです。 今の季節ですと既に袷の仕立てが…

西里亜
2週間前
5

焦りと順調の関係

毎朝職場に行くと今日はここまで終わらせようとか、午前中までにここまで終わるはずという目標あるいは野望を立てている。 それも、ちょっと無理かもというギリギリを狙っ…

西里亜
1か月前
6

ほどよい寸法考 身丈Ver.

繰り越しVer.に続き今回は身丈のお話です。 皆様身丈はどのように決めていますか。 私は着付け法が古いのか、158cmで4尺1寸でもちょっと長いなと着付けるときに思っていま…

西里亜
1か月前
10

ほどよい寸法考 くりこしVer.

最近繰り越しについてよく考えます。 和裁のお師匠さんからは「たくさん繰り越したからといって別に衿が抜けるわけではない」と聞きました。 ではどんな時に繰り越しを多…

西里亜
2か月前
7

初心者に縫いやすい物

和裁所に入ったころによく任された物は『長襦袢』でした。 単衣の長襦袢、無双袖の長襦袢、男物の長襦袢 実際に縫っている時は、お客様の品物といえど下に着るものなので、…

西里亜
2か月前
7

着物好きが和裁を始めるとどうなる?

自他ともに認める着物好き それが私です。周りからは着物以外の衣服で会うと驚かれることもしばしば。友人から先日13年ぶりに洋服姿を見たと言われました。 オフィスワーカ…

西里亜
2か月前
9

和裁の得意な箇所

先日、着物を着るけど和裁素人の友人から「和裁」していて一番好きな箇所ってどこ?という質問をうけました。 いままでどこの作業が一番好きというのを考えたことなかった…

西里亜
3か月前
3

嫌だと思ったことに驚いた事

先日自分用の浴衣を友人たちと作るために集まりました。 着る予定日が先に決まっていて、急かされるように作る私たち。 結果、ミシンで縦縫いを全部やってしまうことに! …

西里亜
3か月前
5

自己紹介してみる

気が付いたら細々とNoteを書き始めて4か月経っていました!月に1・2本と少ないながらもフォローして下さる優しい方もいたりして、有難い。きっと和裁に携わっている方だっ…

西里亜
3か月前
21

続和裁士の就職活動

1月ほど前に書いた就職活動 ありがたいことに沢山の方に見て頂けたようで嬉しいです。 せっかくなので追加の情報を。 私の時は職業訓練校のクラスメイトも複数人和裁所に…

西里亜
3か月前
9

和裁士の1日

ここ数日とても暖かくて春らしい日が続き、嬉しくなっていたら明日はがくっと気温が下がるのだとか。体調に気をつけて皆様お過ごしください。 さて今日は私の和裁所にいる…

西里亜
4か月前
11

和裁士見習いの就職活動

先日ありがたいことに、卒業した職業訓練校に在籍されている方からコメントをいただきました。 同じように和裁士を目指されているのだとか!    せっかくなので、私の就…

西里亜
4か月前
23

背筋が凍ったミスの話

こんにちは。 今日は和裁中のミスについてのお話。 どんなに気を付けていても、丁寧に進めていてもミスは起こりえます。 だって人間だもの・・・ これは私がした&見てき…

西里亜
6か月前
11

修行中の不思議

あっという間に新年明けてから2週間経ちました。 元旦からいろいろなことがあり、心が忙しい日いですね。 さて今日は修行中に感じた・感じている不思議に関して書きたいと…

西里亜
6か月前
14

和裁技能検定3級 備忘録

今日は和裁技能検定について語ろうと思います。 和裁技能検定3級は実技(長襦袢)と筆記試験があります。 ◆学科(真偽法:30題/1時間) 出題範囲:裁断・法制の手順、和…

西里亜
7か月前
16
砂漠の中で針を1本探すような

砂漠の中で針を1本探すような

和裁を生業にするようになって数年。
実はまだ和裁だけでは食べていけていない。
本業だけで食べていけていないだなんて、悲しすぎて周囲の人にも詳しいことは伝えられていない。四十の手習いならぬ三十後半の大きな転職。

元々は外国資本の職場でで事務員として働いていた。
その国を始めとした一帯の文化に惚れこみ語学を始め、留学をし、縁あって勤務することに。ある意味とんとん拍子ともいえる人生。和裁に転職した時に

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久々が鬼門

久々が鬼門

着物は季節ものです。
春夏秋冬着るものがちょっとずつ違う。
そのため仕立て屋に回ってくるものも季節によってちょっとずつ違うのです。

今の季節ですと既に袷の仕立てが増え始めているけど、夏の絽や麻物なんかは急ぎの仕事が多い。夏物の単衣の襦袢なんかもちらほら。

先月は単衣の着物と長襦袢をおおくやって、先々月も単衣の長襦袢と着物がほぼ。無双袖の長襦袢を作ったので、それが珍しいくらい。
私がやった袷の着

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焦りと順調の関係

焦りと順調の関係

毎朝職場に行くと今日はここまで終わらせようとか、午前中までにここまで終わるはずという目標あるいは野望を立てている。

それも、ちょっと無理かもというギリギリを狙った目標にしています。

調子のいい時にはちょうどそれ通りに終わったり、ちょっと越せたりしているけど、調子の悪い時には・・・少しの遅れを巻き返そうと思って急いで急いでやるせいか、結果目標よりもだいぶ前のステップで終わってしまうこともしばしば

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ほどよい寸法考 身丈Ver.

ほどよい寸法考 身丈Ver.

繰り越しVer.に続き今回は身丈のお話です。
皆様身丈はどのように決めていますか。
私は着付け法が古いのか、158cmで4尺1寸でもちょっと長いなと着付けるときに思っています。だいたい身長=身丈なので、腰ひもが低い&アンティーク好きなため短い着物に慣れすぎてしまっているんでしょうね。

そして、最近お仕立てに来るお客様の寸法を拝見していると総じて身長よりも長い身丈をご希望の方が増えている気がします

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ほどよい寸法考 くりこしVer.

ほどよい寸法考 くりこしVer.

最近繰り越しについてよく考えます。
和裁のお師匠さんからは「たくさん繰り越したからといって別に衿が抜けるわけではない」と聞きました。

ではどんな時に繰り越しを多くするのか。
私の手元にある平成初期の資料によると、背が低くやせ型の人は5分の繰り越しで背が高く体格が良くなるにつれ7分・8分と大きくするとよいと書かれていました。

ということは首の太さや肩回りのお肉状況によって変化するという事でしょう

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初心者に縫いやすい物

初心者に縫いやすい物

和裁所に入ったころによく任された物は『長襦袢』でした。
単衣の長襦袢、無双袖の長襦袢、男物の長襦袢
実際に縫っている時は、お客様の品物といえど下に着るものなので、幾分かは気を楽にして仕立てに入れる。

でも今長襦袢が来ると、「長襦袢か…」と思ってしまう。
けして長襦袢が嫌いなわけではない。ないのだけど、ほとんどの長襦袢の記事は薄く柔らかい。そのため変なところを針で引っ掛けると布にぴっと糸を引いたよ

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着物好きが和裁を始めるとどうなる?

着物好きが和裁を始めるとどうなる?

自他ともに認める着物好き
それが私です。周りからは着物以外の衣服で会うと驚かれることもしばしば。友人から先日13年ぶりに洋服姿を見たと言われました。
オフィスワーカーだった頃にも、さすがに毎日ではありませんが着物で仕事に行ったり。1回目は驚かれましたがそのうち何の反応も示さなくなる人間の順応力に感謝でした。

そんな隙あらば着物な着物好きが和裁を始めるとどうなるか。
反物が加速度的に増えます。これ

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和裁の得意な箇所

和裁の得意な箇所

先日、着物を着るけど和裁素人の友人から「和裁」していて一番好きな箇所ってどこ?という質問をうけました。

いままでどこの作業が一番好きというのを考えたことなかったなと思って、この質問を深堀して記事にしてみようと思います。

私が一番好きな箇所それはずばり衿付けです。
ある意味苦手なところでもあるんですけど、衿と見頃をすっと待ち針を打てた時、まっすぐ綺麗に自然に縫い付けられた時の気持ちよさはぴか一!

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嫌だと思ったことに驚いた事

先日自分用の浴衣を友人たちと作るために集まりました。
着る予定日が先に決まっていて、急かされるように作る私たち。
結果、ミシンで縦縫いを全部やってしまうことに!
 
いわゆるハイテクミシン仕立て手縫い併用です。

サクサクと印を付けてミシンが得意な子にがーっとやってもらいました。

背縫い

脇縫い

衽縫い



その時は切る日も迫っているし、全く気にしてなかったんです。
とにかく出来上がれば

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自己紹介してみる

自己紹介してみる

気が付いたら細々とNoteを書き始めて4か月経っていました!月に1・2本と少ないながらもフォローして下さる優しい方もいたりして、有難い。きっと和裁に携わっている方だったり、着物や和文化がお好きな方だったり、裁縫好きだったり?と多少なりとも共通点がある方が読んでくださっているのだと思います。そんな方々に少しでも読んで楽しかった・良かったと思える記事を書けるようになっていきたいと思います!

なので改

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続和裁士の就職活動

続和裁士の就職活動

1月ほど前に書いた就職活動
ありがたいことに沢山の方に見て頂けたようで嬉しいです。

せっかくなので追加の情報を。

私の時は職業訓練校のクラスメイトも複数人和裁所に入所しました。
その入るときの面接?手続き?等もせっかくなので書いてみようと思います。

ケース1

私の和裁所は見学後に電話をして修行したい旨を伝えるとすんなりOKをもらえました。でもその後履歴書と職務経歴書が欲しいということなので

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和裁士の1日

和裁士の1日

ここ数日とても暖かくて春らしい日が続き、嬉しくなっていたら明日はがくっと気温が下がるのだとか。体調に気をつけて皆様お過ごしください。

さて今日は私の和裁所にいる時の1日の一例を書こうと思います。
が、正直縫っているだけなので一行で終わらないように頑張ります。

9時前 出勤
出勤したらまず運針を2尺ほどして指慣らし
その後その日の作業を確認して作業に入ります。
前日からの続きがある場合は前日の物

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和裁士見習いの就職活動

和裁士見習いの就職活動

先日ありがたいことに、卒業した職業訓練校に在籍されている方からコメントをいただきました。
同じように和裁士を目指されているのだとか!
  
せっかくなので、私の就職活動を記録しておこうと思います。もう遅いかもしれないけど…
  

就職活動の方法職業訓練校では年の終わりが近づいてきた確か11月後半ごろ、学校が選んだ就業場所に見学に行く機会が設けられました。

見学場所は和裁所が3ヶ所と悉皆業、その

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背筋が凍ったミスの話

背筋が凍ったミスの話

こんにちは。
今日は和裁中のミスについてのお話。
どんなに気を付けていても、丁寧に進めていてもミスは起こりえます。
だって人間だもの・・・

これは私がした&見てきた背筋が凍ったミスの話です。

一番多いのは単純に印の付け間違え
これは物差しを見間違えたり、寸法を勘違いしてしまったりで起こりえます。比較的すぐに直せるが、めんどくささとがっくりはぴか一。

せっかく縫ったのにとがっくり来ます。
反物

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修行中の不思議

修行中の不思議

あっという間に新年明けてから2週間経ちました。
元旦からいろいろなことがあり、心が忙しい日いですね。

さて今日は修行中に感じた・感じている不思議に関して書きたいと思います。
noteを始めようと思ったきっかけが、和裁修行を現在まさにしている方の発信が少ないと思ったからです。

10年前や20年前に修行された方の情報は拝見しましたが、呉服業界の変遷により和裁業界は目まぐるしく変わっている。

お金

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和裁技能検定3級 備忘録

和裁技能検定3級 備忘録

今日は和裁技能検定について語ろうと思います。
和裁技能検定3級は実技(長襦袢)と筆記試験があります。

◆学科(真偽法:30題/1時間)
出題範囲:裁断・法制の手順、和服の材料に関して、和服全般の知識、色彩学、安全衛生

◆実技(3時間30分)
表地は自由、芯地は自由(胴裏の付くものは、裏地自由)とし、見頃・立て衿(下えり)付けをし、右そでを事前に縫い上げたもの(衿先布の付く場合は、事前にえり先布

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